仁希。金木犀。一等賞。しりとりね。

(どうしてか小田仁希の背中は被さりたくなる。いつかを繰り返すみたいに彼女の首元巻き付く腕を横から登場させ、そのまま手首を鼻先にうんと近付けた意図は秋に香る金木犀が語ってくれる。)ねえざわざわしてた?こっちしてる?誰にもなんも言われないから、花島に仁希とお揃いの香りなんだって教えたら良かったねって…よいけどそうじゃなくて……付け足りなかったかなあ。(あっちからこっちへ彼女をお迎えに参った訳だが、短い道中にしたって仁希のにの字も紘のひの字だって耳に入って来やしなかった。見せない顔は口を中心に不満気に尖り、大きく一歩後退して彼女から離れた手は自らの鼻先を掠めて確認を行った。)まあいっか。打ち上げ花火!しよ!もう用意してあるの、こっちこっち。(手招きと共に向かう先は浜辺。別荘からの明かり届く範囲であるから静けさよりも賑やかな声をBGMとし、たった一つ置いた花火に準備もなにも無かったけれど。)この花火が上がって消えるまでが仁希とうちの時間。多分すぐ終わっちゃうけど、儚いのがいいもんね……あっわたしたちの友情がってことじゃなくって!(時間制限有りとしたあっさり逢瀬に彼女の気を引く思惑なんてなくて、明日も学校で会う日常を疑わないから。それでも着火する素振り一向見せず、ふと映した夜空にこれまたふと思い立った。)お星さまに願いごとしよ。手と手を合わせて……、仁希の寝相が激しくありませんように。仁希とリンクコーデして遊びに行けますように。大好きな仁希のあなた呼びがやっぱり大好きで、ラインでも何でも嬉しくなっちゃう心が落ち着きますように。(来たるお泊まり会への不安から彼女の声限定で耳溶けよう何てことない呼び名の耐久性を求めて最後、彼女も星空に願い託してくれるなら聞こうとする耳は傾きがち。それから小さくとも打ち上がった花火を二人占め出来れば今日は満ちた心地から分かれ際まで隣並びに歩み、まだ秋色に染まらない毛先を一撫でしてから)じゃあまた明日。おやすみ?かな。おやすみ!(夜は濃くなるから適当だろう挨拶を向けて背中を見せる。引かれる後ろ髪がゼロなんて事もなかったが、それ以上に飛び込みたい明日があれば立ち止まっても居られない。)
秋山紘〆 09/30 (Wed) 22:37 No.148
こうなっちゃったらもうにおわせじゃなくて「モロ」だよ。わかっているの?(揃いの金木犀のが香ってから目弾きひとつぶん。二度目の強襲へ頓狂な声を上げるより先に形ばかり咎めるような口吻で首元に巻き付いた腕に指先を引っ掛ける。「あすなろ抱き」と戯ける時分は夜らしさを増して、)あは、花島くんのコメント超想像つく。でもあたしは後ろから紘がきたのわかったよ。香りで。(クラス中でひめやかに噂される目論見通りの展開とはならなかったが秋山を探すための指標としてなら成功。親指と人差指でまるっこいサインを作ってから手招かれるまま浜辺へと向かえばさやけさに溶ける波音だけが耳朶を打つ。「終わりがあるのってロマンチックでいいじゃん」と横からの茶々入れは同じくこれから飽きる程繰り返す日常に秋山を据えているからこその軽さで、けれど人工的な星より先に夜空へと視線を向けたら)えーっ あたしの寝相 そ、まあ  いいけどお…。…………、紘が手作りお菓子に爆弾ぶちこんできませんように。リンクコーデしたいからディズニーの抽選あたりますように。これからも紘があなた呼びにドキドキしちゃって、ついでに目離せないふえ~~んってなってくれますように。(瞼を伏せてお願いごとを乗せる。しっちゃかめっちゃかにお巫山戯塗れの希求は言ったそばから唇がむずがゆく緩んでしまうのも不可抗力で、逐次反応を伺いたがる双眸が薄目を開けて隣り合う秋山へ一瞥くれる不埒を働く。斯くして願い事を全て終えた頃、緩徐に持ち上げてひらいた世界にはじめて迎え入れるのが笑顔の秋山だったら良い。今度こそ打ち上げた花火は内緒話みたいな控えめさで笑ってしまったけれど、二人じめするならこれくらいが丁度いい。夏に取り残された色合いだって秋山に触れられたら途端意味を持つ。覿面に待ち遠しくなる秋へ駆け出す準備は万端だ。)また明日ね。おやすみ。あっ、もうそろそろお腹出して寝たら風邪引くから気をつけてね。(背中を投擲する台詞は特別感の何一つ把持せぬ台詞だがそれがいい。明日は今日の延長線上、夏を境に入り込んだ秋山という存在こそか今夏手にしたとっておきの日常だった。)
小田仁希〆 10/03 (Sat) 15:12 No.174
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