(最後の夜にもおいしいものを。)

(国外国内ひっくるめて散々遊びつくした夏も終わろうとしている。残暑の風が通り抜けるオープンテラスは1年1組全員集合のにぎわいを見せ、そこにある騒がしさは、たとえば耳障りと評するにはだいぶんかけ離れた心地よさをテラスの片隅にもたらした。あわいベージュのリネンハーフパンツとボタニカル柄のビッグシャツでロッキングチェアに腰を落ち着かせてしばらくは脚をぶらぶらと揺らしていたが、そのうちバーベキューのにおいに誘われたらば今にもスキップを始めそうな軽やかな足取りでコンロのほうへ。)じゃがバタある?(先んじてバーベキューを楽しんでいたかもしれない級友の背に問う。後ろから網の上に並ぶラインナップを覗き込んでの「あ、鮭のホイル焼きもおいしそう!」も率直な感想であり、)食べたいものは最初に食べる?それとも最後にとっとくタイプ?(そんなどうでもいいような雑談だって最終日なのだから許してほしかった。)
高代晴可 09/22 (Tue) 22:25 No.11
バター取ってきたらあるわ。(異国の島でも同じことをしていたような。うっすらとした既視感のままに男の手にはトングが装備され、網上の食材たちの世話を焼いていた。世話というか普通に焼いていた。時折やって来るクラスメイトの皿の上に食べ頃のものを載せる、それをルーチンワークのように繰り返していたが。届いた声の主を振り向くことで確認し、網上にあったじゃがいもがいい具合なのも見たのなら)ちょい待ってろ。その間こっち頼むわ。(トングを彼女に預け駆け足でじゃがバターを構成するバターの方を確保してきたなら。)ほい。……あー、そっちもまあまあ食べ頃だな。お目が高い。(にやりと、少しばかりからかうような口調で褒め言葉を紡ぎ終わる頃にはホイルを開き、その様子を確認していた。)あと少しか、じゃがバター食って待っててくれたらこっちも提供出来るわ。(傍らのテーブルに置いていたウーロン茶のグラスを手にし、食べ頃カウントダウンの始まった鮭の香りを感じながら、)気分次第だけど、熱いもんなら先だな。冷める前に食っときたいっつうか。高代は?(ウーロン茶は少々温くなってはいたが、喉を潤すには問題なかった。ちらりとレンズ越しの瞳を彼女へと向け、同じ問いを変えそう。)
江坂匡 09/23 (Wed) 00:05 No.14
バーベキュー奉行?(手際のよさを目の当たりにした感想はまったくひねりのないそれだが、装備されたトングがたいそう似合うさまを見れば「絶妙な焼き加減のお肉を焼いてくれそう……」と欲に忠実なしょうもないひとこと。目的のものがあるとすればうきうき気分で、)えっ(預けられたトングはすなわち二代目奉行襲名と判断。慣れない手つきで野菜をひっくり返し、焦げかけたタマネギを証拠隠滅するようにつまみ食いするうちは奉行なんか務まらない。もぐもぐする口許を隠すこともなく帰るひとりとバターを迎えよう。)おっかえり~~ え、これも江坂が作ったの?すご。うわあ、ちょういい匂いする……。(ホイルから昇る鮭の香りに思わず身を乗り出せばほのかなサーモンピンクが視界に飛び込んでこよう。見る目を褒めるからかいの言葉に「サマ高の彦摩呂とはわたしのこと」と笑えば、)至れり尽くせりだな~~最高じゃん。じゃがバタたべよっと、 あ、江坂最初のひとくち食べなよ。ここちょうおいしそう。(完成したじゃがバタの、いちばんバターの溶けたおいしそうな箇所を指差して試食を勧めた。)わかる。熱いものは冷めないうちが鉄則だ。(彼のことばには首を思いきり縦に振って同意。投げ返された質問へはおんなじように烏龍茶を呑みながら一考し、)まっさきに好きなもの食べて最後の最後で「取っとけばよかった~」って泣くタイプ。(もうすぐできるサーモンのホイル焼きだって我慢できそうになかった。)
高代晴可 09/24 (Thu) 22:58 No.46
(鍋に冠されるであろう称号が目の前の品にすげ替えられる。ふは、と空気の漏れたような笑い声がまろび出た。)なんだその称号。まあでも褒め言葉として言ってる気がしたから今は奉行すっか。(謎の動詞を生み出した男の手が手近なところにあったホタテをくるりと返す。所望の品を作り上げるのもまた奉行の役目かとじゃがバターのためにトングを一時譲渡し駆けた男の手の中でその熱に触れたバターがほんの少し、柔くなる。「なんか食ってる」とは非難の色など皆無、単に目の前にある事実を述べただけの響き。)や、さすがにそんな料理やる男子じゃねぇぞ俺。このまんま焼けばいいって花島がくれた。けど味はいいと思う。なんてったって花島の別荘で出るもんなわけだし。(下手したらこのクラス全体の共通認識と化すくらい、胃に馴染んだ事実を告げながら視線は一度バターを落としたじゃがいもへ。)んじゃあ食レポしてくれよ。(自称サマ高の彦摩呂に乞いながらひっくり返したそれは良い具合の焼き目がお目見えしていて、「いーの?」と提案に確認する風の口振りで問うたけれどちゃっかり一番美味しそうにバターだった液体が滴る一角を確保していた。代わりとばかりに彼女の皿にはじゃがバターを三切れほど、量重視で入れて渡そう。)そ。ってなワケでこれもまさに今が食べ頃な。俺も食う。(トングを箸に持ち変えて熱々を頬張れば、ほっこりとしたじゃがいもの旨味にバターの芳醇さのハーモニー。緩んだ頬が答え代わりだった。)っは、その高代なんかすげぇ想像つくわ。お前嫌いな食べ物とか無さそう。あんの?(異国に飛び立つ直前に彼女としたやり取りもあってか、食べ物に纏わるイメージが色濃く根付いていたようだった。)ホイル焼き置くスペースあるか?ほら、美味そう。(程よく火の通ったサーモンの上を彩るような玉ねぎとピーマン。色合いも食欲そそる品が二人の胃を休ませてはくれないようだ。)
江坂匡 09/27 (Sun) 03:21 No.78
褒め言葉に決まってるんだな~~これが。(名誉であると信じて疑わなかった称号にすこしでも残る悪口の可能性を払拭せんと笑えば、「お奉行様~、あのでっかい肉のかたまりも焼いてくださいませ」と地元スーパーじゃおそらく見ないサイズの牛肉のかたまりを指差す。マンガ肉だって夢じゃないおねだりはしかし、腕まくりして準備万端であるから当人こそやる気満々だ。)このタマネギもう食べた?あっ  まいの。ものすごく。びっくりした。(つまみ食いがバレたことなどなんのその、もうひとつ口の中に放り込んで咀嚼し「あま~~」と舌鼓。)そうなの?奉行を機に料理に目覚めたりは? あ、たしかに。絶対おいしいや。時々マリリンさんのご飯恋しくならん……?(可能性を提示するくちはものの数秒でホームシックならぬバカンスシックを語る。だいぶんおいしいものに慣らされた舌が食レポを求められたらば「じゃがバタの大運動会や~~」の棒読み彦摩呂語録にて許してもらいたいところ。じゃがバタをひとくち食べると、)ん!(目をまんまるくし声にならぬ声が一音。)お おいしい……お祭りの屋台で食べるのよりずっとうんまい………。(ひと切れ、またもうひと切れと箸は進む。多めに入れてくれたはずのじゃがバタもいつの間にやら級友のそれと然程変わらない量で、彼の表情を見ればおんなじように頬を緩ませ「うまい!って顔してんね」と笑った。)え~~~そんなに?想像できる?江坂のわたしのイメージどんなんなの? 言われてみればそんなにない……野菜は料理による。カレーにすれば大体おいしい。(というのは勝手な持論であるが、そこから続く「江坂は嫌いなものある?」「なにカレーが好き?」等々は与太話みたいなもの。待ち侘びたホイル焼きの完成につよく頷いて、)ホイル焼きのために開けといたんですよ。(その実、じゃがバタを早々に食べ終えて空いたスペースにもっともらしい理由をつけて鮭をまねいて「いただきます!」を。)
高代晴可 09/29 (Tue) 23:15 No.127
(褒め言葉確定に気を良くした男は乞われるままに牛肉へトングを伸ばし、網の上へとログインさせた。じゅわ、という音と共に肉の焼ける食欲そそる香りが煙を伴い漂う。)まだ。そんじゃ俺も食うかな。(玉ねぎに狙い定めて幾つかをそっとつまみ上げ己の皿にキープしながら、彼女の表情と言葉に期待値は絶賛アップ中。ただ焼きながら具合を見ているだけだが、その笑顔に貢献したという気持ちが少し、男の心を満たした。)焼くだけとかならいーけど、手順が多かったらめんどい、が先に来そう。……だろ?めちゃくちゃ信頼感あるやつ。(この夏通して刷り込まれた認識の共有に、思わず口元はほころんだ。「なる」と短くも即答し、遠き地の思い出に結び付く味を回想する。けれど今もまた、美味しい、はすぐ傍にある。出来立てにはそういう魔法がかかっているのだと、よく知っているから。)大運動会て。なに、口の中で美味い、に向かってダッシュ中なワケ?(無茶振り食レポに対し打ち返された言葉にほころびは決壊し、ふは、と空気の抜けた笑み。ならばと伸ばした手が掴んだほくほくさを口へと招き入れれば、数秒後にはおんなじ表情になっていた。)めちゃくちゃ美味そうに食うからただ焼いただけの俺でも食べてもらえて良かった、って気持ちになるわ。(感情と直結するような彼女の表情は薄暗い幕に包まれた世界で、きらきら光るように映った。)割といっつも楽しそう、が今ぱっと浮かんだ高代のイメージ。……そっちも外れてはいねぇのか、カレーは確かに何入れてもまあまあ許されるよな。(ふんわりとしていた印象を改めて口にすればそこに終息してゆく、そんな心地だった。この夏を通して曖昧だった人となりがゆっくりと固まり出す。「強いて言うなら匂いの癖が強いやつ」「肉なら鶏肉派」なんて軽く返しながら口に含んだ玉ねぎはなるほど、確かにふくよかな甘さが広がった。その間に食べ頃迎えた鮭は彼女の元へと遡上する、さっき投入した肉を返しながらその様子を見守ろう。食レポなんて求めなくてもきっと、意識せず浮かんだ言葉や表情こそが正解なのだから。)肉もまだ高代に食われんの待ってっからな。……焼き加減はいかがなさいますか?(なんて格好つけてトングをカチカチ鳴らすよるべ。美味しいを共有し合う沖縄最後の夜は賑やかに更けてゆく。)
江坂匡〆 09/30 (Wed) 23:24 No.149
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