仁希。おつかい付き合ってよ。

(屋台を彩るための飾り文字を描くだとか切絵するだとかそういう役割に着いていた筈が、不器用極めて使えないと装飾班を追出された役立たずは掌にメモ切れ一枚を握らされていた。マーカーだとかたこ焼きの楊枝だとか、こまごまと書き出された不足品達は大した重みはないだろうけど幾つかの店を回る必要がありそうだ。)仁希。今なにやってんの。それ、秒で厭きらかして散歩行かない?(旅は道連。目的はコレだよと書い出しリストを揺らせば葉邑の魂胆は伝わるだろうか。)散歩のプランは自転車で河原走って100均行って、電気屋で販促写真用の写ルンです買って、業スー行って商品選んで注文なんだけど。この散歩、実は特典付き。(わりあい面倒なリストはこの際ぶっちゃける。そもそも騙して連れて行こうって魂胆なんか薄いから。これは純粋に、彼女と一緒ならば道程も愉快だろうと見越したための誘いだったから。口端に笑みを挟んで告げる特典の正体は所詮他愛無い。)みんなに差入れるアイスの種類を選べるよ。何味が好き。(疑問符がぶらさがる問いをオマケを引っ付けた誘いの口上には半ば雑談が混じる。おもちゃ箱をひっくり返したみたいに姦しい教室内もそりゃ居心地はいいけど。)一人じゃつまらないし。来てよ。(サマリンでの時を追憶させるような晴れあがった空がどこまでも浩々とひろがる夏の日だった。駐輪場までの道を辿る足音は一人分より二人分。寡黙に口を閉ざすより鼻先から笑みが抜けて行くような対話を興じるひと時を過ごす未来が理想的。暑過ぎるとか愚痴でも言いながらさ。)
葉邑柊〆 09/08 (Tue) 12:50 No.117
……?わかった、ぶきっちょすぎて追い出されたんだ。(殷賑極める教室の片隅にしゃがみ込んで壁面の飾りに勤しむ幕間。卒然たる誘いに一驚喫して見上げた先には装飾係の一角に見つけていた少年、笑声付して当たりでしょと判じる揶揄の答え合わせは如何に。持ち場を放棄する罪悪感は誘惑を前にあっさり霧散し七面倒な道程は然し時間が掛かるだけ諸手を挙げる内実。残暑の名残る窓外へ一瞥くれて)サクレがいい!(多人数向け箱アイスを選択肢から放り出す傲慢を堂々手向ければ求めるYESorYES。屹立して制服のスカートの埃を払ったら短い影が二人分、「一台でいく?二台?」「二人乗りなら交互に漕ごうね」道行きは暑さに陰らぬ陽気を湛えて。)いつか柊が小田はイエローベースのものばっか好きって言ったでしょ?家帰って浴衣出して死にたくなったの。あたしの浴衣レモン柄……。(斯くして噤口を知らぬひとときは話したそばから不足を訴えると学習済みなので本題の買い出しが疎かにならぬような気回しは必須、「めぼしい出し物みっけた?」「浴衣着る?」と目下学祭への話題に終始したら「みたいみたいみたいみたい 見たーーい!」と耳元で吹き込む駄々は自転車の後部座席からか或いは運転席から叫びたる未成年の主張か。煩瑣な買い出しもそりゃ相手が葉邑なら玉響の刻に成り上がるから、太陽から逃れるように涼を求めて駆け込むコンビニで。)あっつ、(特典に少しのズルを付け足し、歯先で齧ったないしょのレモン味が甘く香る。揃いの白シャツが夏疾風にはためいた。)たのしみだね。
小田仁希〆 09/09 (Wed) 11:09 No.130
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