（暦の上ではもう迎えている筈の秋は未だ姿見せず、まだ夏が我が物顔で居座る9月15日の放課後。SHR後に「行くよ！」と声掛けて急かした彼との間に自転車押しながら白スタンスミスが学内の敷地跨ぐ迄は「沖縄行ったことある？」等戯れのお喋り紡ぐものの、教師の目が届かぬ所まで来れば過日の様に親指で背後示し自らは運転席に跨った。トンと地面蹴って、すい〜と下る坂道はゆっくりではなく加速度任せの荒くれ者の儘。第一目的地で止まったなら、早速必須アイテム調達といこうか。）うわっ（脊髄反射に任せショーケース貼り付いたものの、はたと思い出すなり横へスライド。）好きなものなんでもどーぞ！バイト代入ったから！（お財布事情も明け透けな口振りで「フルーツタルト美味しそう」「チョコも捨て難い」「やっぱ王道はイチゴショート？」なんて喧しく横槍入れつつ彼の選択見守った。退店後再びハンドル握って一路向かった先は海が一望出来る公園、潮のにおいが風に混じる中ベンチに腰掛けたなら、特製バースデーケーキのお目見えだ。今朝電話で話したようなちぐはぐピースのホールになったか、将又別の何かか、どちらにしたって）ハイッ誕生日ったらコレでしょ〜〜（通学鞄から取り出した1と6模した蝋燭を遠慮無く手近なケーキに挿して、「内緒ね」と眦細めた掌中には100円ライター。不慣れな手付きがカチッカチッと数度空振りして漸く火種を移そうか。）やばっ思った以上に風強っ　ほらほら雪緒はやくふーってしてふーって！ハッピバースデートゥーユー♪（ちっとも落ち着かない祝い文句にくっ付けた歌は調子っ外れでも気にしない。彼の吐息と悪戯な風と、火を消すのは何方だっただろう。）食べ切れなかったら手伝うから言ってね　あ、あとはいこれ。プレゼント　っていうかお裾分け。いつも行ってるサロンで貰ったからあげる！（言いつつ差し出したのはヘアオイルの試供品ボトル。包装も何も成されていない剥き出しの小さいボトルは、けれどもきっと二人の間にはこの位が丁度良い筈で、）ココも使ってんの。おすすめ。は、ハゲたらモテないじゃん？（そんな冗談と態とらしく吃った後甲高い笑声響かせる。今日この日、彼が笑っててくれればいい。胸裡に芽吹く感情を唇に載せぬ代わりに一頻り笑ってから、徐に弧描き開く唇はやっぱり一番好きな無敵テラコッタだった。）誕生日おめでとーね、雪緒。祝わせてくれてありがと！