(悲劇は喜劇になる?)

(泳ぐのがとくべつ得意なわけではないから、海で遊ぶといえば浅瀬で足を浸すことがスタート地点。毎日が海水浴日和と言える晴天の日々のなかで今日はとくに暑く、つめたさを求める身体をずぶずぶと海水に沈めた。のが、悲劇のはじまり。)あ ちょっ ま、(浮かんでは沈んでを繰り返し、さて6度目の浮上の瞬間。ヒトかモノかなにかに引っ掛け、細切れの焦りもむなしく流されていくのはボタニカル刺繍のメッシュフレア付ビキニだ。ネイビー地のそれは水面に同化し、カラフルな刺繍部分のみ揺れ動くのが見える。胸元の開放感に気づくなり、波がひいていくのと同じように血の気もひいた。あっちこっちへ視線をさまよわせるのは探しているから。この状況から引き揚げてくれるひとを。)ね ね~~~ たすけて…………。(助けを求めるさけびはか細く、眸がとらえた数メートル先の級友まで届くかどうか。鼻の下までを海水に沈めるさまはさながら地獄の黙示録。)
高代晴可 08/01 (Sat) 15:19 No.9
(陸で走ることは人並み以上にできるが、泳ぎがてんでダメだった。浮くことも沈むこともできない水泳音痴は開き直っているらしく、およそ高校生男子には許されないだろう特大スイカ浮き輪に体を潜らせさざ波に身を任す。あわよくば泳げるようになって帰りたいとは思うのだけれど、明日やろうは馬鹿野郎を体現し今日も今日とて浮かぶだけ、昨日までと何も変わらない遊泳風景―…何も変わらない?)あれはなんだ? おお、花か?キレイだな!名前はわからんが誰かにあげたら喜ぶだろうか。(のこのこ近寄る。手に取ってみるまで、男はそれを花だと信じ込んでいたのだ。)……、花じゃないな…。(つまんでみたらフリフリがついている布である。なんだこれはと真剣な思案顔、凝視のためにサングラスを前髪ごと押し上げた折、後方から声がした。)……うっっっわあ!!! なんだなんだ よっっ、妖怪か!?(感覚的には5メートルも飛び上がったが現実は肩が跳ねただけ。水面から顔を覗かすその様相に見覚えを感じ目をこすると、)…ん?高代?…高代だな!? どうしたんだ!?おい何があった!?(聞き間違いでなければ助けを求められたはず。得体のしれない布は浮き輪の縁にはっつけて慌てて近寄ったし、なんなら腕か肩を掴んでほぼ沈んでいる彼女を引き上げようとする地獄の案内人。)
橘鷹銀河 08/01 (Sat) 22:52 No.14
(水面に現れたあぶくは吐いた息のなれの果て。助けてほしいけど見られたくない矛盾のせいで糸のように細かった声はかろうじて級友に届いたらしく、存在感のあるおおきなスイカに乗って徐々に近づいてくる。驚かせてごめんね妖怪じゃないよと言って事情を話し、助けてもらおうと思っていたのがたいそうのんきな考えであったと思い知るのは、おのれの肩を彼の手が掴んだときのこと。)え。(空気の抜けたような間抜けなこえ。肩ほどまで水面に上昇したところで声を張り上げる。)ちょちょちょ ちょいっ ま  待て!!!!(ありありと焦りを現す大声は先ほどの助けを求めるさけびとは真逆のものである。彼の行動が100%の善意であることは踏まえた上で片手は胸元を覆い隠し、もう片手は思わず彼の顔面を引っ掴んで浮上を停止させると、おのれは再び海水にしずんだ。)は~~~痴女になるとこだった……。(ギリギリセーフ、守られた人権はおおきな安堵の息を生む。)それ そのうきわにはっついてるやつ。水着!上!わ わたしの……?(確実にスイカの付属物ではないだろう布には見覚えがあった。クエスチョンマークがつくのは手に取らなきゃ確実じゃないからで、見せてと言うように片手を差し出す。今度は顔を引っ掴まない。)
高代晴可 08/02 (Sun) 00:54 No.18
(水面下で何が起きているのか、気が気じゃない両腕はこんな所で本来以上の腕力発揮する火事場の馬鹿力。水場だけども。肩を水の上まで引っ張ることに成功したらヨシ!と勝手に手応えを感じる。)さあ高代手をこっちに寄越せ!掴んでや……、 んぶっっっ!(もう一息だと彼女の手を取ろうとするが、伸びてきた手の平はまっすぐ橘鷹の顔面を覆う。一時的に遮られた視界で大人しくなり肩を掴んでいた手の力も緩む。再び水中へと戻る姿と、安堵と共にみなもへ落ちた言葉にますます状況がわからなくなっていた。)ど…どういうことだ…? ん?水着?水着…………?(先程浮き輪いはっつけた覚えのある布を見やる。これが…水着…?と訝しがってスイカから剥がし、水分をふくみにふくんだその布をまずは橘鷹が手に取って広げた。水着なのか?と首を傾げる矢先、差し出された手にまた顔を掴まれるのかと身構えたがそうじゃない。見せてという意図を察し、持っていたそれを高代の手の平に乗せると)…待て、そうしたらキミ、もしかして今裸なのか!?十分既に痴女じゃないか!!(慌てた驚愕、声量のコントロールも忘れ大声が出た。海に負けじと青い顔がスイカといらんコントラストを生む。)
橘鷹銀河 08/02 (Sun) 16:31 No.26
あ 引っ掴んでごめん。息できた?(力ずくの制止は勢いあまって鼻と口までも覆った。すでに離された手のひらも水中に沈め、顔のみが水面に出た状態で会話をするさまはいやに滑稽だったが、生首状態を更に沈めてぶくぶくと息を吐きながらあることを思う。) 橘鷹の台詞、パニック映画の登場人物みたいだったね。(浮上し語るのは単なる思いつき。おのれは差し詰めサメに喰われかけの観光客だ。)そのまんまの意味だって~~ そ!れ!が!水着! 見えない?水着に。(買ったばかりの水着に訝しげな視線が注がれることほど悲しいことはなく、つよい主張が生首状態の間抜けさで語られる。手のひらに乗せられた水着は海水を含んでずっしり重く、回避できたはずの痴女扱いに口をぽかんと開けたのは1秒ほど。)痴女って言うな!!!(咄嗟の反論は負けじと声を張り、水着を握りしめた手は胸元に、もう片手は再び彼の顔まで伸びていく。今度は引っ掴むんじゃなく口を覆うだけ。)そうなの。裸なの。不慮の事故なんです………だからおねがい痴女って言わないで~~ そんで声のボリュームは落とそっか。10段階で1くらいに。(おねがいは事情を説明した上で具体的に。そしてもうひとつは片手でスイカの浮き輪をぐるっと回しながら。)あと、ちょっとだけ後ろ向いててほしい。そのままね。
高代晴可 08/02 (Sun) 22:28 No.28
いや思い切りできなかったな…あのままなら死んでいた…。(呼吸を隙間なく塞がれ流石の男も危機管理が働いたらしく生を噛み締めた。橘鷹を命の危機に引きずり込んだ手は水中に仕舞われてしまったが、よく見知った高代のうち10パーセントほどしか水面から露出してないさまは確かに滑稽であった。彼女の呼吸が詰まった水泡を見つめていると、呈された話題は案外悠長な。)…確かに!我ながらクールだったな…。ゾンビもサメも恐ろしくて勘弁だが…、安心しろ!下半身が食われても見捨てない。(デーデン…のBGMを思いながら、たとえキミが上半身だけでも級友だぞと縁起でもない事を明るく言う。はじめて聞くかもしれない強い主張にたじろぎながら広げた水着を凝視し)そう言われると見えてきたが、やはり着けているところを見ないとピンとこないな。(下心も悪気もないので容赦されたいところだ。考え無しに発した痴女発言も併せて。無抵抗のまま再び伸びてきた高代の手で災いを生む口は封じられたが、先程と違い呼吸ができるのでそのまま足掻くことなく塞がれたまま。申し出には素直な首肯とサムズアップのジェスチャーを示したから了承の意は通じただろうか。浮き輪を回転させられると同時に自由になった饒舌は、)ああわかった!このままでいればいいんだな!後ろを向いているだけでいいのか!?いくつ数えればいい?手助けはいいか?(ボリュームのつまみを最小にしたので効果音はヒソヒソが正しいささめき声。0か100の男であった。)
橘鷹銀河 08/04 (Tue) 12:32 No.43
橘鷹、(裏切られがちなパニック映画において見捨てずにいてくれる仲間とはたいそう心強く、名前を呼んで送るまなざしは感動のそれ。かと思えば「あのね」と切り出し、)下半身食われたらもうしんでる……。(ことに深刻な事実を指摘した。)でも橘鷹なら上半身だけのわたしもちゃんと連れて帰って弔ってくれるってしんじてるよ。(縁起でもない台詞を拾い上げ、語ることばは99パーセントの冗談と1パーセントの本気で構成されている。彼の正義感あふれる主張に「いいやつだ」と水飛沫をあげる拍手で笑って、ちなみに今はちゃんと下半身があることを足をばたつかせ主張しておいた。)もう痴女は禁句だよ。(手を離せば二度目の念押しで、おのれの手はもう彼の顔を引っ掴むことも口を塞ぐこともないだろうとお役御免。ぐるりと後ろを向かせた彼の声量はずいぶんと落ち、その落差に「え?なんて?」と耳をすますような場面もあっただろう。)そのまんまで!じゃあ60秒数えてて。ゆっくりめに。(海で水着が脱げたのもはじめてなら海に入ったまま着るのもはじめてだ。おまけに水を含んだそれはたいそう着づらく、すこし手間取りながらも60秒後には悲劇が起こる前のすがたに戻れただろう。首の後ろで結んだ紐が若干不格好なことを除けば完璧だ。)いーよ橘鷹、こっち向いて。(と声をかけたが、その前にスイカの浮き輪をぐるりと回し始めた。もう身体を水中に沈めることはせず、きちんと水面から胸元までを出し、)ほら。もう痴女じゃない。(最後の最後までそんな主張。)
高代晴可 08/04 (Tue) 22:50 No.47
なんだ高代…(まなざしの色に感銘を感じた気がしてフ…とカッコつけて目を伏せた。あのねの次を待ちわびる。)………。……!?!!??(突きつけられた現実にショックを受け両手が口元を覆った。)生き残るすべは、な、ないのか…!?不甲斐ない、僕のせいで高代が死んでしまう…ッ!任せてくれ…責任をもってキミを家族の元へ連れていく…。墓にはキミの好きな花と食べ物を備えよう…何がいい…。(くっ…と目頭を押さえるのは勝手とせっかちが度を越した通夜モード。しかしながら拍手に混じる元気なバタ足を耳にすれば立ち直りも早い。禁句を心に刻みつけ、)60秒!ゆっくりめ!承知した!いーーーち……にーーーい………(バカであり素直でもある男は言いつけを守ってそのまま1つずつ数字を唇で弾く。10まで数えて飽きた兆しが見えつつ、数えるのをやめたらまた呼吸が危うくなる危機があるので真面目に数えた。60まで到達したら御破算。延長は必要かと伺うより先に「いーよ」の声掛けで再び浮き輪を回転させられると、対面した少女は水上の生首なんかじゃなくなっていて、濃色の水着は色の白い彼女によく似合っていた。)本当だな!それに、本当に水着だ!なるほどこうなるのか! …では高代、足を洗ったと言うことで出所祝いに何かしないか?遊ぶでも食べるでも!はやく下半身があると安心させてくれ。(先程のバタ足で得た安心にダメ押しが欲しくって、は建前だ。垂れるまなじりが細まったらすでに楽しげ。お祝い、を冠したからには選択権は彼女にある。)
橘鷹銀河 08/06 (Thu) 11:53 No.60
お~~い橘鷹~~~聞いて、わたし生きてんの。ぴんぴんしてる。(冗談と本気の割合が真逆のふたりである。むしろ本気度100パーセントの彼によって墓石に名を刻むことが確定すれば、「山盛りのオムライスよろしくね」と供えるには不向きな洋食をリクエストしておく茶番。)もしパニック映画みたいなことになってもふたり無傷で生還しよね。(下半身を喰われてもと言われたせいで五体満足で生き残りたい欲が非現実的な決意を語る。彼が60秒を数えるあいだ慣れない海中で慌ただしく身動ぎし、その水音はばっしゃばしゃとうるさかったが、ゆっくりめのカウントじゃ存外余裕で30秒でもよかったとは内緒のはなし。)待って待って。ね、足洗ったのは違くない?出所祝いも違くない?(とくべつツッコミ役ではないのに彼はちっとも休ませてはくれず、けれども次第に笑いが込み上げるさまは傍から見ればなんと不気味なことだろう。突如笑い出して5秒後、「も~~いいや」の一言は諦めというよりもたのしさに満ちていた。)じゃあね、出所祝いにとびっきりおいしいものを食べにつれてって。橘鷹おすすめの。そんでお腹いっぱいにしてたくさんあそぼ。(完璧な計画でしょうそうでしょうと告げる眸で彼を見れば、スイカの浮き輪に掴まって「さあさあ岸まで行こう」と連れてってもらう気満々。無理なら隣あってすいすいと泳いでいくだろうし、なんにせよ水際まで到着すればきちんとくっついた二本の足で砂浜に足跡をつくる。)安心した?
高代晴可 08/06 (Thu) 22:25 No.67
ケチャップで何を書いてほしい?般若心経か?(絶対に生身がするべきだろうリクエストには八重歯が見えるぐらいに笑いながら、提案は茶番の延長とてどこまでもサービス精神の男。言葉選びや解釈が大げさになりがちなので彼女の指摘には首を傾げるし、突然に笑い始めた高代を見る目は丸かったが、明るさ含有する妥協の言葉はちっとも気分を損なわなかった。)ふふ、良い注文だ!そういえばこの間屋台のトラックを見つけたんだ、とびっきり美味しかったな。ガーリックシュリンプとロコモコバーガーどちらがいい?確かラーメンもあった!(選択肢をどこまでも増やしていくのは無慈悲とも言えただろうか。「キミはよく食べる印象があるからはしごをしてもいいな」の補足をする頃には陸へ想いが募り、急ぎ足ならぬ急ぎ腕で水面をかく。しっかり捕まれよ!と頼もしく言い放つわりに移動手段はスイカの浮き輪なのだからどうしたって格好はつかないけれど、そのうち浮き輪の役目も終わり二人揃って水気をふんだんに含んだ両足で砂を踏む。おかげでくっきり輪郭を形作る足跡を見て)ああ!とても!しっかりくっついている。やはり出所後は足跡も綺麗に見えるな。(悪ふざけでしかない出所を引きずりつ高代がつくった跡に並ぶよう自分の足跡を押印すれば、女子は足が小さいだなんて当然のことにまるで今気づいたかのように笑った。)動けなくなるまで食べるんじゃないぞ、遊べなくなっては困るからな!(ビーチサンダルに履き替え、そのまま屋台のトラックへ爪先を向ける道中には浮かれながらの注意喚起を。)
橘鷹銀河 08/08 (Sat) 00:51 No.77
ぷっ 難易度たっかいな~~それ逆に見たいじゃん。写経か?(たまごのドーム上にぎゅうぎゅう詰めの般若心経を想像すればつい噴き出し、)マリリンさんがオムライス作ってくれたらケチャップは橘鷹におねがいしよ。(近い未来の実現を見込めば彼の腕を先行予約。書道部の看板引っ提げた「練習手伝おっか?」の申し出も毛筆じゃなきゃただの役立たずなもんだから、「ケチャップ般若心経は未経験だけどね…」の一言は笑ってしまって言い切れたかも微妙なところだ。出所祝いの提案は魅力的なものばかりで口許はむずむず。)わかってるね……も~~そんなん選べなくない?はしご決定だよ。(補足には大賛成とばかりに頷くも「そんな食べてる印象ある?」と無自覚の大食漢を問えば、ふたりぶんの体重を乗せたスイカが陸へ向けて旅立つ。ときにはラッコみたく仰向けになるような遊びも交えながらでは予想の倍時間はかかるかもしれなかった。)模範囚だったから足跡もそりゃ~~きれ そんなわけあるか!(もうこの際このノリの前だけはツッコミ役に転じよう。どれだけ彼が少年みたいな純真さを持っていたとしても隣り合う足跡の差はあきらかで、おのれの足跡をつま先でぐりぐり巨人並に広げて遊んでみた。)お腹いっぱいもうだめだ~~にはなんないようにするよ。(ビーチサンダルつっかけ屋台トラックの軍勢へ挑む。あっちもこっちも気になるとハシゴするが、めいっぱい遊ぶための腹8分目は忘れない。悲劇は喜劇になり得ると知るのは、思う存分遊んで得た心地よい疲労感を抱え眠るときのことだった。)
高代晴可〆 08/08 (Sat) 23:54 No.89
(オムライスの日は僕に任せろと謎の自信を振りかざしながらも、「経験者だったら自分で書かせてたよ」と軽く笑いつ未経験同士で練習するのもいいなと、ケチャップ写経なんてアホらしくも楽しい未来を思う。)はっはっは、ぶれないなキミは!いっぱい食べるのは良い事だ!見ていて気持ちがいいしな。…高代は朝食の時に1番ご飯に夢中になっている印象があるぞ、へたしたら僕より食べていないか?(自覚がない相手へ言い聞かせるのともまた違うが、自分の抱いている印象をそのまま口にすると大分遠慮はない。食い倒れになりかねない未来は、恐らく彼女より先に橘鷹が根を上げる時だ。貝殻持たせたら本当にラッコに見えてきそうな高代に笑いも零れて、のんびりとした陸までの時間も悪くはなかった。)あっはっはっは 高代、キミ筋がいいな!そんな才能があるとは!芸の道を目指してみるか?(この場かぎりだろうノリツッコミには大笑い、どこ目線か分からない講評交えはしゃぎきった語調のなんと無責任なことか。つま先から広げられた足跡には「追いつかれてしまった…」とショックじみてトーンが落ちるけれど、楽しいが待っているからにはすぐに切り替えができる男だ。)よしよし、約束だからな。…とは言ったものの高代、キミのお腹いっぱいもうダメだ~、はどの程度の量なんだ?(ふと湧いた疑問を差し向けては、隣でそれを目の当たりにすることもなくお互い理性を保った腹8分目。ハムレットもリア王も一昨日に追いやった悲劇のどんでん返しは、高代とだから迎えられた一小節だった。)
橘鷹銀河〆 08/12 (Wed) 13:22 No.109
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