さすが小糸。（仁王立ちへ噴き出したのはそのカラフルな無鉄砲のせい。女といえば教師の目を恐れてか将又規則に準じる性分故か味気ない体操服だが、ささやか過ぎる反抗心が「実は持ってくるだけ持ってきてる」と無鉄砲になりきれなかった半端をカツアゲ宛らの視線に吐露した。連れてかれるままに着替える胸裡を「赤信号だって小糸と渡れば怖くないもんね」と気後れの消え失せた笑みが語る。）うわ、超かわいい。目立ってる。やっぱり作ってよかったよね。（ダメージ加工された太股部分と掠れたペンキとデカデカ陣取るピンバッジと赤いTシャツとでこちらも仁義溢れたヤカラの完成。互いにやっと揃いの風采へ上機嫌へと転じたら「そりゃあそう」と首肯する内実は物怖じせぬ少女への感心と羨望と眩さを抱いて目を細めた。）あっはは、良いな。そういうとこが大好きよこの小娘。（揶揄半分の口吻はだとて好意を抑えられやせず唇の端を噛み締めて、スマホのツータップでピースサインの自撮り。粗方後者だろうと予想に容易いが然し粋がる無敵のハイティーンなら怖いものなんてなにもない。入江が隣に居ればなおさらだ。）はしゃいでコケて鼻先すりむいたりしないようにね。あたしとも遊ばないの？遊ぶよね。（帰結する口吻を横目に欲しがりの瞳がいずれの予定を強請れば「じゃあね」と見送る背中の「K」。溌剌とした背中へ禁じ得ぬ笑みが数度目と空気を砕破すれば、駆け出すあざやかな姿を逃すまいとシャッターを切った。）