とっておきのパックがいい仕事してくれた。（朝食後の幕間。メイクコンシェルジュを任命した少女が扉を叩くや迎え入れての第一声はドヤ顔極まりなく告げるだろう。こっちこっちと几帳面に整えられた自分の生活スペースへ指先引けばポーチに鏡に今日を演出するための諸々が置かれているベッドの上に腰掛けて、）キラキラシャンパン捨てがたいけどやっぱデートって言ったら、（少女の声をハモる未来に笑い出す。）ピンク！　　だよね。（感覚一致に吹き出せばよろしくねって全てを手放しで委ねよう。煌めく指先が肌へ触れるのを感じながら瞼を閉じればそれでも姦しい唇は「もちろん」「夏らしくていい。あたしはビニバ。」「そういえば心はどこいくの？誰だっけ」と少女に相反して暇を訴えるように噤口を知らないだろう。とろりとした液体が唇に塗布される間だけは辛うじて沈黙を守って、のち。）うわっ　かわいい……。天才？（鏡を手に持ち覗き込んだ己が遜色無く可憐に映れば自意識過剰待ったナシの称賛とて滑らかに唇を割る。）やっぱあたしのコンシェルジュになってもらうしかないよ。（渡されたグロスをそのままスペンサーの頬へ宛行う悪戯叶えば「ありがとう」はあまりに感嘆交えてしみじみと。）もちろん。ぜったいやろ。ここにいる間に遊べなきゃ世界終わっちゃう。（大仰な絶望とて本気で紡げば卒然たるシャッター音にくしゃりと相好を崩すだろう。モデルイキりの数枚も巫山戯て収めて、いってきますをする頃には互い互いに世界一かわいいあたし達で。）