(控え目に言って、Dead or Dead.)

(初めは足首まで、その次は膝下。何とか頑張って腰まで。それからようやくまさに決死の思いで肩まで海に沈めたのが時期尚早だったのだろうか。足が付かないような深さまでは足を踏み入れていないのが不幸中の幸い、とはいえ闇雲に動き回ることも出来やしない。やっぱり気を抜けば波に攫われそうな恐怖はいまだにあるし、というかそもそも、)今私は絶対に迷子になれない……!(いつの間にか首の後ろできっちり結んでいた紐が解け、そのまま流れるように背中の紐も解けて引き留める間もなく波に流されていった白い総レースのビキニはもう随分前から見当たらない。いつ足が付かなくなるか分からないから現在地以上に砂浜から離れたくない気持ちと、それでも此の儘この場所に居続けるわけにもいかないと焦る気持ちばかりが募って半ば泣きそうな表情で首から上だけを海面からにょきりと見せていた。)ど、どうしよ……。(防御能力は果てしなく低いが両腕で胸元をガードする。誰かに見つけてほしいような、こんな惨事を誰にも見られたくないような。否、前言撤回。誰か助けてください。でも大声を出して人を呼ぶのは憚られるから、要は”詰んで”いた。)
琴平るい 08/01 (Sat) 02:58 No.1
(まずは飛び出た妙な形した岩のところまで、その次は浮かんでいる船を目差して。体が鈍らぬよう、しかし競技ではないため悠々と泳ぎに集中し周囲に注意は向いていなかった。自身で立てた目標地点に至れば折り返して岸に向かい一直線。コース上に浮かぶ布切れに気づいたのは、それが顔面に直撃してから。泳ぎを止めて地には爪先立ち、)あ?……、はあ?(摘み上げた白の形は単体では馴染みなく、始めこそ邪魔が入った認識勝り疑問の声を発するも知らぬ形状ではない故にどこかの誰かのトラブルを知る。イコール持ち主の状況は推察に易いが、目の当たりにしていなければ災難に遭遇した不運の人物として漠然と思い馳せるのみ。然るべき施設に届けるにしろ当人に渡すにしろ、本来の指向と合致するなら砂浜に近づきそして。)お、琴平さん。これ……、(見留た姿はクラスメイトの後ろ頭。言葉で指し示す物を、傍目に男である己が持つより適任な相手を見つけたとばかりに片手に携え声掛ける。)これ。    つけてねーの。(重ねた単語は意味を違えた。彼女の面持ちを視認できる距離に近づいた結果。無造作にビキニを掴んだまま頬を引き攣らせた。)
上埜新太 08/02 (Sun) 00:12 No.16
(人は異常に焦りすぎるとまったく周りが見えなくなるらしい。脳はぐるぐると回転している筈なのに、プライベートビーチとはいえ己と同様に遊んでいるクラスメイトが少なからずばしゃばしゃと水音を立て背後から近づいてくることに実際に声をかけられるまでまるで気がつかなかった。びくりと大きく跳ねた肩は海の中にあるからその動きは見えないだろうが、困り果てた顔に追加して驚愕が貼り付いた表情はこんな状況でなければコメディ映画に出てきそうなくらいには滑稽だったかもしれない。)ひっ、  う、 上埜くん……!(そしてダメ押しのように視界に入ってきたのは彼が片手に引っ掴んでいる白い布。見覚えのありすぎる其れのまさかの登場の仕方に意識が遠のく気すらした。否応がなく声が震えるのは、羞恥とか申し訳なさとか、色んな感情がごちゃ混ぜになっているせいだ。)……そ、それ…… あの……、えぇと、つけ、つけてません……。  いえ!あの!自ら外したというわけではなく!不可抗力というやつで!決して痴女ではないので!(つけているかつけていないか、答えは簡単。どもりながら答えた後にはたとひとつの可能性に思い当たれば勘違いされるのを避けようと言葉を重ねていった。必死さは言葉尻やら表情で分かりやすいはずだ。)
琴平るい 08/02 (Sun) 15:15 No.22
(平素より振る舞いに柔軟さ持ち合わせぬとて、己の発語に呼応するように海面に波紋が広がったのを認識するなら思い至る可能性もあった。それと同時にそうでないといいという願望も存在していたが見事に儚く散っていく。途切れ途切れに答える言葉に耳を傾けながら、無関心一辺倒だった布地への認知は変遷し、彼女とそれとを交互に見て、)他の人のだったら持ってくの頼もうかと思ったけど……、(否定の間の空白で、先の自らの心積りを述べるも両の目を瞠るのは勢い増して付け加えられた弁解があったため。)え、じゃあ誰かに外してもらったのか。(勿論ビキニ装着状態とは縁の無い男には、手にする1枚の防御力が海中にてどれだけ心許ないのか推量に及ばない。そして目に見えるもの耳で聞き取るものを意味として掬う性状が反射的に驚きを誘発した。しかし彼女が痴女ではないという申し開きも頂いていれば直ぐに一息落として、)でも俺とじゃ気まずいからまたつけるよな……。ん。(対面した位置関係はそのままに。ずいと持ち主へ向けて、紐部分を摘んでは終いを短い音で以て受け取りを促そう。)
上埜新太 08/04 (Tue) 15:19 No.45
(ほんの一瞬でも勘違いされたくないと勢いに任せて述べた事実たちから導き出される答えはただひとつ、”自然と”外れた、のみ。それ以外の可能性はまるで考えついていなかったから、予想だにしていなかった返しに目を真ん丸に見開いたまま硬直すること数秒。)…………っいえ! あの!自発的にですね! あ、自発的にというのは私が、という意味ではなく水着が自発的に!取れまして!誰かに外してもらったなんてそれこそ痴女じゃないですか……!?(はっと我に返ってからはこんな現状でなければその肩を両手で掴み揺すっていただろう先程よりも数倍強い勢いで言葉を重ねていく。やがて目の前に差し出された今何よりも求めているものにそっと右手を伸ばし、)誰と対面したって気まずいですよ……。ありがとうございます本当に上埜くんは恩人です。(自分のものだというのにつられて紐部分を指先で摘まみ引き寄せた。はあ、と思わず零れた溜息はもちろん安堵の其れ。)えぇと、あの、………後ろ、向いていていただいても……?(二か所の紐はどちらも背中側で結ぶものだ。その間の前面防御力はゼロではなくむしろマイナス。自分も彼に背中を向けるにしたって羞恥は拭えない。頬は赤く染まったままである。)
琴平るい 08/04 (Tue) 23:12 No.48
たしかに。琴平さんがそんな感じじゃないって信じたいわ。ごめん。(既に褪せた自らの瞠目より強い、彼女が齎す見えない圧を感じてやや身構えた。見解に肯定あれば印象変えるだけの愚直な男は、否定あれば動揺の声に耳を傾ける。得てして勘違いを察するなら己の馬鹿らしさも自覚し、謝罪を放つも上がる口端より漏れる音は重力伴わず。短い間だったが手元にあった布に別れを告げて、代わりに与えられるレッテルの大仰さが背中をむずつかせながら上ってゆく。)どーも。ただ拾って恩人なれんの楽だな。(熱度を輪郭に乗せる日差しの下、流れる息遣いはゆるやかに鼓膜を撫でた。首を傾いでそのまま緩慢に回す。)普通に戻ってきた?……おー。そんなら俺はこんままもうひと泳ぎしてくっかな。琴平さんは?(驚愕の色は失せた彼女を見留て、平静取り戻したと楽観的に断じ希望を叶える心算。火照りにも見えるその赤らみを視界の隅に捉えた後、背を向け一件落着の先に思い馳せる。再び生じた運動欲に従い体勢は平泳ぎに形を変えようと。)
上埜新太 08/06 (Thu) 16:45 No.62
信じたいって思ってくれるほどの人間であって良かったと心からいま思いました……。(まともな人間(自称)であって良かったとこんなにも心から思ったことはない。”そんな感じじゃない”という評価にこんなにも喜んだことがあっただろうか。ほっと息を長めに息を吐き出して、ようやく手に入れた相応の評価に安堵を見せる。目の前の存在に冠した称は思ったままを告げたので、彼がいかに謙遜しようがその称を撤回する予定はなかった。)スルーしないで拾ってくれたことに感謝ですよ。(両掌を合わせて軽く頭を下げ再び感謝を告げた後、決死の思いで頼み込んだ通りに背を向けてくれた彼にこちらもその存在に背を向け――勿論近くに他のクラスメイトの存在がないことを確認した上で――心なしか背を丸めて体を小さくしながらまず首の後ろの紐を留め、背中に腕を回して紐を結ぶ。少し引っ張って結び目の強度を確認してからようやくくるりと体の向きを戻してその恩人の背中に声をかけようか。)はい!完璧に戻りましたありがとうございました! あーっと、私は一旦浜に戻ろうかと……、あの、恩人さんにこんなこと頼むの申し訳ないんですが、上埜くんが良ければ砂浜まで連れて行ってもらえませんか…?ちょっとあの、ここまで自力で来てしまったんですが一人で戻れる自信がなくてですね。(水着を一度失った今、襲い掛かる波への恐怖心がむくむくと。あはは、と語尾に乾いた笑みを張り付けて頬を掻く。)
琴平るい 08/08 (Sat) 00:08 No.75
(一瞬彼女の為人を読み違えたが軌道修正叶い、なだらかな波に流されていく。重なる感謝の内訳を聞いて、思い出す経緯があれば事実は伝えさせていただくとして。)泳いでたら顔にぶつかってきたからスルーできたら逆にすげーやつだったわ。(ほんの数分前のことを、やや細めた目で雲ひとつ無い空見ながら遠い過去のように語った。彼女の望み通り日に焼けた背中を晒しながら、男が手にするならただの布であったそれがどのような過程で元通りになるかは度し難い。完成の声を耳に収めるや「よかったな」と端的に告ぐ。そのまま水底を足裏で蹴り出発する予定がブレーキかかったのは、自身には到底浮かばないだろう願いが加えられたが故に。)連れてくってどうやんの。背負ってく?水ん中だったらあんま体重感じねーしありだな。(振り返り眉根を寄せて思案する面差しは、思いつく限りの手段を彼女の体重知らないくせ自分側の根拠込みで論じる。白黒ボーダーのサーフショーツの紐を締め直して、)乗る?(意見聞く前に再び肩甲骨を彼女に向ける。腰を落として高さはその目線に合わせつつ。)
上埜新太 08/09 (Sun) 00:57 No.91
か、顔に……。(流されていった水着の行く末を聞けば思わず頬をひくつかせる。あわよくば腕あたりに当たっていて欲しかったと思わなくもないが、結果的に自らの手に返ってきた奇跡を考えれば誤差の範囲だろうか。よくよく考えてみれば心許ない面積の布があるべき場所に戻ってくればまあそれなりの安心感。とはいえ打ち寄せる波が己の肩を超えて海水が顔に掛かりそうな現状に、むしろ数分前に何故こんな深くまで来ることができたのか疑問に思えるくらいである。南の島のテンションとは恐ろしいものだ。)あーっと、方法までは考えてなかったんですけど。 背負って、ですか…え、いけます?あ、でも上埜くんすごい良い体してますもんね、水泳部ですし!(せめて手を引いてもらおうか。くらいの感覚だったから思ってもみない提案に今日何度目かの驚き。身長が低めの自分が相当重いとは思わないが子どものような小ささでもない。不安そうに顎に手当てるも彼が所属する部活と体つきを思い出せば可能性を見出してぽんと手を打った。)の……乗らさせていただきます…!(どこまでも恩人に世話になりっぱなし。そっと伸ばした両手で彼の両肩をそれぞれ掴み体重をゆっくりと預けていく。そのまま彼が砂浜に向けて歩き始めれば下半身はふよふよと海に漂わせながらでもしかと両手は彼にしがみついて文字通り連れて行ってもらうことだろう。やがて海から上がれば改めて頭を下げて、「今度ジュースでも奢りますね!」と。すべての不安がなくなった、漸くの満面の笑みであった。)
琴平るい〆 08/09 (Sun) 17:44 No.95
(まるで最適解を見つけた心地で、いつ肩に掛かる手が来ても良いように足裏を地に付け体勢を整えていた。何やら葛藤抱えるも、結果己の見てくれと所属部に基づき納得導く彼女の様相を看過し、)おー。琴平さんがさっきの水着みたく流されなけりゃいいんだろ。(人と出会わなければ沖まで旅していただろう布切れを思い、せめて彼女だけでも無事であれと真顔の下願う。背に触れる体温を合図に出発。目論見通り水中故の重力負担の少なさを実感しつつ、彼女の工夫もなんとなく知るから、)乗り方賢いな。……腕、前に出して。(単純に賛する言葉を呼吸の間に挟んだ。程無く岸までの距離が縮んできたら指示出し、彼女が従うならその両腕を持って正に背負う形でラストスパートを迎えようか。無事陸に到着し一件落着。再三の礼を尽くす何処までも恭しい同級生と、そんな相手を前にして正反対に脚広げ立つ仏頂面の遣り取りは、傍目に集り現場に見えるかもしれない。――「琴平さんジュース」「炭酸強めのジンジャーエールがいい」と向こう暫くは彼女と遭遇する度に真顔で強要めいた言葉発するので強ち嘘ではない。御覚悟を。)
上埜新太〆 08/12 (Wed) 00:28 No.108
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