あーきーよーしーくーーーーーん！（白煙にけぶるBBQ会場で殊更朗々たる声はきちんと届いてくれただろうか。いちばんぼしを気取る真っ黄色の星柄Tシャツをはためかせたら背後からの強襲は無遠慮かつ横暴に、飛びついた背中がひしゃげれば共倒れ、俊敏に避けられたのなら女ひとり砂浜にダイブ、踏ん張ってくれればおんぶハラスメント成功と相成るが顛末は如何に。どちらにせよ戯れを一方的に楽しんだのち直ぐビーサンに爪先を砂浜へ落とせばハイウエストのショートパンツから伸びた太ももの砂を払う。）ね、あたしの美食地図・改見たくない？見たいでしょ、知ってるよ。（こっちこっちと拉致宛ら手を引いていけば過日を彷彿させるグリルの上には、豚足、ピーマン、たまねぎ、ラフテー、沖縄ステーキ、よくわからない橙色の魚が几帳面な配列でじゅうじゅうと音を上げている筈。）何分いられる？花火する時間はある？（トングをかちかちと鳴らして皿を片手にしたらお望みのままのサーブは最初の数分だけ。卒然と辺りを見回したら飲み物求めて）飲み物忘れてた、乾杯したいね。

ねずみ花火仕掛けるのと迷ったの。最終形態は出会い頭の背負投げ。（共倒れを回避した顛末に「おっ」と短な声を上げて足をぶら～ん、直砂浜踏みしだく爪先が愉快に弾んで「もいっこはじめて頂きました♪」と語尾の音符はまねっこのお揃い。）やった。何からいきたい？やっぱチーズ？（過日と同じ航路をなぞるならとろけたカマンベールチーズから。斯くして衝撃的な事実を受け入れ難くてぱかっと呆然たる唇が開いて閉じて）ほんとうだ…。花火も海もやってない、お祭りだってあたしの閉じ込めちゃいたい浴衣姿を披露しただけで…縁日してないし…。（引き合いに出す過日は自意識過剰をふんだんにトッピングして伏せた睫毛へ乗せたる半分本気の悲嘆。「やだやだやだな　来年はかならず…」と3歳児の駄々をいじけた物申しに乗せて、せっかちな性分からはあまりに天文学的な未来を渋々と呈する。「あっ　ありが　カルピス！」とその背中へ声をかけたら乾杯に向けて皿の上を飾り立てて、直コップを手に取れば）かんぱーい！楽しかったね、今年の夏ね。秋吉くんなにかやり残したこととかない？無さそう。（夜でも汗ばむ熱気のなかで咽頭を滑り落ちるカルピスが心地良い。一口バジルソーセージの端っこを齧ってから夏の終りの思い出話でも。）

あたしあのときの秋吉くんの髪型すごい好きだった。可愛かったな。でこっぱちのやつ。もうやんない？落ち着かなかった？（浴衣姿から芋蔓式に記憶を手繰って見通しの良い姿の再リクエスト。設えられたオーバーテーブルにコップを置けばそろそろ焦げそうな野菜類に手を出して、考え無しに放り込んだ玉ねぎの熱に舌をやられる迄から泣きっ面に蜂の現今。）秋になったら？帰ったら？まず何やりたい？秋冬の秋吉のラインナップおしえて。あたしは芋掘りからやりたい。（いもくりなんきんの秋はまず食欲から。名が体を表しているなら秋の王様たる少年のプランに肖るつもりでメモ帳代わりの腕を「はい」て差し出そう。マッキーもあげちゃお。）たしかに。これだけ多いとワイワイしていいよね。逆に偶然花島くんに誘われるタイミングで教室に居なかったらこの夏ぜんぜん味気なくなってたな…。（サマリンでの日々は運とタイミングの為す奇跡。懐古するような嘆息がしみじみと白煙を揺らす。）気付いてくれた？そう、あなたの一番星を気取ってお星さまTシャツ着てきちゃった♪（語尾の音符はもう真似っ子じゃなくて自然と弾んだもの。調子こいてくるんと回る体躯に合わせて黄色いけばけばTシャツが翻るが、その際ふと腕に散らばる文言が視界に入れば卒然と挙手して）あ！あたし学校に帰ってからにむけてあなたに提案があります。

男の子に可愛いが禁句ってほんとうなの？いちばんの褒め言葉で完全降伏の気分なんだけど…。（可愛いの前では無力。かの有名なドラマの台詞を脳裏で引っ張り出してから遠い目の前で手を振った。「あんまり嫌な評価？」は心配そうというよりは感興を孕んでの疑問符、何が好きで何が楽しくて何が嫌なのかは片っ端からふれてみたい気分だった。「いっぱいあるね。分身しなきゃだめだ。」終わりを知らないイベントへ眦下げるも束の間、メモ帳代わりに差し出した腕に浮かび上がったニコちゃんマークを受けたら「おんなじ顔してる？」はきゅと口角を上げて擬えた表情だった。斯くして360度回転してただいま世界の頃合、おりこうさんな挙手はそのまま人差し指を突き立てるかたちにして）名前で呼んで良い？呼びたいし、呼んでほしいし。仲良しのとっかかりだったのに、だったから、遅くなったけどそうしたい。いかがでしょうか。（委員会での議題提示みたいな几帳面な口吻はけれど言ってからはにかみに襲われて、マンボウみたいな表情でおどけてみせた。隣の中指もぴんと伸ばしたらお次は）それでね、この夏にあたし秋吉くんに超いっぱいたくさんわがまま言ったでしょ、どれも10000000点満点で　こたえてくれて…　　こたえてあげたつもりなくっても、あたしにとってはいつもびっくりするくらい満点だったの。だから、あたしも秋吉くんのわがまま聞きたいって思って。なければいいんだし、別に今形式ばってこれ！じゃないけど、なんか。なんか……。そういう権利をあたしがあげたかってることは知ってて、いつでもエイ！て行使してって感じ。（あんまり上手に積み上げられなかった言葉は途切れがちで、時折思考を挟むが伝わるか。睫毛の奥から伺う。）

（過日を想起して）……うん。（顔を覆って、その隙間からぎゅっと酸っぱいものでも食ったような表情覗かせる。）超可愛かった…。だめだった？っくぅ～～～～～…ちくしょお～～～…！！！ってかんじ。（正直な吐露は致し方なく、「かっこいいが欲しかった秋吉くんも覚えておくし、じゃあ今度はかっこいいて思わせて。」と取り敢えずの終着点は重みもなく明日訪れるかもしれない未知への期待。）やった！にちでもいいよ。（過日もやり取りした頑是ない渾名を引っ張り出したら倣って口角が上がる。「かもめかもめかもめ…」と散々親しくなった後の呼称がやけに新鮮で数回転がしたのち、）呼ばれるときいっつも笑顔ってこと？怒りながら仁希ぃ～～！ってなっても笑っちゃうじゃん。（口に出す度に毒気抜かれる表情になるなら大団円と含羞孕む唇の端っこを指でつんつん。斯くして2つ目の提案へ表情を陰らせる少年とは相反してぱっと表情が明るむ所以は）そういうと思った。（眦下げて曇る鼻先を指できゅと抓んでから離す。）あき　かもめのことだから、あたしが真面目だからやって貰ったらやり返さなきゃって義務感とか、等価交換とか、悪いなって思って言い出したのかなって思うとおもったの。でも違うよ。（言葉選びは手探りというよりは舟を編むように、胸裡にしたためる情操が1mgも違えることのないように。）ありていに言えばあたしがあなたをとても好きなので、自分が嬉しくなったぶん嬉しくなって欲しいみたいな。あたしが勝手にしたことで、勝手に選んだもので、笑ったら良いなって。（過日の動物園で何かあげたいなと呟いた独り言と同じ内実は伝わるか。しみじみ落とすわがままの音吐を急かすことがないように連ねたら「おれ相手だから考えるんだよ。」は拗ねたふうな物申し。）無いなら良いの。いや良くないよ、わがまま言われた～い！の気持ちもあるし。でもどっちにしてもあたしはこのままわがまま街道を突っ走りますね、これからも。（トンデモ我儘は自覚してる癖に特段矯正する気がない事だけ吐露して五指をひらく。）

かっこいいの基準……。あっ、でも、想像したら秋吉くんがいきなり「俺」って言い始めたらかっこいいと思った。（存分な思考の末の一言、平素の安穏としたひらがな発音と違えた唇の動きは伝わるか、「期待していい？」は傾向と対策を練られた分自然跳ね上がる期待値をそのまんま。真剣に選んだ末の言葉が思った通りの意図で届くか否かの答え合わせは睫毛の奥から伺う瞳で明白か、同じく言葉を選び倦ねているかの風采へ「うん」「うん」と相槌を挟んで数瞬。あまりに大仰な単語へ「愛！？」と素っ頓狂な声を一度、次いで噴き出してしまったのは大仰にも関わらず強ち大袈裟でも無かろうとの所感故。）あっはは！やだ　うん……っふふ、愛って言われたらびっくりしちゃうけどしっくりくるかもしれない。うん、そう。　　そうかも。うわ、照れる。（言ったそばから湧き上がるむず痒さに項まで朱色に染めて口元を覆う。何かと深層を引きずり出されがちな相手へ慣れたと思ったら次の一手、忙しくてままならない。）それはねえ、「ドキッ」て言うんだよ。（故に心臓のあたりを人差し指でとんと突いて訳知り顔の意地悪顔ではなつ意趣返し位は許容されて然るべき。斯くして最初のわがままへ目弾き一つ。）わがままあ。（詰るような口調は効果を持さない。甘やかすということは手厳しいという振りをするということだ。いいよって答えの代わりに「おりゃーっ」と呑気な声を最後に広げられた場所へ遠慮なく飛び込んで拙い抱擁をぶちかます。）「嬉しい」と「ぎゅっ」おさまった？（でも多分親しく交わした言葉の割に行儀良く設えた線へ触れる抱擁は、平素他人へは許さない距離感とも相俟って鼓動の加速度を増す未来もあるかも。どっちにしろ12cmぶん見上げた先に感情が咲いていればそれだけで、兎も角はハッピーエンドの大団円。）