（賑々しい夜の帳。炭を焼灼せんとする火花の踊り子も花火のヴィヴィッドなグローも、朱夏の風物詩らに脳裡は嬉々と騒ついた。サックスブルーのタイダイ染めビッグTに袖通すかいなは肩ロースとズッキーニの鉄串を両の手に装備し食い盛りを匂わす形姿にて屹立するが、期せずして隣合うクラスメイトのバックに黒縞模様あざやかな西瓜を映じ双眸へヤンチャの一閃が駆ける。）お前、ズッキーニは好き？イヤじゃねーんならコレあげる。（差出す牛串の焼き目が食欲そそるこよない塩梅。受取る代償にと顎先示す西瓜へ一瞥、瑞々しい球体の風物詩を射止めれば云わずもがなこれっきゃない。）ハイ受け取った〜〜。じゃあこれから、俺とスイカ割りから種飛ばしまでフルセットで遊ぼうな。

（ミーイズムが止まぬ誘い水を浴びせるも猫型ロボットのきょとん顔は顕在だ。戦ぐローポニーの花々しさが目算通りスペンサー心其の人であると振返り際に相交わるまなじりで悟ると同時、色良い口吻のカウンターを享けたから忽ちかんばせは根明に笑う。「そう言うと思ったからココに声掛けたんだよ」とは、過日の通話を喚び起す－曰く＂チャラ男＂の振舞いをなぞっての事。）〜っぶ、ワハハっ！待って5歳児、今当てるわ。（して手許離れる牛串頬張る憎たらしい愛嬌と云ったら強いて己の絶笑を誘う。一頻り笑声が咽喉を擽ってから、頭しぼる最中に肩ロースを1口でパックン。）「乗った！スイカ種飛ばしのミューズが海までぶっ飛ばすよ！」ってとこ？いや待って。「やった！イッサに後ろから目隠しされながらスイカ割りたい！」だった？（手許のステンレス串は彼女の其れ諸共に回収し、又ぞろ顎先が示す黒縞模様の風物詩へ爪先が突っかかる。隣に屹立するトングサンダルも共に誘わんとおいでの手招きを施して。）

俺がホンモノのチャラ男だったら、今頃肉じゃなくってコッチをお前にあげてたよ。（鈴転がすソプラノが耳打てば、ステンレス串手放しうら寂しい指先が出来立てスモアを摘む。欲しい？と言外に語り彼女のかんばせへ甘味を寄せるも須臾のひととき、「5歳児ココちゃんは肉食うのに夢中だったか〜〜」と作為的な口吻にて笑えば、とろけるマシュマロとミルクチョコレートが指先を伝う前に己が咥内へ一口で放り込んでしまえ。）いー食いっぷり。もう色々食ったん？向こうの方でホタテヤクザの声聞こえてたけど。うわ〜〜ちげぇの？前者ぽいじゃんココ、マジでぶっ飛ばしそう。いや俺は後者に期待とロマンを賭けてたけどな……（快活な笑声とは対を為すしょぼくれた音吐は殊更に繕ったと云え、ちゃっちいロマンが潰えたから口惜しげに肩落とし。）おっ、いいじゃん乗った！シロップは？確かマリリンさんがサイダー冷やしてくれてたから代用してもウマ………（そ。と語句結ぶ手前に振り返るまなじりは一驚を付す。握られるロングトングの勝率はきっとゼロ、「それは無理げだよ」とシビアな面下げ宣うが）試しとく？一発で割れなかったらココのホタテはもう俺のモンな。（同じくヤクザ振り翳し唇がアーチ描けば、ネコ型ロボット宜しく全てが手に入るハナワ家別荘。スイカ割り専用棒の存在は今暫く隠伏した。）

さっすが、朝トンカツを余裕でキメてくるスペンサー心。後で俺と一緒に向こうの海鮮ゾーンにかち込もうな。（離陸間際のモーニングでの一幕喚び起こし誇大した事実を付す音吐は相変わらず意地汚い愉悦を象った儘。共にヤクザへ成り下がらんとチープなご機嫌取りを企図し、さて出来立てスモアの罪依り遁走は叶うか。「歴何年だよ。俺は10年負け知らず」とは応戦のコング鳴らしどんぐりの背比べも甚だしい。）うわ、もうウマッ。メントス入れたらサイダー噴き出さなかった？ムービージェニックな噴水フルーツポンチにしてやろ。（脳裡が描出する清涼たる甘味の影像に美味の確証有ればこそ、着想を投擲し合う今じゃすっかりフルーツポンチの気分。メインフルーツを眼前に昂然と屹立する彼女へ「やれるモンならやってみな」と宣うのは静謐に佇むスイカ様の代弁だった。）いーよ、ココの全力の一刀を見せろよ。握力いくつ？７？？（作為的な茶々がはためく中、愈々振りかぶるロングトングの軌道を追うまなじりが逐ってまん丸象りキョトン顔。硬質たる縞模様の身包みに一欠片の傷が打ち込まれ、まあそうなるなと合点の一方で喉元より茹だるおかしさは如何にも止められない。）あ、あれこそ名刀斬鉄剣……。（小学2年生に退化する厨二ごっこは30秒と保たない。）ブフッ　っフ、あっははは！バ〜〜〜カ、エセじゃん（絶笑のはざまに掬い取る専用棒を彼女へ差し出し、「ココの相棒はこっちだよ」とお手並を拝見する心意気は尚も顕在している。）

こわっヤクザじゃん。カニ足はココに納めるけど、甲羅のカニ味噌だけは渡せないカニ。（口吻ほどに憂惧なんぞしちゃいないから睥睨を感取して尚、食気を見棄てられぬ欲深だ。敢えて食べ物ヤクザに挑む唇がアーチをなぞるカウンターアクションは退化する小学2年男児にて、安上がりの煽動と了知こそすれど。ネコ型ロボットをバックにはべらす碧眼から気持ち良いくらいの反作用が有る事に味占めれば、しょうもない口吻のひとつだって惜しまず音にしたかった。茶々入れの傍らにかんばせへ構えるスマホにて縞模様の球体へ挑む彼女の英姿をフレームイン、RECの最中も喧しい撮影者ときたら「まぁまぁ弱っ」「スイカ様がナメんなだって」とけしかけて、感興そそる音声も併せて思い出の断片に収まるか。）いーよ。ココざ右衛門、次は「生まれ変わった斬鉄剣は一味違う」つってよ、ヘマしたら全体LINEの晒し者にしてやろ。（悪戯な脳裡が伝播する悪ノリは傍観を貫くが、突として手拭いに成り代わる首無しスペンサーの御出座には流石に寝首をかかれた。）だから無理げだよ！（2度目の無理げシーンに間髪入れぬ口吻が響く。襟刳掴み引き下さんとするのは思わずと云った処、意想外の奇襲喰らいっ放しの一夜を手放すには未だ惜しいからワキワキ両手を蠢かせ）だ、か、ら、俺が目隠ししてやるって。お願いだから斬鉄剣で俺斬んのだけはヤメテ。（さて遠回りの果てに真っ二つの未来は有るか否か。嗚呼それと、ドギツいサイダーを四囲に撒き散らし炭酸塗れになったって食べ物ヤクザとなら平気で笑えそう。）