日が暮れるのを待ってた。清水、おまえは真昼が似合うけど。

(電波ジャックを試みるのは9月22日。打上げ旅行も最終日。『清水、ちょっとこっち。』『こっちってどっちだと思う?当ててみて、右左?それとも後ろ?』―――要件を簡潔に。なんて受験の面接じゃあるまいし型に嵌った言葉選びは捨て置いて、無駄にあふれた会話すらも楽しむみたいに紡いで注ぐ電話口。さていま彼女はどこも向いているだろう。『ていうかおまえ今どこに居るんだろ。俺も把握してなかったな。』『別荘の外、浜辺まで出て来られる?』どこまでも陽気な彼女を相手と思えばこその戯れた言葉選びは笑気を混ぜた口吻で音声と化す。ちょっと時間頂戴ってそういう意図を捏ねた誘い文句に乗ってくれることを期待して、もし彼女の姿をやっと目視できれば砂浜でしゃがみ込んだまま筒を持った手を振るだろう。)今日買出し行った時に見つけたんだけどさ。これ。見た瞬間、絶対清水に声掛けようって思ったんだ。(これ、とはまさに掌握している筒のこと。見てとばかりにパッケージを見せる。それは向日葵の名前が綴られた打ち上げ花火だった。)誕プレって程大したものじゃないけど、俺からの祝いも兼ねて。いい?火つけるよ。(土台を砂に埋込むことで花火のポジ取が決まれば、ダイニングから拝借したライターで着火。焦げ臭さが鼻先を擽る数秒後には向日葵のように黄色い火花が暗がりはじめた空にちらつくことだろう。思ったよりも空高く昇っていったきらめきはもしかすると向日葵よりも星に似ていたかもしれない。)海でさ、おまえの目の中に向日葵が咲いて見えた記憶があったから。だからこれ。そもそもこの花普通に好きだろうけど。(細めた目元が笑顔をあらわして、しゃがんだ態勢その侭に彼女を見遣る。プレゼントを名乗るには儚いたかが一瞬ぽっちの美しさは彼女の瞳にどう映っただろう。)誕生日おめでとう。清水。
葉邑柊〆 09/26 (Sat) 00:35 No.61
えっ何どっち?!(外出から戻るや、バーベキューの準備が進む別荘内を横目にシャワーでサッパリ爽快感を得た直後。受話直後の突拍子の無さに、一瞬ばかりノゾキの可能性過ぎらせたのは後々の笑い話にするとして、戯れと気づいたなら早かった。『完全に今後ろ見ちゃったし、このシチュ誰かいてもいなくてもやなんだけど?!』とは不満げに、彼に見えなくとも俄に唇尖らせるくせ、『テキトー過ぎんじゃん』と大雑把の側面をこのタイミングで垣間見ればかろい笑声弾けるのもすぐ。『ねえちょっとそーかな?!って今期待してたんだけど祝ってくれんの?』と、今日の日付を思えば唐突な呼び出しに先んじて期待を込めてしまうから、二つ返事で向かった砂浜の姿に駆け寄る足の速いこと。)んははっ!こんなんあるんだ?!ねー葉邑もしかしなくてもヒマワリであたし思い出すよーになってんでしょ?あたしも今クリームソーダ飲みたいもん。(筒状の花火とパッケージにて把握したなら、夏を思わす花の名に異国でのひと幕を紐付けるのは容易だった。何せ吸い込む空気は潮の匂いを孕み、異なるのは服装ぐらいのシチュエーションだ。花火を視認した瞬間から期待は盈ちるからこそ、確認のいい?に即時頷き、砂浜にしゃがみこんで見上げた薄明の空に咲いた黄色を映じた瞳は、瞬間きっと色濃く染まったはず。)うっわけっこー高くない?!これ速攻花火始めてんのバレたな?!(歓声は笑い混じり、仰いだ空から一転視線を地上に戻せば憶測に軽く頷いた。水着でなく、瞳に宿す花に纏わるそれと知れば照れくささもひとさじ落ちるけど。)ありがと♪葉邑誕生日けっこー早かった?来年はあたしもなんかして祝うから一週間くらい前に予告して!(ともすれば無茶ぶりの様相呈すねだりがきっとこの男には造作ないだろうとの読みが正しくとも、約10ヶ月に及んでハードルが上がり続ける可能性にはまだ気づかぬ杪夏のこと。)
清水立夏〆 09/30 (Wed) 04:59 No.137
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