わたしの大事な女の子、こっち来て。   あ、仁希やで。分かってる?

(食べ物が焼けて烟る空気にすり抜ける風は耳柄にもしきりに鳴って響く。紺のロングカーディガン羽織った腕に携えた花火を持って級友の間を通り抜けて探すはひとり。彼女が周囲の級友との会話に一段落ついた頃合い、背に投げた声で気付いてもらえるだろうか。)見て。いっぱいもらってきちゃった。(二本の腕めいっぱいのそれに視線落とせば、羞恥と幼心の狭間で口端が笑んでひくついた。「あっちでやろ」は海と陸の曖昧な境界線を示唆。いっとう濃くなる潮のにおいに近寄れば、足を折り曲げてさも大切なものであるかのように白砂に花火を並べるが)そういえば今日はわたしも仁希とやりたいことメモしといてん。(紺のカーディガンを捲り上げて、サマリンの日焼けを忘れた腕を顕わに。月明かりでは心許ないからスマホのライトで照らせば、端的な癖して右肩上がりの黒マジックの文字列が登場。『花火、ふたりで夜更かし、甘いもの食べる、10月以降何して遊ぶか相談』。)
巽志真 09/22 (Tue) 19:08 No.9
あっ、(過日のBBQを彷彿とさせるようなシチュエーションはけぶる白煙越しに映るクラスメイト達の面子までお揃いのもの。あれもこれもと欲張って抱えた花火が振り返った拍子に転がる。)おんなじこと考えてたね。(二人合わせたら今日全部使っても消費出来なさそうな量へ耐性無く噴き出した。視界をぼかす白煙から逃れるように波間へ駈け出したらパクってきたライターをカチカチ鳴らして)まずは普通のからやろっか?(手持ち花火のスタンダードな1本を渡したら吹き出る火花に感嘆の声を上げる傍らに人工的なライトが照らす文字列をふむ、ふむふむふむ、とおどけた声が追従する。)全部できるね、あたし秋の味覚って大好き。焼きいも食べたくない?夜更かしだったらおうちに泊まりに来たらいいし あっ、そしたらお揃いのパジャマ欲しくない?うちに置いておいてもいいよ。(湧き水のように止まらない明日からの希望へ心を注ぎ過ぎたか、手元の花火がいつの間にか命潰えていてもそっちのけ。)
小田仁希 09/23 (Wed) 12:56 No.25
(彼女の腕から逃げた花火も逃すまいと拾い上げたら自身の腕へと仲間入りさせた。彼女の掌中でカチカチ音鳴らすそれに目配せしては、「ライターつけんのムズない?」は不慣れを如実に伝う戯れ。多種多様の花火が揃った現今、一本それぞれの花火が立ち消えたところで次、また次へと指の延長線上から鮮やかな火花が散ってゆく。)焼き芋も栗も大好き。単純やからスタバの新作気になっちゃった。あ、秋といえば甘くないけど、サンマも好き。(食い意地張った性根は然程把持せぬけれど、それが彼女との時間なら別腹とばかりに続々出てくるあれこれ。足元に並べた同じ種類の花火を二本拾い上げるさなか、相槌を打ちながら彼女の旨意を受け取る耳柄は心地好かった。)パジャマさ、なんやっけな、あんまりわたし詳しくないんやけど、(暫しの思案が前置きが真実と物語るかもしれないが、)ジェラート…ピケ……?なんかそういうの。かわいいやつでお揃いがいい。(大真面目な口吻と共に掌中の一本を彼女に手渡して火を分けっこ。「友達の家にお泊まりってしたことないや」は平静装った割に雀躍の音が伝うけれど、)夏の終わりとか秋の始まりっていつもさみしくなる匂いがするからちょっと苦手なんやけどさ。仁希とこれからやりたいこと考えてたらさみしくなくていいな~っておもうの、ちょっとあなたのこと好きすぎん?(ぱちぱちと手許で小さく咲くカラフルな花に視線が落ちた。)
巽志真 09/24 (Thu) 00:20 No.35
大学いものフラペチーノでしょ?すごくすごく気になってた。来週あたりいく?あ、もし部活動があるならいいんだけど…。(指先の火花がさやけさに消えるさまを映じながら、仄かに浮かび上がる巽へ送る視線は悪戯ぽく。幽霊部員と知った過日を引き合いに出して揶揄めいた口吻で告げたら「サンマも大好き!栗ご飯も。」BBQに興じて満腹な胃を湛えて尚収束知らずの食欲知らず。三本目に突入した花火から噴き出すひかりで何某かを描く腕の振り、「今なんて書いたと思う?」と問い掛ける様相は得意げに。)ジェラピケだ!かわいいよね。着心地もいいし定番だし賛成。来週それも見に行っちゃお。(どんどこ埋まる予定はけれどらくちんな帰宅部で且つバイトもしてないちゃらんぽらんな身の上であれば特段推古する必要もない。「クソウザい親父いるけど無視してね、お母さんと3人でご飯食べよ。」と燥いだ面持ちで告げるが然し目弾き一つ、二つ。)なに、おセンチしてる?夏の終わりっていったらあれだな、あたし、甲子園の試合が終わるサイレンの音。さみしいっていうのは何となくわかるけど、寂しがる隙間もないくらいやりたいこと埋めちゃったら良いんじゃない?(三本目の花火がしゅんと小さな音を立てて死ぬ頃合い、「まあ志真があたしのこと好きなのは1億光年前から知ってるけど…」と自意識過剰極まりない台詞とて滑らかに唇に乗せて、感興引かれたねずみ花火に手を出してぽいっと巽の方面にいけずな戯れを仕掛けてみた。)
小田仁希 09/25 (Fri) 22:41 No.55
そんな突然シャカリキに目覚めてないから、余裕。(口先尖らせて幽霊継続を示唆すれば、鼻先から抜けた笑みは軽い。ひかりの残す輪郭の曖昧な残像に首傾いで思案は数秒、都合のよい前頭葉が導いた解は)志真が好き?どう?正解やとおもう。(冗句をさも大真面目の風采が告ぐことは気付かれて良い。予定表にとっておきの彼女色が増えれば、とっておきが日常に溶け込んだ。あれもこれもと欲張る果て、家族構成に話題が移ろいだなら二度の瞬目は然程の喫驚でもない。)父親がウザイのって思春期の共通案件?(事情は各個人に依って異なることとした故に深く掘り下げることもない単純な所感は、火花の音が薄まる世界に落ちる。固唾を飲めば幾分柔らぐ胸裡の疑惧へのたったひとつみたいな答案に彼女を捉えた侭の眼差しは、手許の火が潰えたことにも気づかず隣の光を双眸に映じた。)甲子園さ、同年代の子たちがなにかに打ち込んでるのいいなって思って泣きそうになっちゃう。  え、ちょっとおばさんくさいな…。(真剣に何事かに興じる様相への憧憬に共感の首肯をひとつ。「埋めてくれる?」は依頼心にも強要にも似た色とて、許されたいとするのは甘えの所為。けれど此方を標的としたすばしっこい火花にギャッと図太い声音と共に尻餅一歩手前。)びっ  くりした!あははっ  おセンチが今ので消えちゃった。(愉悦満面の笑い声は彼女といるときだからこそ。直径数センチの筒を抱えて、「次これしよ」の宣言と共に数メートル離れた先に設置したならカチカチ幾度目かにして着火成功。脱兎の如く彼女の隣に戻っては地上数センチに咲くカラフルな色を捉えた。)
巽志真 09/27 (Sun) 22:39 No.91
ぶぶー。「おばかさん」って書いたんだよ。やれやれだね。(演技染みたやれやれまったくは肩を竦める所作に添えて、もし不満そうな物申しを垂れるなら二度目は解るような大手を振ってから描く軌道、ハート型。)思春期のよくある葛藤ってやつ?やだな、超定番を地で行ってるの?あたしたち。(共通と言うなら彼女もそうだろうと目測のもと、唇に乗せたらあまりに陳腐で青臭い響きに小さく噴き出した。「志真のとこのくそオヤジは元気?」と他人様の両親への暴言はまあ秘め事として。失った手持ち花火をバケツに放り込んだら次を逡巡する指先がそのまま巽の頬をやわらかく抓る。)わかる、でも見てる自分はクーラー効いてつめたい飲み物とか飲みながらなの。わ、あたしよりちょっと年下なのにもう所帯臭さにじみでてるの?やめて。(態とらしく一歩引いた距離から揶揄めいて笑えば「もちろん」と二の句も言わせぬ内の肯定は聞くまでもないでしょうと言いたげの物申し。不埒な指先の成果を耳朶打つ悲鳴が知らせたら「あっは」と無遠慮な笑声が夜気を裂く。)っふ  今の超間抜けだったね志真。撮っちゃった。(すかさず構えたスマホの赤ボタンは動画を示すそれ。逃げ惑う姿を一頻り高みの見物気分でカメラロールに収め拗ねた物申しでも向けられたのなら「あとでアイス買ったげるから」と3歳児と宥め賺す台詞がいけ図々しく唇を割るだろう。)なにこれ すごそう。っわ!なにこれちっちゃい打ち上げ?(1m弱の距離でカラフルに弾ける火花を映じて幾度目かの感興。花火を満喫しきった頃合いにはねえねえと、内緒話でもするみたいな声色で。)あたし志真が最初にターミナルで話しかけてくれたときも、名前褒めてくれたときも、LINEに秒で反応してくれたときも嬉しかったな。この夏超素敵な女の子と仲良くなれちゃった。ありがと。(季節の終わりに乗っかったおセンチに爪先だけ浸したら、感傷にふかれない声が忘れない夏色に染まる。)
小田仁希 09/28 (Mon) 20:17 No.106
ええっ(歯に衣着せぬ不服は端的に。とて「結構成績はいいんやけどな」の不満は、ハートを象った先端を見るや直ぐにご満悦とばかりに消え去った。思春期と一括りにされる胸裡の逡巡も「うちは稼ぎがないくせいにピンピンしてるで」と大仰に肩竦めて愚痴る素振りで帰結。頬に触れた指先が頬の痛覚をちょびっとだけ刺激するなら、此方の人差し指は彼女のやわい頬をつんっとひと突き。頓馬の様相が媒体に残されたことを知ったのは、ネズミの火が潰えてスマホのカメラと視線がかち合ったそのとき。頬膨らませて眉根をわざとらしく限界まで寄せて繕った不服のかんばせは3歳児のそれだったから、幼子をあやすような甘味で手を打つのは時間の問題か、)ブルーシールがいい。(の、ちゃっかり強欲はついて回るけれど。ふたりで夜を明かせる程掻き集めた筈の花火も遊び尽くして、宵に響く級友の談笑も幾分落ち着いてくる頃合い。海の漣に彼女の声音はよく溶けて、胸裡にすとんとぬくもりが広がった。)知ってた?わたしが仁希と仲良くなりたくて、ずっと仲良くなれるきっかけ一生懸命探してたこと。(夏の余韻を掻き集めたバケツから一歩離れて彼女に近寄れば余程の抵抗がない限り二本の腕が一瞬だけ彼女の体を包み込んで彼女の額に唇を一度落とした。ほんのコンマ数秒の出来事、直ぐに腕を放したなら悪戯に笑んだ。)──わたしは世界でいっちばん好きな女の子に出会っちゃった。(去りゆくたった一度の夏が、吹き抜ける潮風が運ぶ秋の気配と混じった。さりとてこのちっぽけな己の胸裡が一度憶えたぬくもりは、秋が訪れて冬の足音が後ろに待ち受けようとも潰えることはないともう知っている。)だいすきじゃ足りんくらいだいすき。自意識過剰なんて絶対一秒も思わせんから、わたしが仁希をいっぱいいっぱい大好きなこと、120%ちゃあんと知ってて。これからもよろしく。(彼女に手向けた一枚の掌にたったひとりの特別なぬくもりが重なれば、まだもう少し今年の忘れられない夏を憶えていたい。)
巽志真〆 09/29 (Tue) 16:28 No.119
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