（肉だこいつは食べれる野菜だと手を付け、腹の虫が少し大人しくなってくれた頃。甘いもので〆る習慣は無く、手持ち無沙汰を解消してくれる物を探していた。ハーパンの裾を微風にそよがせ時折覗く膝小僧が右往左往。視界に入ったのはプライベートビーチとバーベキューゾーンのちょうど間くらいに捨て置かれたビッグサイズの水鉄砲だった。マシンガン未満ショットガン程度。砂に塗れて転がるそれに憐憫を感じるわけではないが、気づいてしまった手前放置してもごみになるだけとの思考にて拾い上げる。揺れに合わせてクリアイエローのタンク内に水滴が増えていく。半分程の嵩が残っているのは誰かの使用済みだからだろう、試しに引き金を引いてみると勢い弱く水の弾が流れて地面に落ちた。）なあこれ上手く動かねーんだけど。こんなもん？（期待していた結果とは大きく違いがあったから、思わず近くの人影に声掛け。相手の注意を引けたのなら唇をへの字に象り疑問を隠さない顔で再び指を動かす。今の所人に向けるつもりが無ければ銃口は空に向く。ぴゅーと頼りなく小さいアーチがかかった。）

（威嚇にすらならない透明が勢い弱く落ちていき染みを作った。不躾に問い掛けを開口一番にしたが、己の言わんとする事をずばり言い当てた彼に送る双眸だけ鋭さを排し、）だよな。　　うは、やられてやんの、（同意零す傍らで見知った女子による被害届聞けば軽口叩いて、）誰かが壊して捨てたんかもしんねー、さっさとゴミ箱に入れりゃよかった。（改めて比較される獲物に同じく視線戻す。弾丸発射後の処理も甘いのか、口からは水滴がぽたぽたと漏れている。）お前またやられ役になんのか。……お？（弱気な物言いに非難めいた口ぶり翳すも、間抜けた音伴い翻って水鉄砲に注意逸れたのは最中水漏れが止まったが故に。あとよく見ればフォアエンドのような部品がついておりガシャコンと重厚な音を鳴らせたから。）どや。……、なんでもねー。（先程の、似合いとの評価は満更でもなく。そのまま構えて此度は彼の胸に口向けて引き金を引いた。しかし、出涸らし。）俺は正面からかましてやりたい。高橋は奇襲対策な。（独り相撲に溜息つき、返答として現在の装備では叶わぬ望みを述べた。）

（ボランティア精神なのか利己的なのか、はたまた両方か判じ難いものの動く腕の様子を見ながら「ポイントみてーな？ゴミ拾いは何ポイントだろな」と乗じる口に水鉄砲を離さぬ手。二人して同音にて事の顛末を見届けるが結果は振るわずして無力。一瞬抱いた希望は立ち消えた。誤魔化しにやや眉根寄せる表情作ったが、謝罪と共に笑声向けられればつられて強張りを削ぎ落とし、）んだよ、俺ら少年じゃね？（気軽い応酬に緊張が走ったらしいのは間もなくだった。勢い余った武器は、玩具とは言え急所に照準合わせるなら効果ありなよう。衝撃に合わせ彼の必需品がずれるのを見届け腹筋が揺れる。）あばよ。ハードボイルドっぽいのウケるな。（冥土の土産文句をアドバイスいただき、所感零しつつ復唱。）それは、敵を欺くにはまず味方からってやつ。（不穏な単語の遣り取りで気分は悪役であり、事実を追求するチームメイト基クラスメイトに使いたいだけの諺を言ってのけた。一貫して被害者側の言い分と思いきや混じる企みに口角は上がる。）やる気はんぱねーな。消したい奴いんの。……ま、古文の鈴木は何言ってんのかわけわかんねーから一瞬消したい時ある。（半目で定める標的は。極々個人的な理由による。見た目明らかに武器持たぬひとりと、使えない武器がお供なひとり。つまるところ冗談の域を出ないけれども空想話は弾むからそれはそれで。）