志真、しのごの言わずにとっととおいで。

五体満足で帰りたいならおとなしくしてな。(日付変更直後Rosemaryの扉を叩いたら背中にゴリッと無骨な感触は銃に見立てたスマホ。物騒な声を耳朶へ吹き込めば広大な別荘の片隅、パウダールームまで問答無用で少女を連れ去ろう。過日のように少女を飾り立てる様相はけれど矛先がデート相手でなく互いのためだけという傲慢さで、黒地に白と赤で「I♡サマリン」とロゴが印字されたTシャツとインディゴのデニムショートパンツへお着替えを済ませれば手持ちの中で一番とっておきのジューシーピンクのリップで巽の唇を彩った。因みに既に着替え済みの女はショートパンツのホワイトだけを違えた双子コーデで、指先引いてプライベートビーチへ駆け出そう。首にはお借りした一眼レフと腕には重量感のあるバスケット。誕生日を迎えて早々トンチキな行事へ付き合わせる居丈高は然し少女相手なら許容されると信じて疑わなかった。数日前に賜ったピンク色のマーカーは免罪符のようにケツポケットへ忍ばせて、咫尺弁ぜぬ闇だってふたりならお手の物。)ふ ふふ…。暗闇ってなんか悪いことしてる気がしてドキドキしない?忍びの地図で動いてるのたぶんあたしたちだけ。(目論見の内実なぞ教えてやらん唇が悪戯に感興をあおる。)
小田仁希 08/29 (Sat) 00:04 No.563
っ うい。(睡眠に落ちる一歩手前、現に引き戻したのは光る液晶がすべて。ハリボテのレンズも三編みも装着するより先、背中の感触に降参お手上げの所作で爪先は彼女に従った。着せかえ人形だって羨むお揃いはパウダールームの鏡に映し出された自身の瞳の煌めきが現今の所感の正解。何だかとっておきのピンクが面映ゆくて、彼女と鏡越しで目が合おうもんなら眦がいつになく柔くなるのも宵のせい。「え、わたしたちもしかして世界一かわいい?」口許覆って大袈裟に小首捻る癖して、それは確信に似た。斯くしていつも通り巡っている世界の片隅でビーチに飛び出せば、月だけがふたりの行く先を照らすとて、温度分け合った指先があるから迷う術もないだろう。)仁希とならどんなわるいことも完全犯罪で成し遂げられる気がする。(行き先を尋ねる野暮は舌先が好まず、踏みしめた砂が鳴いたところで、)この世界にふたりだけみたい。あ。しかも忍びの地図持ってるのは仁希だけやから、この手が離れたら一気にひとりぼっち。それは困るから離さんとって。(冗談みたいな口振りが続くけれど、宣ったはなから暗闇に乗じて泣いているかわらっているか、自分でだって分からない。いまはただ、ふたりの時間に興じたい。)
巽志真 08/29 (Sat) 19:27 No.574
志真って方向音痴?(ひとりきりにはさせない指先が暗闇を揺蕩う。プライベートビーチの一角へ大荷物の中からレジャーシートとブランケットとキッチンから拝借したカフェラテのタンブラーを渡したら「すわろ」と少女の肩を押して隣り合い腰掛けるだろう。)スーパーマーケット行ったときにお昼の海は堪能したでしょ。それで、このあいだ誕生日祝ってくれたときにはサンセットビーチ。だから、今日は夜の海と朝の海を豪華二本立てで堪能しようと思って。(指折り数える内訳は朝昼晩の海を一緒に堪能しようねってターミナルでじゃれついた過日の記憶を想起して。一度決めたらやらねば気がすまない性分を如実に語りながら「あ、忘れてたでしょ」は尖塔と化す唇が不満たらしく。)最終的には日の出のビーチでオソロのバカT着て写真撮るまでが今日のミッション。これはその場繋ぎ。(胡座をかいた膝の上にわけっこしているブランケットを引き寄せながらバスケットから取り出したるは麻で編まれた小ぶりなアクセサリーボックス。その場であけてあけてとせがんだらお目見えするのは月明かりに微睡むクラシカルな筆記体のイニシャルピンキーリングだ。)ちなみにふたつある。「N」と「S」。どっちがいいかは選ばせてあげるね。(にやりと口端上げる悪戯は傲慢たらしい嗜好のもと、どちらのイニシャルにも隅に小粒のイエローが光る。)プレゼント。お誕生日おめでと。(お誕生日特典としてつけて差し上げるオプションとて恭しく興じる心算にて指先を取る仕草は少女の選択を待ってから。)それでね。
小田仁希 08/30 (Sun) 18:36 No.595
(「地図は読める」は方向音痴よりは寂しがりみたいな性分を明け透けにするけれど。籠の中身が繰り広げられるさまを手伝うでもなく双眸が捉えた侭なら、掛けられた声に促されて隣に腰を据えるのがやっと。うんうんと相槌を打つさなか、それが過日の応酬を想起する内容と気がつけば不服の色した少女と相反して息するみたいに笑みが漏れた。)いま思い出した。海見るたびにわたしのこと思い出しちゃうやろ。(ふたりで過ごした時間を胸裡に深く刻んでいるのは自分も同じかそれ以上の癖して、茶化すみたいな口吻で告ぐ。ふたりの声を除けば漣だけが響く宵、ブランケットのなかに仕舞い込んだ指先はとっくに温もっている。成程の首肯は本日のドレスコードを理解したからで、とてバスケットから取り出されたボックスに視線落ちれば小首捻って少女とそれに視線は右往左往。月明かりが中身を教えてくれたとて、喫驚と喜色が入り乱れた眼差しが落ち着かない。)仁希がSつけてたら、彼氏できたと思われる?クラスの男子がみんな落ち込むかも。彼氏探しに躍起になりそ。(大仰に眉根を寄せて由々しき事態を想定したのに、選択はあまり迷いがなかった。)Nがいいな。みんなが噂してたら、「それわたし」って大真面目にしゃべったろ。(悪舌は冗句の範疇だけれど、「いい?」の確認は傲慢の色を隠しきれずに浮ついた。指先でイエローが煌めくなら、それを映す眸だってきらりひかる。少女の唇から続く言葉に首傾ぐとて、遮る心算はないから、)うん。
巽志真 08/31 (Mon) 02:53 No.606
志真、うれしくて戸惑ってますって顔してる。(己の挙動が齎す感情を嬉しいと括る傲慢は当然の如くの所感、だって巽が己をこんな女に仕立て上げた。「匂わせクソ女になろうよ」と唆す悪舌はにひひと悪戯な笑みに添えて、)なにをバカなこと言ってるの?志真といたらあたしとんでも天狗になっちゃうよ。(然して歯牙にも掛けぬ笑みが噴き出した。少女の評は過剰評価と思えてならないが乗じる指先に躊躇いはなく、小指に通したNが月明かりに微睡んだ。自分から切り出した癖二の句を告げる前に面映ゆくて口元を覆ったら揃いのSが光る。何かを考える一瞬のち、思い付きみたいに隣に身を乗り出したら揃いの色した唇がその頬を掠め取れるだろうか。)どうしたらあたしが志真のことを特別に大切で大好きか伝わるのかなって考えてたの。プレゼントをあげたり、言葉を尽くしたり、そのどれもおろそかにする気はないんだけど。(まるで国語の授業中、問3を答えるような真直さで告げる。)やっぱり体をつかうのが早いなって思って、こうなっちゃった。(卒然たるキスの内訳を吐露したら肩を竦めて視線だけで問い掛ける”伝わった?”は肯定前提の問い掛けだったろう。軈て迎える朝まだきには微睡むさなかの太陽を叩き起こし砂浜へ駆け出そう。予告した通りの撮影会はきっと笑いの絶えぬ一幕になる筈で、終ぞ燥ぎ疲れて寝転んだ。)最高の16歳にしてね。しようね、一緒に。(笑ばんだ後に今のは違うなと挟んでもう一度。大の字になって見上げた空が、忘れられない青になる。)
小田仁希〆 08/31 (Mon) 21:13 No.617
うれしいメーターが振り切れちゃって、そういうときどういう顔するんか今まで考えたことなかった。(喜と楽を己から引き出すのがいっとう上手な少女との出逢いがなきゃ、きっと知らない感情だった。困惑貼り付けた癖に雀躍を隠しきれずに、月明かりを一心に吸い込んだ指先の小石がきらりひかる。てのひらの角度を変えては星空を盗んだみたいなイニシャルに心躍るその刹那。彼女の思案を妨げる心算こそ無けれど、近付いた果てのゼロ距離には瞠目。時が止まる感覚と初めて知る頬の柔らかなぬくもりを、我が物顔で享受するのはほんのちょびっと難しかった。)仁希、(問3の模範解答よりよっぽど加点したくなる解に、胸裡を擽る情動が確とある。こんな気持ちに名前を付けたくて、きっと先人たちは愛だ情だと説いたんだろう。)ありがとう。わたしも大好き。全部100%キャッチした。……でも。それでもきっとこれからももっと欲しがるし、もっとあげたくなっちゃう、そんな大好き。(眼差しが伝う肯定を遮るものはない。猫目の眦は飼い猫が甘えるみたいに溶けて、泣き笑いにも似る。そうして太陽が目覚める頃、白む空が一度しかないふたりの少女の夏を祝福するような心地。ふたりで切り取った数え切れない一瞬を永遠にしたくて、万歳して隣に寝そべったなら、瞼閉じても少女の眩い髪と指先のイエローが蘇る。長めの目弾きの末、映し出されるのは果てない蒼だった。)仁希がいてくれるから、最高間違いなし。(ずっと、この日の空と海は忘れない。)
巽志真〆 09/01 (Tue) 23:37 No.630
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