上埜、火遊びは得意?

上埜。(両手を籠代わりに設置型の噴出花火をみっつ。それからチャッカマンは指で握り締めた。手に入れた玩具を運ぶにあたってさも平静を装いたいかんばせに、ステップを踏む爪先は辻褄が合わない。宵の帳が降りて星空と月がランプの代わりをするビーチで自由気侭な足取りが一時停止を迎えたのは、見知った後ろ影を視界の隅に捉えた故に。生憎塞がった掌を伸ばすことは叶わず、三文字の呼称が雑踏に紛れないように声を張った。)水が得意なんは知ってるけど、火はどう?(数歩踏みしめれば砂が鳴いた。彼を通り過ぎて視界の先に、噴出するタイプの筒を等間隔あけて砂に埋める。)得意やったらチャッカマンお願いしたいんやけど。……ど?(三角座りの侭振り返れば三つ編みが自然と風に揺らめいた。勉強は得手、さりとて距離の詰め方は不得手と自身でも悟っているから、稚拙な誘い文句に眉を寄せるけれど。右手に掲げたチャッカマンは拳銃気取って、くるりと一回転。もし彼が乗ってくれたなら任せる心算で、けれどNOの返答であれば自身で火を先端に放つ予定は変わらないから、花火は地上60センチにほんの1分足らず咲くのかも。そうしたらきっと誰でも云える所感が飛び出るに違いない。)みて。きれ~~。
巽志真〆 07/29 (Wed) 22:41 No.79
(食に水遊びに存外満喫する宵、もう一声は火遊びだろうか。細波に誘われて夜色に染まる砂をスポサンが踏み潰していく。辺りは様々な音が寄り集まり喧騒と化していたが、割って鼓膜に届く響きが在った。)お。(呼ばれ慣れたそれに気付けば振り返って、居処を見つけた視線が呼び主の動きを追い、)火が得意ってどんな……、上海雑技団か。(聡い方ではない故に問われる言葉を繰り返し、僅かに黙する想像の時間。嘗ての彼女のような歯切れの良い指摘と違い、同じ文句を連想したままに放り出した。目の前で出来上がっていく小規模花火大会、観客は2人きり。立ち尽くす仏頂面は、元来先頭切って場を設けたり、人助けと称し準備したりとは無縁の傍観者だ。しかし彼女の手元回るチャッカマンが先を黒光りさせて視界映るなら、)いいなそれ。まあ巽さんが失敗するよか俺の方がいいだろ。やる。(コキコキと肩を鳴らして隣にしゃがみこむ。2、3度スイッチを動かしては花火に着火。淡い煌めきが濃紺に浮かんだ。)すげ〜〜。  もうねーの?(横で耳打つ端的な感想に負けず劣らず。燃えさしが生まれてゆく中で、まるで強請る口振りは、双眸にゆらり残り火を灯しながら。)
上埜新太〆 07/31 (Fri) 20:44 No.103
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