秋吉、保健室。（動詞を抜かしたって伝わるから十分な筈。もちろん彼は多分保健委員じゃなかったし誘う顔も至って正常であるから、文化祭準備と特別で異なる放課後であっても違和感皆無とはいかず。偶然近くに居合わせた級友に理由を問われ、奇跡的に秋吉が委員なら怪我をしたと以外なら「秋吉とタイマン」の妙に事実混じえて教室を抜け出した。彼に向けた目線を伸ばした先、笑う両目は全く同じ高さだと信じたい。）見た感じは……、ちょっと秋吉のほうがでかい？いやいや。変わらない、変わってない。（如何せんサマリンでの彼の日常を知っているからこそつむじの位置が気になるばかり。もはや自問自答の首振りを挟んだ後、ようやっと彼に質問を投げた。）秋吉はもう少し背が欲しいとか思わない？ってもここで高くなられても目潰しだな。（保健室に向かう廊下が祭り準備の賑わいあろうともその手の問いは飛ばず。）

（真っ向からの言い切りに同じく即座彼を見れば屈託のない笑顔と出会い、言葉の意味する所を知るなり肩は力が、口からは息が抜けた。）え、俺ってそんなの？　三国の声はもうちょっと喉を…。どっちのほうが似てるか、帰ったら本人に判定して貰うか。（真似に対して同人物の真似で反応したが手応えは求めてないから程度はお察し。緩いレクチャー交えつつ、彼ほどではないもの楽しげな笑いが二重に響いた。慣れた階段は足元を見ず、突然の問題に困惑を一瞬表すものすぐに頭を捻り始める。すっかり秋吉ペースも気付かぬ自然さだ。）適当な数字じゃないんだ。193って結構あるよな…、194センチだと部屋の天井に頭ぶつける？絶対違うわ…。（ノーヒントで当てたいちっぽけ自尊心は、開扉する音と同時に答えを導いた。彼の後に続いて入室すればまず一言目に。）先生居なくてラッキーじゃん、存分に戦える。（足を運ぶ機会の少なさから身長計へ一直線の道は途絶え、キャスター付き椅子に腰を下ろし足を使って移動しては冷蔵庫を開ける好奇心の勝利。）最低でも170は欲しいよな、あるって言いたいし。牛乳毎日飲んでるけどあんま効果なさめ。成長期って、俺たちもう来ない？（何となく博識の印象もあったから彼の答えを期待しながら、依然椅子移動する手は身長計に触れた。一目で分かるデジタル式。）先、俺からいっていい？

（新たな勝負事に絶対勝利の自信なんて一匙程でも、反して承知の頷きは間を置かなかった。面白いに決まってるから。早々の敗北を知らせる楽しげな不正解音にだってすかさず「正解は？」「言わない感じ？」「おい秋吉」答えを望むがそんな未来はきっと掴めず仕舞いだったろう。）つべ……った！？今ので絶対火傷した、ジンジンする。（不意を突かれた声がすこぶる飛び跳ねた。凍傷負ったらしい右頬をさすさす摩って彼の良心を狙った眼差しも、短距離移動の際にはすっかり元通りに顔色変わらず良好。）俺は6時間とか。……日光浴と睡眠、どっちも十分足りてそうな秋吉が俺と身長同じって…、牛乳飲まない？嫌い？（親切な答えにさも重大事実に気付いたように潜めた問いはユーモアにしたって調子に乗り過ぎたか。そう言って彼を見る目線は身長計に立つなら顎引き真正面だけを一直線に。矢先、先程欲しがった答えとまさかのニアピンに息とも変わらぬ笑声が噴き出た。）やばいな。俄然宇宙に行きたくなって来たじゃん。けど俺より秋吉行くってほうが現実味あるしなんなら行きそうだし。行って本当に伸びたら、俺も連れてって。狭くても文句言わないから。（ドライブするかのような心地で軽く申し出る。作詞作曲秋吉かもめのメロディーに若干プレッシャーを勝手に感じつつ、画面からピピッと鳴る電子音は測定完了の合図。『166.6』表示された数値を確認したなら場所交代。）秋吉。（妙な冷静は彼の数字次第でどうとも転ぶ筈。）

見せない。またお前なんかするじゃん。（事前の察知が明るい声を受けて単なる勘ではなかった事を教えた。頑是無い子供のような一面を直に見た胸中は気張らせながらも、悪い気なんてこれっぽち湧かないのはその人が秋吉だからだろう。早寝早起き秋吉かもめの印象こそ独りよがりであったから重なる事実に知らずへえと声が漏れ出た。）真昼っぽい顔てか雰囲気？なのにな…って、そっか。星か。流星群のこと教えてくれてありがと、おかげで全員で見ること出来たし思い出になった。（いつかの朝食ではしゃいだ彼を思い返す間は一瞬、伝え損ねた謝辞は笑みを携えて。どうやら高身長へは片道切符らしい事実を聞くなり尖った口は誰に対してか不明の不満。）戻らず地球に帰れる方法を秋吉が見つける。それを俺が応援する。見つかるまでは帰らない。てか地球も宇宙だろ？（遊びの色を一切無くした声音の解決策は彼に運命を握らせ、何てことない醸しの問いも正直な意見であった。でっかい丸の中に小さい丸がある、脳裏に描くイメージ図のせい。そうして、彼が台に乗る瞬間を瞬きせず見送って、大いに満遍なく微笑んだ。連続測定する彼を止めるなんてそんな非情な。いくらでも乗っていい。）牛乳はやっぱ飲むもんだな。（優越に浸る一言を向けた口は彼の結論に一笑こぼす。）行ってらっしゃい。けど俺が奢る牛乳飲んでからにしてよ、宇宙は逃げないって。（有言実行で駆け出しそうな友を引き留めた折、保険医の帰宅によって終局なろうとも彼との繋がった線はまだまだ伸ばすだけ。）