秋吉。お散歩付き合って。

(沖縄の朝食を食べ終えて食器を片す傍ら。彼の姿を双紫が捉えるや、呼び慣れた名を呼ぶより右手が彼の服の裾に伸びるが早かった。)お散歩。いこ。(了承得られたなら過日ふたりでお揃いにしたビーチサンダルをつっかけて、何処を目指すでもない靴裏が太陽で温度あげた砂浜を踏む。目映い太陽を直視できない双眸が隣歩く彼のかんばせを追ったなら、思惟の果て一文字の唇を漸く押し開く。)いつもわたしが言葉足りてないん、秋吉なら分かってくれるかもって甘えちゃってるからな気がする。(とりわけ苦さもない声音で無造作に白砂を一歩小さく蹴り上げた。時間を掛けて観照した現今も上手に伝えられないかもしれないが、それでも逡巡の隙はないことは真っ直ぐ捉えた眼差しが証拠。)でもちゃんと言わなあかんよなぁって思って。(視線かち合うことが叶えば幾許かの含羞があるから「なんか照れるなあ」は頬をかく人差し指と一致するけれど、)こないだは話すのヤにならんって言ってもらって、良かったと思ったら安心して泣いちゃった。わたし元々友達つくるの得意じゃないから、こうして変になっちゃっても仲良くしてくれる秋吉がやっぱり特別。この考え方は変わらんかも。ごめん。  それから秋吉に言われる「ごめん」は苦手。だって何言われても、一回もイヤやって思ってない。(纏まり切らぬ思惟の糸を解いて、「一方的にしゃべりすぎ?また困らせてる?」とそこで漸くちんけな気遣いに眉が歪む。太陽のお陰で伸びたふたりぶんの影が横並びのさまに視線が落ちた。)
巽志真 09/22 (Tue) 16:13 No.10
(クラスメイトとの食後の談笑そこそこ、裾が引かれるまま振り返れば和やかな笑顔でうしろに続きその場を後にした。歩調は異なれど並ぶ肩が離れることはなく、履き慣れたスニーカーが砂浜を不規則につぶす傍ら。普段より浅い角度で上がる口角は、彼女の話の切り口を受け取りまた少し下がる。かち合う視線の先、頬をかく様を前にゆっくりと瞬き一つ、ここ数日ずっと気になっていた涙の理由があっさりと明かされた所で驚き目を丸めれば)え、あれって安心の涙だったんですか……?!……本当に?(窺う眼差しには野暮で下世話な詮索心こそ含まれないけれど、ただ真意を知りたがる瞳が彼女の淡い紫色をレンズ越しに覗き込む。もし本当だと改めて本人の口が肯定をするならそれ以上の言及もなく、そっかと再び進行方向に向き直って束の間の沈黙。様子を窺うような疑問符へ、安心させるべく首を横に振って音なく否定すれば)仲良くしてくれる人はみんな特別だって言ってましたもんね。だからおれのことも特別だって気持ちは変わらないよって意味ですよね?(彼女の言葉を噛み砕いて飲み込む為に、言葉足らずな普段を意識して取り除けば一言ずつ確認。一息置いて、)おれがこの間巽さんにやめてほしいって伝えたこと、覚えてますか?(隣を向く瞳は波も立たぬ平穏を保ったまま、首を傾げれば)もう秋吉だからって“言わないで”って言ったんです。でも巽さんは、思ってるから言っちゃうって言ってましたよね。それは、……いじわるですよ。言わないでほしいのに…頑固。(素直に落ちた眉尻は言葉以上の重みはなく、悲しみよりも何方かと言えば拗ねに近い。少し尖った唇は幼く)もしかしておれ、へんなこと言ってるかな?『ごめん』ね?(続けた一言はわざと。細目でがんこちゃんの頬を人差し指でうりうりと押しながら返す様は、一見幼子のケンカみたいに意地悪く。)
秋吉かもめ 09/23 (Wed) 09:38 No.23
う、うん。(嘘か真かと問われれば真実と信じて伝えた唇を噤んで胸裡で確認の一秒こそあれど、)ほんまに。嫌われちゃったかなとおもってたから。(「あの日はごめん」の声色は罪悪感に満ちるけれど、レンズ越しにかち合った眸にそれ以上は続かない。ふたりのあわいに流れる沈黙に心臓の脈打つ音だけが鼓膜を揺るがすとて、自身の意嚮を確かめんとする彼の声だけに意識は向かう。確認にも記憶にも幾度かの首肯で応えたのは同意のしるしで、隣の思惟を窺う眼差しはただ彼だけを見ていた。はたと気づきを得た一瞬の瞠目が睫毛を揺らして影を落としたのは太陽の仕業でも何でもない。)そ、  っかあ。頑固。意地がわるい。嫌って言われてんのにやるのって確かにひどいやぁ……。(成る程の理解より先、己の稟性に眉が情けなく落ちた。ばつの悪いかんばせが何も捉えないのは束の間、持ち上げた双眸には彼だけが映る。「ずっと良い意味のつもりやったから、そんなに嫌な想いさせてると思ってなかった。ほんまにごめん」と頭を下げたのはたったひとつ謝罪の気持ち。こうべが持ち上がるや人差し指で不意を突かれた頬を小さく膨らませて)へんなことゆってないもん。あっ ごめんした。(膨らませた頬に空気を増やして形ばかりの不服顔で彼を捉えたけれど、そんなのは直ぐ崩れ去ったっていい。)………、やっぱり巽さんと話すのいやかも!めんどくさ!ってなってない……?(何より眉尻下げたハの字と恐る恐るの声音が、彼の目見を窺う弱気を如実に顕した。)
巽志真 09/24 (Thu) 00:00 No.34
(伝えた言葉を反芻し、やがてゆっくりと噛み砕き呑み込んでいく横顔を眺める。交わった双眸に前髪が影を作り、下がった頭が再び持ち上がるまで唇は依然として閉ざしたまま。突いた人差し指が膨らむ頬に押し返される感覚を得ながら、あからさまに彼女の苦手を突く台詞を指摘されたなら、わざとだよと口角を上げて)………………(暫しの沈黙後、突き立てた人差し指を引っ込めた代わりに、今度は正面から両の手の平で頬を挟んで返した言葉は、投げ掛けられた疑問符へのシンプルな回答ではなく)なんで巽さん、そんなに怖がってるんですか?(ぶう、と押し込んでから離し、払われない限りはいつかみたいに彼女の片手を掬い取り握って繋いだ。いつの間にか止まってた足を再度前に進めれば、ぷらぷら前後に揺らしながらビーチサンダルとスニーカーが砂浜をお散歩。)やっぱり巽さんと話すのいやかも!めんどくさ!って思うと思われてるんですか?秋吉って。(二人分の足跡を残して歩きながら、視線を傍らへ向けて)お出かけ楽しかったですね〜♪あんな経験、もう二度とできないんだろうな〜……あ。そのビーチサンダル、お揃いで買ったやつですよね!おれも履いてきたらよかったな〜。おうちに置いてきちゃった。残念…(彼女の足元を示しながら共通の思い出を辿るように。それから次いで、一点の曇りもない和やかな笑顔を向けて伝えた。)巽さんがおれを突き放さない限り、おれが巽さんから離れていくことはないですよ。おれにとっての友達はそういうものですから!これからも仲良くしてくださいね♪ あ、でももう泣くのはなしですよ?泣くならおれの知らないところでね。(刺した釘は言葉足らずにして誤解も生みそうだけれど、勿論無自覚。)
秋吉かもめ 09/25 (Fri) 17:49 No.53
(沈黙のあわい自身の鼓動だけを捉える鼓膜がやけに騒々しく響く。それが途絶えたのは頬に触れたぬくもりの面積が増えた刹那、内実を問う声に片眉は無意識に押し下がった。返答を胸裡を引っ繰り返して模索して見つけるより先、繋がれた片手は抵抗せずビーチサンダルがずっと先まで覆う白砂を弾いてゆく。足跡が新しくついていくまっさらな浜辺を見遣る視線を隣に送れば、視線が自然かち合った。)……………友達のこと好きになればなるほど、失うのが怖くならん?わたしはいつも怖いよ。(相手が“彼”だからではない純然たる持論が重たい一文字の唇を押し上げて口先を突いたとて、無論責める色合いは含まない。過日の思い出を辿る口吻が続けば、かんばせはようやっと眦柔いで言葉の一歩目が軽くなる。)めっちゃ楽しかったなあ。…デートじゃなくても楽しいとおもう、きっと。またお出かけしよう。  そう!お気に入りやから持ってきちゃった。素敵な靴は素敵な場所に連れてってくれるって言うやん、だから楽しい思い出いっぱいのこのサンダルは絶対素敵なとこに連れてってくれるはず。(土踏まずに紛れ込んだ白砂を払うように片足持ち上げる所作まで視線は地に落ちるけれど、次ぐ声音につられるようにして彼を捉えた眼差しの先。つられるみたいに口角が持ち上がって終ぞ眦が溶けた。)っあは、こんな怖がりやのに秋吉のこと突き放すこととか絶対一生ない。地獄の果てでも追いかけちゃう。ずうっと仲良くして。(強請る口吻は軽やかに本音を織り交ぜたつもり。とて、逆接が打つ釘に二度の目弾きに喫驚が乗ったのは、)ええ、がんばる…善処する………。これは嬉し泣きです!いま巽はハッピーな気持ちです!の宣言つきでもあかん?(感情のコントロールに自信がない故に冗句を舌先に。)
巽志真 09/26 (Sat) 22:02 No.70
なるほど?(大事だからこそ失うことを怖がる彼女の思考は、自身の考え方と異なりこそすれど理解には容易い。上がった語尾はいたって軽く)えーーでもでもっ、怖がりながら友達と遊んで楽しいですか?せっかく好きな人と好きなことしてるのにもったいない!楽しいはずの時間も楽しくなくなっちゃう…!(角が取れ切れていない言葉選びは繊細さにこそ欠けるだろうが、これもまた他意を含まない純度高い持論。「難しいですね!」いつかと同じ言葉はされどいつかよりも明るく軽やかに鳴った。また、と差し出された近い未来へ満面の笑顔で頷きつつ、絶対や一生、ずうっとと永遠を願う言葉は確かに失うことを怖いと話す先程の彼女の内実を裏付けるようでやけに腑に落ちたから)うんっ!! 怖くなったらいつでも言ってください。その時に巽さんが一番欲しい言葉をあげるから♪(力いっぱいの頷きがどうか彼女の中の恐怖心の一端でも拭えますように。テンポ良く交わされるやり取りが自身から発した台詞を原因にまた鈍るならば、首を傾げて)巽さんって泣き虫なんですか?(だとすればまた一つ、秋吉の中にある巽志真のパズルピースの穴が埋まるが果たして。「おれ、実は痛いとか悲しい以外で泣いたことないんですよね〜。どんな感覚?」それから先はきっと単なる雑談。まだ暫くの砂浜散歩の後、お待ちかね宝探しのリベンジマッチといこうか。この先きっと何度だって彼女の怖いを追い払ってやりたい。天に瞬く一番星、地獄の果てへ思いを馳せて、にっこりと笑った。)
秋吉かもめ〆 09/28 (Mon) 01:26 No.93
むつかしい!ってなったらそのたびに答え合わせしよ。させて。(寄ることのなくなった眉根はその侭に鼻先から抜ける笑みは想定したよりずっと明るい。躊躇するように白砂に落ちていた眼差しも、もう落ちることはない。)怖がるたんびにいちばんほしい言葉もらったら、甘えちゃうな。困った困った。(口先ばかりの困惑とちぐはぐに朱に染まった耳柄は力一杯に手向けられた首肯への照れ隠し。とて自身の人品問われたなら小首捻る思案顔こそあれど憂慮は孕まず、)泣き虫の自覚はないけど、悲しいより嬉しいときのが泣けちゃうかも。  どんな…うーん、なんかこのへんに気持ちが込み上げてきて抑えきれんくなって、ポロポロてなっちゃう。(喜色の秤の位置を左胸を掌で示唆して、右の人差し指が眦から落ちる涙を模した。此までの十数年の涙の既往を脳裡で探る世間話は、きっとふたりで応酬重ねるうちに移ろいでゆく。「あ、見てみて、綺麗な貝殻みっけ」とか何とか、埋蔵金はなくとも時間は過ぎてゆくだろうけれど。その折、砂まみれになった指先を少し払って彼の服の裾を朝みたいにまた引いた。彼のかんばせが此方を向いてくれるなら、端的な口吻が口先を突くまでそう時間は掛からない。)なあなあ秋吉。  いつもありがとう。だいすき。(態々いろいろ言葉にすることはない。大事な友人への気持ちは謝意と、彼につられるみたいに小さなV字を描いた唇と溶けた眦で、今度こそ全部ちゃんと伝わってますように。二度目の宝探しのあわい、どこを探したって他のものじゃ代えられない宝が隣にあることはずっと知っていた。)
巽志真〆 09/29 (Tue) 14:14 No.117
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