おかえり。（元気なソプラノが雑多な縁日に一際目立って響けば、クラスメイト皆でおかえりお疲れと其々の場所で各々少女に労いの言葉を掛けただろうか。もう少し掛かるかと、灰掛かる紺地に縦縞絣の浴衣の袖捲って雑務を熟す肩口につんと指先感じればお疲れと首肯一つ落として）うん。でもタコの大きさバラバラになっちゃったからアタリあるかも。というか呼び込みって声かけるんじゃなくてかけてもらったの？（勝手に耳に入ってきた感想の気になる点を問いかけるうち、小さな身体で目一杯のお披露目会始まれば、その素振りと言外に匂わせる褒めての顔ばせに思わず笑いが零れて）ははは、よかった。俺のせいで地味地味浴衣になっちゃったらどーしよーかと思った。（なぞられたから地味を発す際には少し非難めいてみたけど）混ぜたらちゃんとアンタっぽいのに、ちょっと今日は大人っぽく見えるよ。似合ってるね。（これは求められたからでなく素直な感想。「団子なんて器用なことできたんだね」失礼千万は揶揄いも孕んで団子を横から後ろから覗き込んでみる。教室出て案内用紙覗き込めばそーみたい、と頷き）たまに廊下汗だくの人たち通ってくよ。近いしコーヒーカップ覗いてみる？（了承得られたなら足は人力カップのクラスへ向こう。「浴衣だから大股で走ったらだめだよ」落とす懸念は普段の彼女を知っていればこそ。）

そんな喋りかけられるの結構才能だよね。（誰にでも出来ぬ才能と素直な賛辞を落とす。平生溌剌とした印象ある彼女が纏う落ち着いた色合いが自然そう感想零させるも、予想だにせぬ反応賜ったのは男とて同じ。平素の弾けたテンションでない感想が零れたなら目弾き一つののち）だから俺の好きな色なんだもんね。…うん、似合ってるよ。（ダメ押しの太鼓判押し、見遣る瞳と笑みに喜色を滲ませた。歯切れ悪い言葉に図星突いたと思えど「ふーん…？」と含み持たせた相槌で流せば）まあでもこの髪型がらしいポイントだよね。（溌剌とした彼女らしさをここにも発見とばかりにつついて教室を出て）負けるって、アンタは歩いてるだけで勝負してるの…？（いちいち告げられる言葉が予想だにせぬ突飛ゆえに、飽きない半分、今回眉を柔く寄せる顔ばせは呆れ半分。走り出す軽快な足を止めんと伸ばす腕の出番なければ安堵のままカップ内に着席して）多分遊園地でアンタが回すよりマシだってことはわかるな。回す人見る方が楽しかったりしてね。（彼女とは正反対に周りを見渡し、未だ見たことのない光景に案外期待する気持ちは伝染するように。緩慢に人力で始まるカップの回転は徐々に黒髪が風を感じて靡き始める。）あはは、思ったより速いね。あと手作り感が怖くて笑えて、　うわっ（土台全体を回すだけかと思いきやカップ自体をくるっと回す要因の人員までいたから体制崩さんと中央のテーブル掴んで回避、してコーヒーカップはあっという間に終了。）案外楽しかったね。皆中腰で大変そーだったけど。

知ってた？2人の時は二人三脚だから2人で行かないと負けだよ。（子供騙しのような句はこれで止まると思っちゃいないがまあ今日限りの気休め程度。先行くぶつかりそうな彼女に「ほら…」と眉寄せれば今日くらいの言いくるめが叶うなら並んで人混み側を歩かんと。）三半規管の弱い人間がいるんだよ、世の中には。俺とかね。（回しまくらん人の胸中諭すように伝えながらチープなメロディに合わせて手作り感満載のカップがくるくる回る様は客観的にはきっと間抜けそのもの。されど乗っている当人は見た目以上の楽しさ感じる不思議を味わい尽くした。）うるさいよ、人のことをビビりのよーに…、まあ、でもカップまでぐるって回った時ちょっと怖かったよね。アンタはあんなの余裕だった？（半分図星ゆえにもごついて肯定すれば無邪気に弾む隣を映じ分かり切った問いを投げた。次のツアーの行方を考えようとした矢先）イチャつかない！候補にあったけどもう意地でも行ったらだめな気がする……。（強い語気で否定するのは不貞腐れた面持ち。ずっと弄られる予感があるから男の脳内ツアーのメイド喫茶には×マークを色濃く追加したところで）じゃあクレープだね。……え、何その手。（クレープに向けて歩み出す折、悪戯に動く手に一歩二歩後ずさるのはきっと本能だろう。いずれ店に辿り着けば）何がいい？浴衣に零しそうだからアイスのとかはやめといた方がよさそーだけど。（茶化すよう勝手に選択肢狭めるもの、希望には特に異論唱えることなく自分のチョコバナナクリームと共に注文し手渡した。）

その感想、なんか俺がバナナボートで言った時のと似てるね。俺たち全然違うのに案外似てるとこあるのかな。（白い歯見せた余裕だけが返ってくると思ったから、スリル狂でないことは新たな発見の一つだった。でもそういえばと、外人に話し掛けられ一緒にあたふたしたかと零す話は遠い昔に感じること。）……俺じゃなくてアンタが行きたいなら行くけ、……どっちでもいーのか。（不貞腐れた口振りに舵を逆に切ったのは、最初に候補に入れたのも彼女が興味を持っていたからだった。揶揄なしであれば×マークは消すつもりだったが、あっけらかんと後悔ない切り替えあれば此方も深追いはしないまま。序にわきわきする手の意味聞けば目を細め、揶揄なしは無理だったと悟ればクレープ前に辿り着いた足先はきっと正解だ。）ええ……俺でもこぼしそーなのにぜったいこぼすよ。……あ、おいしい。（脅しが効いている食べ方を横目に己もクレープにぱくついた。未だ終わらぬ気配ない盛況な文化祭を尻目に、話題が終着に向かうから）現実に引き戻すの早いな。でも片付けが1番切ないよね、なんか。まあアンタは余った水風船とか率先して楽しく割りそーだけど。（未来の片付けの様子は想像に容易いから口許歪ませ「する？」と確認。彼女の様子が片付けの切なさを通り越えているみたいで自然笑みが零れる。）沖縄でやる打ち上げって、もうただの旅行だよね。沖縄でしたいことある？別荘前で穴掘り以外でね。（悪戯厳禁と釘を刺し、もう一つ先の未来の楽しさへ話題が移ろう雑談は舌の甘みが引けば今の楽しさに引き戻されよう。きっかけはもう一つ「浴衣意識しすぎて鼻についちゃってるよ」己の鼻先を地図代わりに指差し笑った。取れなければ断り一つ入れて人差し指で鼻先を拭ってから）プラネタリウムはど……あ、寝る？（茶化しと本音が半々。互いのミステリーツアーはまだもう少し。）