（アルバイトで接客業をしているくせ、それが得意分野でも何でもなければ人懐こいクラスメイトたちに表舞台は譲るとした男は裏で蛸を切ったりヨーヨーを膨らませたりと裏方の役回りに徹していたけれど。一段落すれば縁日全体の様子を窺おうとした折）え、うそ。引き分けだと思ってたよ。勝ったことにしていーのかな。（白は入っていたが白地ではないとの認識が引き分けへ帰結していた胸中に相手方から白星を差し向けられたなら「1対1だったら白湯奢りはチャラになったかな」と口端上げて、もう一つの答え合わせはそれから。）こっちの方が水色？でちょっと正解してない？でもレモンって考えたことなかった。ぜったい人と被らなそーだしかわいいね、小田っぽい。（涼しげなパステルは多少意外であれ被らぬ個性が垣間見えたかららしい、と小さく笑みを溢す。微風に涼し、と目を細めるうち）うん、ここに。自分じゃ多分選んでなかったからいいワンポイントかも。（えんじの帯を指差せば灰掛かった紺地に縦縞絣生地の浴衣が楽しげに揺れて）ラーメン売ってるとこはあるけど、アンタのお眼鏡にはかなわなそーだよね。ピアス輪投げの調子はどう？（まず挑戦する人がいるのか、との疑問も同時、景品の残りに視線遣りつつの問いかけは内輪遊びの反響を知ろうと。）

（一度勝利がちらつけば欲出るのが人間の心理「ずるいよ聞こえてるでしょ」と妨害に細めた双眸で訴えるも、黄色の追加情報に何でと口元緩めれば）味とかじゃなくてフルーツの見た目が？アロハは無意織にパイン着てた？……もう巽にいっぱい言われてお腹いっぱいでしょ。（イベント事での女子のはしゃぎっぷりはどうやら目を引くものらしい。教室の隅で現場を目にしていたから改めた称賛にはすごすご逃れんとしたが代わりに自身へ、多分自分自身の見立ても込みだろうけど、慣れぬ称賛賜れば「ありがとう...」と手持無沙汰に頬掻いてから誰目線発言に笑って）俺の親？確か3年がB級グルメカフェでラーメンも出してたよ。サマリンにもーちょっと居たらアンタの実力ならラーメンタピオカ引き当ててたかもね。（継いだゲテモノ日本食ライン想起すれば笑いを喉奥で噛み殺すはあまりの運のなさゆえ。「休憩あったらあとで行く?」との提案は案外同じ口になってきた男の希望でもある。）ざまあは言い過ぎだよ、それ顔に出したらだめだよ。でもやっぱり俺たちが下手なだけじゃなかったね。　　？（人差し指を唇へ当てがいシーのポーズ。疑問めいた瞳は彼女の視線を追いかけるも耳掛けた動作に注視すれば足りないものに気付き、あ、と声出した。）新鮮。でも浴衣だからほんとに別人みたいになっちゃうな。お姉さんのピアスと輪投げ似てるねって絡まれることもなさそうでいーかもね。

はは、仲いーよね。（所為との言葉と裏腹に柔和な音が耳朶打つから零れる感想は優しい音を以て、その後やすやすと図星突かれたなら「照れてません」緩む口許はきゅっと結んで揶揄いの指から身を寄せ流さんと。）不運も実力のうちって言わない？じゃあまずいもの食べたら報告待ってるね。（確信めいた口吻にて口許歪ませたなら真面目を作りこんだらしい顔覗き「それはただの真顔って言うんだよ」大して真剣みのないお伺いには此方も軽口にて。主語のない感想が思わず飛び出ては察しの良さにごめんの後首肯一つ落として）また根に持ってるな…。でも浴衣だとそっちのシンプルな方がいーね。うん、皆髪型も違うから余計に。アンタは割といつも髪型変わってた？けどピアスないから……というかなんか男みたいな感想だよね。（他意はないから咎められたならごめんと軽く謝るつもりだが。「高校生のナンパなんてそんなもんじゃない？」別にナンパもするつもりもないが何となく擁護してしまう胸中はけれど共に想像すれば笑いが零れよう。何だかんだと裏方へ帰る前に客が訪れたなら彼女を手伝ったのち）俺も…いーかな、ちょっと抜けるくらい。大丈夫だと思うけどアンタと行くラーメン不安だね。味噌あるかな。（人手が足りているのを確認すれば少々の不真面目は文化祭マジックにて許されるか。道中戯れを挟むのはいつものことで「お腹空いてきたな」と腹部擦りつつ3年の教室へ足踏み入れ机に着席。）あ、あった。味噌でいい？一味も置いてるよ、よかったね（辛党は味噌ラーメンを辛くするとの偏見込み。）

ええ…そんな芸人魂ないよ…。でも、そーだな…俺がそれ食べるには誰かさんの道案内が必要だから、もう1回食べて二重で苦しむことになるかもしれないよね。（鋭い視線に眉根寄せ遠慮したのも束の間、思い付いた譲歩案は一つだから茶化すように逆道連れの提案。男性目線と感じた感想の内実にはなるほどと相槌打って）でも自分が主役でドキドキじゃなくてそんなしみじみ客観的なの、なんか意外だね。（他人を思い遣りつつ、けれど自分が世界一楽しむような印象あれば意外と告げるトーンは若干驚きの色が見えよう。揶揄い孕んだフラグ建設も室内に充満する香りにOKサインを送りあうのは幸先が良い証拠か。）白々しい小田だ……沖縄で朝ごはん一緒になる時も注意しなきゃ、なんかほんとにやってきそーだよね。（サマリンでの2ヶ月にそんな一幕があったような気がしたから「げ」との顔ばせは隠しもしない遠慮のなさ。予想通り一味を手に取る指先に器を手でガードした食べつつの警戒は最早戯れ染みたもの。対面の赤く染め上がったスープに泣き言あれば「結構バカだよね」と笑む瞳にはしょうがないなの色が滲み、拒絶されぬなら緩和策として己のスープを分け与えよう。学生が作るインスタント麺でもおいしいと感じてしまう不思議は、きっと先刻話題に上がった文化祭マジックのせい。人だけならず味にまでも反映されるそれは非日常と楽しさが比例すればより大きくなるから）うん、俺も楽しかったよ。2人して空気読まなかったおかげだね。（隣り合っていた影がいつの間にか長くなっていた答え合わせの延長戦は男が持ち場へ戻る頃には大目玉も致し方ない。）