実は秋山のことまだ何も知らないのよね、私。

(星空煌く夜。目当ての後姿を捉えれば、賑わうクラスメイトの合間を縫って進み距離を詰め、その肩に手を乗せた。掛けた第一声は振り返った顔へ)探したわよ。あ、何か食べてた?見ててあげるからさっさと済ませて。(いつか向けられた謎願望をすっかり彼女の嗜好と認識すれば、食べるでも飲むでも一連の動作を嚥下する瞬間まで凝視してやる。「美味しかった?」と尋ねるトーンは、満足したか?にも似た色で。終えた所で手持ちを一度テーブルに置かせ手ぶらにさせてから、その手を一方的に掴んで引き共に群衆を抜け出す。向かう先は浜辺、既に使用済みが十数本突っ込まれた水の入ったバケツと砂浜に無防備に広げられた花火セットを視線のみで示して)花火しようよ。今年はもうやった?私は二回目。(適当な手持ち花火を二本拾い上げればその内一本を差し出しながら。既に楽しんでいる勢に一言声掛け火花を貰えば、二人きりを求めて少し離れた所へ移動し)席替え、私達の席教室の端と端になったわね。一番遠いの。(弾ける火花が暗がりで二人の足先を照らす。視線は変わらず手元から外れぬまま)一学期は全然そんなに話さなかったのに、何だか不思議。ま、そんな人ばっかりだけど、(一度振り返れば遠く笑い合う1年1組の面々を見遣り、それから改めて傍らを向けば)学校帰ったらさ……、………あの、………。映画とか……、(何の名目もないゼロからの自発的な誘い方に不慣れな双眸は直ぐに逸れ、眉根を寄せながら苦し紛れに候補を一つ差し出したところで初めて彼女の趣味嗜好をまだあまり知らない事に気付く。落とした眸を再び隣へ持ち上げ)今度、一緒に学校帰ったり、したい……って、こんな前もって誘うのっておかしいかしら。あーやだやだ、恥ずかし。おぇ。下手か私は。(ぼんやり灯される表情に浮かべる照れ臭さを黒髪撫でる手で隠して早口に誤魔化しながら、さて。灯火のたまが砂浜に消えたところで次を求める指先を伸ばしながら連ねる言葉の行方は全く身にならない話だっていい。寝起き姿や渾身のダジャレを差し出してやったのだから、今だけはまだもう暫く彼女の時間を独占させてもらったってバチも当たらない筈。掬い上げた二本目の花火を彼女に押し付けた。)
北村伊鶴〆 09/27 (Sun) 16:41 No.83
(夜空で喋る星たちに負けず地上の喧騒に交じりながら牛肉を頬張っていた。胃の重みに変えたならコップに伸ばした手は握る形のまま、振り返りで認めた姿に笑みが浮かぶ。)いづちゃん。うん?はい!(あさま祭で彼女に寄こした通話は記憶にあるもの内容薄まり、彼女“が”見たがっているからの食い違いで一枚肉を挟んで咀嚼を見せた。美味を表す頷きを返せば、成されるがままの歩調は彼女の考えを読み取る時間であって、数秒足らずに答え辿り着くよりもその隣で足先向けることを選ぶ。浜辺にて明かされた内容にも変わらず首肯は速く、深く、大きく。)やろ。うちもにか……いづちゃん人気のない場所選んで…?こっ告白?(賑やかさから開く距離をわざわざ突っついて髪を耳に掛けてみたり。けれど彼女とふたり話すなら断然そちらが良いと離れる間隔は自己判断に、もうちょっとあっちと手引く瞬間もあっただろう。)そうだね、あ、でもうちの席から伊鶴の様子けっこう見れちゃうの。登校の時も、帰る時も後ろから出入りしてね、前の扉使おうものなら……、走って連れ戻そ。(限定とする条件提示は軽く申し、背いた際の対処は勢い任せの思案挟んで何とか絞り出した。夏が始まる前の接点は確かにお世辞でもあったと言えなければ同意の小さい笑いは今があるからこそ。微か隣の空気が動いたから同じく後ろを眺め、最終的に目線が留まる場所は言葉を全て受け止めるまで彼女の口元で。)おかしくないよ、嬉しい。嬉しい!!けど慣れてなさ満点だね、いづちゃん。よし23日、23日に一緒に帰ろう。楽しみ増えるのに制限なんてないから、うちも誘うしいづちゃんもこれからどんどん誘って、前も後もない。(声に表情に全てにきっと懸命だと感じてしまい堪らず綻ぶ表情は彼女と比べるなら頭一つ分の余裕あり。淀むいじらしさへの小突きは敢えてで、忍ばせた手つきが一層心地を助長させるから頬いじり倒したくなったが抑え。)伸び代だよ伊鶴。下手ってゆうか……下手だったけど……、あ、じゃあうち上手なほうだからお手本見せてあげましょう。(女神と称すメンタルが柔でないと見越して下手を連呼した後、背筋を伸ばして彼女を見る。)一緒に帰って、映画見て、休みの日だって遊ぼーね。他になにする?秋だし栗拾い?(判定は向きあうたった一人に下して貰うとして、来る季節に彼女と重なる時間を想像したら過ぎ去る夏の惜しさが薄まった。なんせ女神との秋。)
秋山紘〆 09/28 (Mon) 17:06 No.102
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