(宵の帳が下りれば、星々は主役となる)

(海水で軋んだ髪はシャワーで洗い流して、面倒臭がる性分が顔を覗かせたならそのまま結く手間は省いた。そうして宵が近づく頃合い、たったひとりの影を探す足取りは彷徨って、そして。)上埜、このあとこれ誰かと行く約束した?してなかったら一緒に行こ。(見慣れた背は見紛うこともない。背後から一声掛ければ手元のチラシが空調で揺れる。故郷の級友からの連絡が脳裡に浮かんだ故の邪心こそあれど、提案よりかはお誘いの口吻となったのは純粋な意図も確かに孕んでいた。約束叶えば、白のビッグシルエットTシャツにアイスブルーのスキニージーンズを纏って、紺のコンバースで足先包んだなら準備万端。スタート地点に彼の姿見つければ、踏み出す一歩は暗闇へ。進む先の土を照らしながら、隣の頭一個分上を仰いでは歯切れの悪い口振りが告ぐ。本日の異心はまだ時が来ない。)…わたしは虫が苦手やから、デカいの何か出てきたらどないしよの恐怖心でいま頭がいっぱい。虫除けふってきた?(夏の虫の合唱だけが響く徒行において、頼れる味方に向けたかんばせは眉尻が僅か片側下がったそれ。)
巽志真 08/10 (Mon) 01:59 No.3
(ひとりチラシを手に佇むのは決して途方に暮れているからではない。しかし視線落とす内容にそぐわずお一人様なのは事実故に初手を考えあぐねていた。意識の外から声が掛かれば振り返り「あ?」と反射で低声と険しい顔貌を晒すも、人物見て漸くやや表情筋ほぐし、)行く。頂上の良い空気吸いてー。(ある程度高台では風が吹くと想定し、纏うくすんだブルーグリーンのTシャツは半袖ながら、グレージュのアンクルパンツは常より肌の露出を抑えている。ゴール地点に思いを馳せる一方で始めが無いと終わりも無いので動き出すのは早く。黒のスポサンで地面を踏みしめながら確実に歩みを進め暫く。空気を暑さが席巻する昼から、虫の声が存在を大きくする夜。単なる風物詩として知覚する中、己と異なる感性聞いて細い眼差しを下方に向けて、)いやなんも。女子虫苦手多いよな。どんくらいのデカさから?(やつらを想像するのが苦でない無配慮は、両手で円を作りサイズ感を問う。進む足を止めることが無いなら間もなく前方に人工物があらわれるだろう。)……スタンプあれ?超虫いそう。巽さんいけんの。(仮にもラリーさせる企画にも関わらず台が茂る葉に隠れすぎており、不審な色を顔に滲ませ指差し。)
上埜新太 08/11 (Tue) 01:18 No.22
だって虫って予測不能な動きするやん、突然パーソナルスペースに飛び込んでこられる感じが……。…こんくらい?(大きさ示すには片手で事足りた。一本ずつの母指と示指が10円玉程度の円を描いたなら、「上埜って苦手なものある?イメージ沸かん」の疑問符はとりわけ意味も孕まず足許照らす電灯を左右に振る。)あ、やっぱり好きなものもちゃんと聞こっかな。(質問の意を引っ繰り返したのは、ジーンズに突っ込んだ液晶がやけに重く感じた所為だった。取っ掛かりとなるかは扠置き、「アバウトすぎ?」と捻る小首に悪意はない。)ほんまや。巽さんいける。(生い茂る葉を改めてライトで照らして、首から提げたカードが揺れた。彼の口吻を準えたなら、茂る葉に足取り盗られぬようにと踏みしめる一歩は慎重に。スタンプ台があと数センチといった距離感、ふとスタンプ台を照らしたライトの先にものの見事な正常円網を捉えた眼は考えるより先に踵を返してワンツースリー。)次のん探そう。(折角ならと完璧を目指したがる性分も捨て置く心算だ。シートに一個押下したくて伸ばしかけた、幼心携えた右手だけが宙ぶらりん。顰めた眉の隙間も一文字の唇も不服よりは口惜しさに起因するから、)蜘蛛。(尖らせた唇は蜻蛉返りの釈明だ。)
巽志真 08/11 (Tue) 19:44 No.28
(眼前作り上げられた円は想像以上に小振りだった。模した手の円を指の円に空中にて上から重ねて比較し、)ちっせ。……まあ、耳の周りで羽の音すんのはやめてほしい。(誰にでも当て嵌りそうな虫嫌いポイントを苦々しく口結び宣う。「ある。いる?あに、」と安直に答えかけるも翻る真逆の方へ、内容の前向きさに沿って関心を傾ける。)すぎ。ジャンルくれ。好きなスポドリとか、せますぎか。(駄目出しするも極端な例に半目晒し自ら却下。)いけんの?(気概漂う物言いに追って今度は明確に確認も含み、同じ言用いて問い掛けた。走る明かり、一見順調な足取りが先陣切るなら止める理由も無く緩慢な歩調で後追いするけれど、)いけなかったな……。(前言撤回を体で表す魁を微妙に下がり調子で迎える。聞くより早く頂いた分かり易い理由は、自身が無考えに予想したやつらの部類。安牌取って初端を除外するも一手、難無く終わらせるのも一手。さてどうしたものか、思案の眼差しが捉えるのは未練の唇。)目ー閉じろ。  おら。(命令よろしく野暮な口吻に従う瞼があるかは知らずして、浮遊していた彼女の手首を取ればシート添えてスタンプ握れる位置に持っていく。その腕に葉や蜘蛛糸触れぬよう空いた手で避けたら、何方かかポンと押印できよう。)一個目いけたってことで、次探すか。これ集めた景品とか聞いてる?
上埜新太 08/12 (Wed) 02:31 No.37
あに?兄?…あ、いる。わたしも。(宵に響くなかで足音と虫の音以外は彼の声くらいしか耳朶は拾い上げないらしい。聞き取ったニ音を苦手とするのが正解と来たなら、深く不得手を突っ込む心算には及ばず同調は踏みしめる一歩とともに。)なはは。すぎ。 うーん。っふふ。でもこれ知ったら部活終わりに差し入れくらいは出来るかな。好きなスポドリは?(月明かりと小さな電灯が頼りの徒行においては晦冥も同然、かんばせの色変えたとて直ぐに気付かれぬことに胡座かけば幾許か笑みは溢れやすい。悪戯に擬えて次の句は申し訳程度の「そしたら好きな学校行事は」。二度目の灼然たる問い掛けに唇が反応し兼ねたのは明かりの示す行く先に不安憶えたからに他ならず、結果はその不安に準ずる。先陣切った己の終着点への歯がゆさも生じていたけれど、)? 目?うい。(ぱちぱち。三度目は目弾きではなく、重力に瞼が従う。了承は粗野な響きだっただろうか。とて、彷徨った右手をゴールまで彼が案内してくれたことは、紙への確かな手応えを実感する頃合い、シートにくっきりと押印されたマークが何よりの証拠だ。)っわ。天才?えっ、 うれしい。やった。ありがとう。(普段役立たずな表情筋より先、脳幹直結の謝辞が唇を突いてシートと彼の双眸へ視線は行ったり来たり。数分前の情けない巽はどこへやら、ぶう垂れる口吻が足癖にも反映される。)もうちょっと押しやすく置いてほしい~。入り口で説明してたけど、ぼーっとしてたら単語聞き逃しちゃった。なんかありそうやったけど。
巽志真 08/13 (Thu) 00:22 No.45
そ、めったに会わねー兄貴。(察しの良い当たりに速やかな返事をし、同じ家族構成にふーんと小さな声漏らすが自ら苦手話題を広げる事は無く。好物の話に移るなら尚更。)すげーありがてー、アクエリがいい。よろしく。(闇に塗れて彼女の輪郭は曖昧、故に歩み進めながら些か首を横に傾ける。遠慮を知らぬ塊は食い気味に依頼を投げた。「水泳大会どんくらい盛り上がるかわかんねーから体育祭。巽さんは、」と続く一問一答が穏やかなリズムを刻んでゆく。して、初手疑問持たれて当然の行動が功を奏したのは相手の喜色露わな物言いに明らかで。手放しの賞賛と反復する視線がむず痒さを誘発し、鼻先指で掻きつつ、)おー、よかった。  髪結んでねーし色々ついたらまずいと思ったけど。どんな基準で女子って髪型変えんの。(延々彼女とかちあわせない線をずらせば、問は以前より何と無く目につく矛先へ。性差による結構な謎。)ま、協力しろってことなんじゃね。豪華なのがいい。どっかの店の食べ放題とか。(失せた下がり調子に添い楽天的な予想立て。どうしても3大欲求の食を優先するのは食べ盛りな年頃だからだ。)
上埜新太 08/14 (Fri) 10:01 No.57
(特定ジャンルの好みを知るや鼻から抜ける笑みがあった。快諾の「わかった」は自身でおもうより軽やかな響きで宙を打って、こそばゆさを持て余した指先が髪を耳殻に引っ掛ける。)騎馬戦とか出てそ。…絵は下手やけど写生大会好き。合法的にぼーっと出来て。(続く一本道をゆく過程、不意に視線を仰いだなら「星めっちゃ見えるなあ」とひとりごちた。喜色を隠し切れず全面に押し出した幼心は潰えぬけれど、問い掛けの先にある肩下まで伸びたそれを指で梳かしては)今日はシャワー浴びてから来たから単純に結び直すのもめんどくさくって。きっと仁希とか心みたいなオシャレな子はTPOによって変えてるんちゃうかな。(持ち出した級友はオシャレ女子として認識するが故に名を拝借。さりとて本日の異心を片隅に追いやっていた脳裡はそこで漸く、)どんな髪型の子が好きとかある?(平素と声音を変えずして、てのひらがポニーテールやツインテール、ショートカットを演出して選択肢の提供のつもり。)わ。それは最高。シュラスコ食べ放題がいい。(欲求に忠実なのは負けず劣らず、「でも期待して参加賞シールとかやったら凹むから」はゴール地点での落胆の可能性への予防線。ゆく道に今度は難易度低めのスタンプ台を発見したなら、僅かスピードが上がる。)今度は押せそう。
巽志真 08/14 (Fri) 22:57 No.61
(此処に来てからというもの、人の良心に肖り物やら金やら冗談含めせびる事多々有り。遂には目先だけでなく日常にまで侵食させる始末だった。)下で奮闘するわ。あれ結局美術部が勝つんだろ。(両の目伏しては爪先に触れた石ころを軽く蹴飛ばす。夏特有の湿り気孕んだ微温い風が、双方の間を駆け抜けて空に帰るのを追いかけるように顎を上げる。木々のさざめきもあるなら彼女の声が明白に言語として鼓膜に届かぬも「ん」と何と無しの適当が音を発した。ふとした疑問の答えに繋がる、具体例たるクラスメイト達の姿を朧気に脳裏に漂わせ、)たしかに、朝だけでもちげー気がする。巽さんのもある意味TPO?(少ない記憶の中でも伝われば理解及ばぬゆえの微小な尊敬を頷きに乗せる。道中の雑談は他愛無い。その姿勢崩さずして次ぐ問い掛けに瞬き、)お、ジャンル。……、髪型から入らねーけど、短め?(質問飛び交う流れの自然さだったが今迄と趣異なり考える間僅かに閉口。眉根やや歪ませ我が事ながら疑問符を引っ提げつつ。)うっわ腹減ってきた。さっきみてーな手え込んだやつで結果それって詐欺じゃね。(己の腹部に手を当て虫の起床を阻む。ちゃちい懸賞に異を唱え、けれど膨らむ鼻穴と同じく本気度は矮小。)巽さんいけるな。(やがて隣の歩幅の広がりに基づき去る口吻の3段活用。そうして見遣る視線の先、)──、なんか通った。あ、(スタンプ台前方にて黒い物体が横切った。多少距離ある男に判別はつかない。彼女の目にはどう映る。)
上埜新太 08/16 (Sun) 02:21 No.73
わからんで。わたしの才能が火を吹いて、ピカソと賞讃される日が来るかもしれん。(確率論でいくなら1%にも満たぬ栄光を嘯く癖して、然程のバイタリティも持さぬから足の運びの軽やかさが本音だ。葉を揺らした風に前髪が乱れたなら、指先を櫛として整えながら空に奪われた視線を取り戻して、ちらりと隣に手向ける。)そう。TPO。たいそう・パーフェクトな・女の子。(悪舌は自己賛美を飄々と謳うけれど、自己評価とは掛け離れているから「うそやけど…」は結果尻すぼみ。好みを問うたのちの僅かな沈黙は道形の砂踏みしめて進む一歩で気にも留めぬけれど、)……ほお。(たったの二文字は脳幹で思案するより先に宙を舞った。無意識は指先で自身の伸ばした毛先を弄って、意識は次なる一手を思索。結果、「好きの入り口はどこらへん?性格?顔?」舌先に馴染まぬ問い掛けを何でもないふりして投擲しては、)いける。(今度こその挑戦に自信満々の断定形は土に足跡確り残す足取りと成り代わり。聴覚が彼の声拾うが先か、それとも視覚が訴えかけるが先か、きっとズレがあったとてほんのコンマ数秒だろうけど。)ギャッ  むりむりむりなんかおる(最大瞬間速度、新幹線超えすら夢ではない。疾駆の侭に彼の背後まで引っ込めば、虎の威を借る狐よろしく彼のTシャツの裾を小さく引いて、空いた片手の人差し指が物語る。)なんかおる~~………。(それが一体なんたるか予想を立てることすら叶わぬ思考回路ショートを迎えた。)
巽志真 08/16 (Sun) 23:28 No.84
(軽々しい空想達を転がしながら土を踏み締める。「今のうちにサイン貰っとこ」とは彼女の渾身の紙芝居を知っているからこそ、冗談を舌に乗せた。)うそかよ。まあパーフェクトじゃなくて良いしな。(ビッグマウス呈したと思いきや秒の否定が潔く、雑な合いの手を鼻抜ける息と共に投げる。基本下手なフォローをざっくりと。中学から高校に上がり同性の関係構築から部活の上下関係に馴染むところまで、やれ誰の印象だ好みだと語り合う相手も隙間も無かった。その為的を射ない返答を続けてしまう予感は自意識に漂う。今正に口にした答えとて内実危うい。言葉少なに打たれる相槌が耳朶触れれば尚更、首を傾いで遣り取りの流れから話題は転じると予測したが、)入り口っつーなら顔じゃね、……いや結局性格か。何で急にこのジャンル。(詳細求められ起こる疑問につられ片眉が上がる。次のスタンプ台において彼女の発見に甘えるなら傍観者よろしく見送り、)いってら、(見送った筈だった。とんぼ返りとはこの事か、風景は頼もしい背中が一転、その様子も失せた顔差し、そして後ろに消える。振り返り窄める唇は瞬間ややまごつき、指の行き先を目線で辿って)……?見えねー。(瞳を細めるも暗闇に紛れては視界不明瞭。)俺行くからそんままそこ居て。(ぽんと彼女の肩に片手置いて、シート手に踏み出した。スマホのライトで足元照らす傍ら聴覚は後方に意識注いで)意外とまともな顔した野生動物だった。…、巽さん生きてる?(詳細を報告しても不安を煽るだけとの認識にて、努めて通常運転真顔が戻る。)
上埜新太 08/18 (Tue) 19:26 No.96
いいこと言う。(大口を即座に撤回するも、返答が彼らしいフォローの響きだったから存外眦は柔ぐ。細細たることを尋ねた自覚はある癖、Whyへの答弁に尤もらしい理由付けは用意出来ていなかった。故に声につられるようにして、夜の帳に紛れる数センチ隣の彼の相好を顎先上げて見遣ったのは無意識に近しい。)…うーん、何でやっけ。(友達に聞かれたと素直に白状するだとか、自身が知りたかったと嘯くだとか、舌先三寸持ち合わせているから何とでも言えた。さりとて結果誰ひとり困らせぬ解に辿り着けず、生温い夜風だけが頬を撫でる。挙げ句、逃避を模した口吻は余りにも稚拙なそれ。「あ、好きな動物は?」。蜻蛉返りの果て、肩に置かれた掌のぬくもりだけが己と共に残る。「わかった」の宣言通り、彼の行く先だけをライトで照らして動かざること幾許か。)生きてる。……ほ乳類やった?(結果報告と彼の無事に大袈裟な迄の安堵の息が落ちて、二の句は平素通りの悪舌を装った本音を湿らせた。)上埜がもし野生動物にやられそうになったら、何が武器になるかなって探してた。(土を踏みしめる感覚にも景色と馴染む虫の音にも慣れた頃合い、見晴らしが良くなれば山登りのゴール地点まできっとあと僅か。伝う汗は人差し指で拭って、視線を投擲した先への期待で弾む胸を抑えるように息を整えては、)もうすぐいちばん良い空気吸えるかな。
巽志真 08/19 (Wed) 18:44 No.103
(暗色は濃くなる一方で、暫く身を浸して漸く目が慣れてくる。随分馴染んできた高低差から己への視線を何となく感知し、可否は気にせずしてなだらかな動きで己が眦もかち合わせようとの試み。彼女との受け答えにおいて大抵は瞭然とした物言いが印象深く、此度もそれが齎されると安易に見越していたが、)……巽さん、俺そんな風にごまかされんの嫌い。(目頭に力込め抑揚排した口振りにて、自身の物差しのみを芯とした所感を落とした。刹那生じた違和感も、言い切ってしまえば手元離れた只の音。「犬よか猫。」と引き続き平熱の声色で以て好き嫌い大会は一旦括られるだろう。連続してやけに高難易度のスタンプ台から足早に彼女の元へ戻り、)安心した。ほ乳類くさい。毛があったし。(微妙な判断基準を掲げては事なきを得て呼吸ひとつ。)逃げねーのか。…眼鏡?(あってはいけない可能性を前に貧困な想像力を働かせた。やがて天が緩急の振り幅を誤ったのか、以後辿るコース上スタンプが順調に増えていき、)来たな。お、こっち。(やや高さある段差を力強く踏み上がったなら、本来の目的達成の希望が耳に入る。間もなく頭上星空が広がり、言葉で方向を促した後。)空気つったけど、まず星がきれーすぎ、な。(長く息を吸って吐いて、いつしか額に掛かっていた前髪を頭振って整えながら明暗コントラストに陳腐な感想添えた。)
上埜新太 08/20 (Thu) 00:13 No.109
(かち合った視線が、たったの三文字に揺らいだ。ブリッジを押し上げたのはその奥の温度を悟られたくない所為、けれど首筋に纏わり付いた毛を弄る指先は時間稼ぎにもならない。)上埜のことが、(息呑んだところで喉奥は依然としてひりついて星屑に続きを求めた眼差しも意味を成さぬから、)好きって。  友達に言われた。(歯切れの悪い異心は隠す術を失った。「だから聞いた」と白状した声は思いの外温度を把持せず、さりとて締めくくりみたいな言葉に嘘の色は帯びない。)好きな動物はわたしが知りたかったから。(眉根を寄せていたのはきっとそこまで。)……わしゃ眼鏡からビーム出すんかい。(生憎多機能なぞ搭載していないから、黒縁が汗でずり落ちるや、吸った息がそのまま笑みに。順調に色を得たカードを握り締めるてのひらは熱を帯びて、声に導かれるまま段差を蹴る爪先は踊った。)っわ。(宝石を鏤めたみたいな星空が待ち受けていたなら、圧巻とは何たるかを知る。長めの間合いをとった目弾きは睫毛に星がくっついたと勘違いするような喜色に似た。肺内に目一杯取り込んだ酸素は一等賞だったから、自然眦は柔く溶けた。)めちゃくちゃきれい。上埜誘って来てよかった。(横目で盗み見てしまえば、星空と月明かりで漸く闇夜で曖昧だった彼の輪郭を聢と覚えるに至る。)
巽志真 08/20 (Thu) 19:43 No.115
(靄を晴らすべき太陽は夜の帳に隠されて、直情の顛末だけが言葉と成った。開かれる口唇が自身の名を発すれば変わらぬ面持ちを向け続け、「そっか、」と短く納得。本来のところ浮つく内情を知ったとて、当人不在なため心に甘やかな隙間は生じず。)それで。友達想いなわけか。(吐露の間にレンズの先を覗きつつジャンル違えた質問意図を得て、曖昧模糊が失せるならその後の追及は無かった。)だったら虫も怖くねーな。(非現実の滑稽さに触発され、先の出来事を蒸し返し口端上げる時間も経て。程無くし同じ満天の星の下に到達しながら、漏れる声の明るさからして己と彼女との感受のキャパ違いを目の当たりにしようか。まぶしげに元々細い目を薄く形作り、)おー、色々あったけど楽しかったわ。(過程を回顧するよう少し先に目線を投げては終わりよければ全て良しと言わんばかりに統括。催しも終わりがけ。辺りには同様に登頂した面々の声がざわめく筈だが、澄んだ空気は独特の静謐を演出する。なあ、と隣へ掛ける、抑えた声量も2人の間通る程。)……、さっきの。なんか俺、巽さんって言う事すぐ言う人だと思ってたからンだそれってなった。(平素の顔貌から出る、まるで独白の脈絡無さは夏夜の魔法のせいにして、)わりーけどその友達について考えんの、あともうちょい巽さんレベル上がってからにする。
上埜新太〆 08/23 (Sun) 04:44 No.132
焼き払ってしまえば虫も怖くないて?そんな殺生な。(眼鏡のフレーム一押しで焼け野原となる光景を瞼裡に描けば、その非現実の中心にいる自分が可笑しくて鼻翼から笑みが落ちる。汗ばんで頚裏に纏わり付く髪を指先で解いては、今暫くどこまでも続いて見える満天の夜を覚えんと瞼のシャッターを切った。手汗で少しよれたカードが完成していたことを知るのは一頻り星空を堪能したあとのこと、返された“楽しかった”を真っ直ぐに享受出来るのは曲がって見えたことのない彼の口吻に依る。周囲の雑踏に紛れたとて、もう既に脳髄は彼の声だけを取捨選択する方法を知っていた。)……上埜は、(噤んだ唇が森閑としたふたりのあわいを作り出して幾許か。胸裡に渦巻く靄を的確に伝う言葉は此まで得た知識の引き出しにはないから、未知を知ったかぶりは現今どうしても出来なかった。)わたしを友達想いやとおもう?  …上埜が知らんわたしもそりゃまぁおるやろけど、(寄せた眉は静寂を破って問い掛けひとつ、掌中の一枚の思い出は握り締めても然程音を立てない。)もっと知ってよ。きっと飽きさせんもん。(せびる口振りは静謐に溶けゆき、自信に満ちた声音の代償として眦は柔く落ちた。彼の言葉を脳裡で反芻したなら、彼のレベル上げには最高難易度を返さんと心算を翻し。来た道を戻りきって就寝の挨拶交わして、自室で眠るその瞬間、瞼裡に甦ったのは宝石箱を引っ繰り返したような星空だけだった。)
巽志真〆 08/25 (Tue) 12:17 No.136
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