(青に飛び込む準備中)

(部活動の拠点である屋内プールでは得られない肌色が、制服の白とコントラストを演出する。文化祭準備期間の放課後が始まり、初の経験であれば生来催しの中心に立候補することもなく。任意で参加の水泳部の手伝いにまず顔を出し、学級に戻ってきた頃だった。よーいどんで作業が始まったタイミングには居合わせなかったため、打ち合わせも知らず一瞬教室の入口付近で立ち往生する。思い思いに動くクラスメイトが視界に入り、軽い疲労感に従って帰宅しようにもその中を通って荷物を取らなければいけないと気づいたなら鼻息漏らし意を決した。)なんか持つもんある?あとは持ってきたり。(気持ち切り替えたものの自身にできる事はそう多くない。比較的忙しくなさそうに映った背中を見つけて声を掛ける。先は勿論知る級友故に、呼ぶ名もあるか。依頼が無いなら無いで直帰の口実になると見込んで、真顔で言葉を投げる様相に相手への労いを覗わせるような愛想は無い。)
上埜新太 09/01 (Tue) 17:50 No.4
(時差のせいで生じた眠気は無糖のコーヒーを流し込んで押さえ付けるようにしてここまでやって来た。久方振りのクラスメイトとのやり取りも、夏休み前から言われていた部活の展示についての通達も。制服姿であることそのものが新鮮と感じる中、飛び交う情報に溺れぬように手を伸ばし岸を目指すかのように、男は目の前にあるものと対峙する。──美術部だろう、との単純明快な理由で出店を彩る看板の一つを製作する大役を任ぜられたは良いが、渡された厚紙は明らかに打ち合わせ時に聞いていたものよりサイズが大きかった。)買ってきてそのまんま、って感じだな……。(部活動ならば用意されたカンバスに向かうところが始まりだが、どうやらカンバスを誂えるところからがスタートライン。さてどうしたものか、とこれから行うべきことを脳内にて精査していた時だった。)上埜……タイミングいいなお前。……なるべくでけぇ定規どっかにねぇ?あとカッター。二人分。(背後からの声に振り返り、幸運を祝す口振りに違わず緩んだ唇は、けれど遠慮なく要求を重ねた。「ちょうどいいサイズに切りてぇんだよな」と鎮座する幅広な厚紙示せば、理由は伝わるだろうか。)
江坂匡 09/01 (Tue) 18:41 No.6
(教室内では各々作業や指示出し買い出し、姿見かけない者も何名か。現況目を付けた相手といえば。得た機会に対する言い草から決して暇をしていた訳ではないと感取し、続く投げ掛けに耳を傾ける。その言のみでは未だ彼が何に着手せんとしているか察せずして、ヒントと捉えるにはシンプルな依頼物に片眉が右上がり。)なるべく……?あ、数学の先生から借りてくるわ。カッターもどっかから。(授業で教師が何やら手に余るものを構えていた様思い出す。首裏掻きながら提案投げるなら、言うが早いかくるりクラスメイトに背を向けて、然程時間要さず戻ってこようか。両手にでけぇ三角定規2つ携え、シャツの胸ポケットには業務用のカッターをいくつか入れている。お眼鏡にかなうサイズか、彼の目の前に定規を差し出し「ど?」と傾け判断仰いだ。)なるほどな、両手で切れば効率良さそうだもんな。(頼まれた己のミッションはここまでと断じる口で「切って何すんの。」とその先を問うてはみるけれど、怠慢な仏頂面呈し厚紙と彼の眼前にのったりと胡座をかいて。)
上埜新太 09/02 (Wed) 20:29 No.26
(遠慮なしに頼みごとを重ねた唇が薄く弧を描く。向こうから尋ねてきたということはそれを完遂するつもりはあるのだという解釈のもと「頼むわ」と去ってゆく姿を一瞬だけ瞳に映し、規定のサイズ確認やら遊び出したクラスメイトの脱線を元に戻すやらしていれば、彼のご帰還だ。数学の、と先ほど冠が付いた理由を男はここで理解した。)なるほど、そう来たか。頭いい……っつうか柔軟?だなお前。俺じゃ絶対思い浮かばねぇわ。さんきゅ、バッチリ。(黒板いっぱいに図形を書くにも不便のないサイズの定規を見た顔ばせは感心一色だ。感謝と評価を並べてそれらを受け取り、まずはこの大きな厚紙のサイズを測ろうかと定規をその横に置こうとした時だった。)看板作んの。……あ、ちょっとそっちの先の方押さえといてくんねぇ?(端的にこれより行う予定の作業を告げたかと思えば矢継ぎ早の要請飛ばし、三角定規の一番鋭利に尖った先を指差す。彼がそれを聞き入れてくれたなら、押さえてもらった位置までシャープペンシルの先が真っ直ぐなラインを描くだろう。これに合わせて切る、その下準備。)上埜って水泳部だっけか。なら部活の発表とかはねぇ感じ?出来たらもうちょい手伝ってもらいてぇんだけど。(手頃なサイズ示すラインを引けたならキチチ、とカッターの歯を取り出す独特な音に被さるような問い掛けを落とす。「引き続き定規押さえといて」との頼みが叶うかは彼の返答次第。線の上を、ゆっくりとカッターの歯が通ってゆく。)
江坂匡 09/03 (Thu) 20:20 No.43
ん。武器みてーでかっけーじゃん。んで覚えてた。(礼と褒め言葉を重ねて頂き、浮遊した疑問符が無事帰還しては呟くように思考回路の披露に至る。素材を知ったのみの時点では完成図が思い浮かばずふと尋ねた結果。自身では手を付けない作成物が鼓膜叩いた故に、なるほどと眉間を弛緩させ感心するけれど、)え、俺もやんのか。まあ……(完全に地面に腰付けた傍観者面でいたからぽろり落ちる他人事の発言。しかしながら強く断る理由も持さぬなら、曖昧な返事とともに体勢変えずして手を伸ばした。指先が些か力加減に迷う傍ら、手際よく進む作業に視線が注がれていく。厚紙にカッターの刃先が食い込み明確な頼みが向けられれば自ずと首肯していて、)わかった。  水泳部のは無くて、どっかの部がプール使いたいらしいから掃除手伝ってきた。(サポート続行となり塩梅を把握した手で定規を押さえる。)器用だな……つか、俺江坂の部活とか覚えてねーわ。何部。(クラスメイトの所属部を把握する彼に対し、視野の狭さが災いした認識を今更宣う。「お、気持ちいいくらい真直ぐ。」切り離された四角が出来上がり際小さな感動が口より滑り出よう。)
上埜新太 09/04 (Fri) 02:39 No.56
分かる。(三角定規が武器なら分度器は盾。なんて幼い頃に描いた想像が言葉となって届いたなら間髪入れずの同意がそれを追い掛けてった。武器を手にし挑むのは厚紙だけれど、失敗のないようにと意識をすればモンスターと対峙するのと変わらない気持ち、だったかもしれない。白でも黒でもない、両者が混じり合ったかのような色を宿した返答に一瞬だけ落とされていた視線が彼を向く。明確な了承がなくともこの場から立ち去っていくことはなかった事実をそう捉え、「助かる」と短く紡いで暫し意識は指先へと集中。厚みのある紙の手応えを感じつつ、曲がらぬように直線を刃先がなぞる。)まだ全然泳げる気候だもんな。(九月と聞けば秋の入り口という意識が働くも、気温や湿度は夏と大差ない。会話を広げるというより単に思ったことをそのまま口にしたみたいな響きだった。意図したように切れてゆく紙が一つから二つへと別たれる。)俺も夏休みあっちで過ごしてなかったら知らんかったわ。お前が泳ぐとこ見たことあって、上手いと思ったら誰かが水泳部だって教えてくれた。(種明かしは軽やかに。次いで、)俺は美術部。だからこれ任命された疑惑ある。(これ、と示す先には二回りほど小さくなった厚紙があった。余分なゴミを捨て、改めて向かい合うキャンバス。)とりあえず縦書きで縁日、って入れるとして……上埜的に縁日ってどんな色のイメージあるよ?そこ迷ってっから意見欲しい。
江坂匡 09/04 (Fri) 22:06 No.65
(紙が切れる無機質な音をBGMに相互認識が深まってゆく。体勢を変えないが故の体温上昇が祟り額にじわりと汗粒が滲むのを手の甲でぐいと拭って阻止し、)いやなんか全部水抜くらしい。中に色々ばら撒いて宝探し?するって。(水泳部員の居場所とすら思う水槽の現状を告げては、用途への理解不足に起因した疑問符発露し眉間に皺寄る。「ふーん、お前も泳げばよかったのに。」と自身の目撃情報得て軽はずみに誘う脳髄は彼の運動能力及び積極性を知る由も無い。切欠さえ得れば徐々に肉づいていく級友の印象がある。)どんまい。 どんまい?美術部だったら看板くらいたいしたことねーだろ。(形を確かにし始めた看板を見て、心做しかその口吻に消極性感じ慰め返すも、直様前言撤回は物作りの大変さに理解が無いため。その弊害が問われて正に露呈する。)……、……。は、色?(こめかみに顔面の力を全集中し彼の顔を凝視。)考えたことねーわ。たとえば何だったらどんな色のイメージ持つんだ。江坂だったら。(思考停止を経て絞り出したるは何の参考にもならない意見。己の閃きに直結するか、望みは薄いものの自らにとっては突拍子のない感覚を垣間見ようと。)
上埜新太 09/06 (Sun) 12:20 No.84
へえ、プールの水全部抜くしてんのか。……宝探しか、面白そうなこと考えるとこもあんだな。(感心したような響きはあれど、それが理由で水泳部員としては唯一かつ絶対的な場所を離れここにいる彼の心境を、直接尋ねるまでの距離感ではないが慮るくらいの心は持ち合わせていたから。次に唇から割って出たのは、無事に意図した通りに作業が終わったことに対するセルフの喝采。)少しは泳いだっつうか……浮きはしたけどな。あとサーフィンとかも。(垣間見た彼のそれとはレベルは違えど、ほころんだままの唇が夏の思い出を重ねて述べた。「自分が描きてぇもん描くのは好きなんだけどなー」とカッターをシャープペンシルに持ち替えて、文字を書くエリアを丸く囲んでアタリを取りつつ、)色。(投げた二文字が戻ってきた、それを再び投げ返す。とは言え、考えたことがないと素直に伝えてくれた彼に無理強いするつもりもないもので。)んー……例えば上下に黒、他を赤く塗ったら……提灯みてぇじゃね?後は、ヨーヨーの柄を参考にしたりとか、その辺が縁日っぽいのぱっと見て分かってもらえっかな、って思ってたんだけど。上埜的にはどっちが縁日らしさ感じるよ。(自由記述式から選択式へ、テストの回答形式よろしく問い方をそっとチェンジ。看板作りを仰せつかった際におぼろげながら男がイメージしていた色彩案を並べ、「直感でいーよ」と付け足して、縁日、の漢字を再度確認すべくスマホ開きながら返答待機の構え。)
江坂匡 09/08 (Tue) 08:35 No.114
(会話を続ける傍ら滞る事無く進行する作業は、100級友の手際良さ故との評価にて賞賛には真顔の同意を付した後。)あー、あの御子柴さんとの。江坂けっこうアクティブな。(現況と大きくかけ離れた単語が想起させる件の頼まれ事。自分含め何だかんだ皆楽しんでいたように目に映った編集物に言及して、真新しい記憶を僅かに口端引き上げ呼び起こした。厚紙を固定していた手を自由にし、慣れた手付きで道具を変える様を眺めながらぽつり呟く「アーティスト江坂」。今迄の人生においてセンスなぞ発揮する場が無ければ必要性も感じなかった者として、恐らく脳の作りが違う彼の口から出てくるそれらはまるで教師の教え。聞き入れつつ貧困なイマジネーションの扉が少し開くのなら、微動する眉根は思考の証だ。)へー……、あれか、見て思い出させる的な。ヨーヨーやるからその柄の方がなんとなくわかる。(物を色彩に置き換える構造理解に至り納得を落とす。従って気づきを得た生徒のごとく譲歩に甘んじて直感を述べた。ややあって、多少考える頭になり浮かぶ案あり、ふと口唇を動かしては、)つか、形をヨーヨーにすれば。  今更?(実現可能の如何はいざ知らず。彼の力量に信を置きだした無茶振りは自覚済みな為、どうなったって不平不満は出さない予定の苦笑が教室の殷賑に溶けた。)
上埜新太〆 09/10 (Thu) 03:19 No.139
(あの夏の一日が皆に共有されたのだと、流し見ただけの記憶が肉付けされていくような感覚。)やってみたら案外楽しかったしな、また機会あったら今度は泳ぐ方も。(その機会がまさかすぐに巡ってくるとは知らぬ手が祭りの下ごしらえを進めていく。「初めて言われた」と視線を落としたままの呟きには満更でもない、分かりやすい喜色が灯っていた。その視線も言葉のキャッチボールの間にだんだんと上向く。脳裏に浮かんではいたものの選び取るに足る決定打を見つけられていないまさしく案止まりの二つを順に並べ、最後に疑問符で包んでそっと放つ。ちらり。度の入っていないレンズ越しに窺う彼の表情は、思案の海を漂うかのようだった。)そうそう、遠くから見ても縁日って分かったら子供とか来てくれっかもだし?……お、そっちか。(言葉に合わせペンを回しながら確かに頷いた。級友の一言は十分な決定打に成り得るもので、途端に頭がそちらの案への舵取りを始め出す。何色をメインにしようか、柄はどんな風に、文字の色とは位置は?尽きぬ思案へ、彼から更なる一滴が齎された。)おっ……いーじゃんそれ。採用。(びしっとポーズだけは立派にペン先を彼へ向け弾んだ声が柔軟に受け入れを示し、再びアタリを取るためにペンを持ち直す。「見本欲しいからヨーヨーもらってこれねぇ?」と図々しくも頼りにする場面を経て。空が暮れる頃、見た目も形もヨーヨーに寄せ真ん中に大きく縁日と書かれた変形看板を無事完成させた男は提出先にて聞かれてもいないのに答えるのだ。「上埜との共同製作」と。)
江坂匡〆 09/11 (Fri) 22:27 No.147
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