（清爽なオーシャンブルーのボディとは手荷物カウンターにて暫しのグッバイと相成り、バックパック背負い込み翻る踵は逡巡の気さえ潜めモール内へとUターンするに至っただろう。恣意頼みの自由時間が言い渡されるのとひもじさを予感したのはあらまし同刻だったか、身侭を振り翳す腹の虫が”今は米と味噌汁と豚カツの気分”と具体的な訴求を呈し祖国を恋しんでいた暖簾前。）…。……あっ？お前も豚カツ食いたい？食う？？俺、ヒレもロースも食いてえの頼むよ〜〜〜（即ち一口分のシェアを情願する眦は通り掛りのクラスメイトを引っ捕らえて押っつける。時刻にしてAM9:30、カレーを飲み物にしちゃう屈強な胃袋はまるでこれから焼魚定食を食べようとでも云いたげに、胃もたれ率90%のモーニングへとご招待した。）

ッ！？（食欲唆るランチメニューの羅列を目下に視線が移ろいゆく其の最中、藪から棒に取るに足らない奇襲を喰らい驚倒の吐息をひとくち呑み込んだ。但し主犯へ視線が遷移した先にて見知ったブロンドが在るや綻ぶ唇は「アイタタタタ」と作為的な痛苦を顕とし、）おうおうおネーチャン歩きスマホかい。俺ぁ此処の豚カツ屋牛耳ってんだ、きっちり金落としてくよなぁ……？（例えば「怪我はない？」「可愛い爪だね」だとか手厚いフェミニスト的所作を模範とするなら、やっすいチンピラ風情を気取る佇まいは勉学に限らず赤点か。オラつく視線がうつくしいブロンドを煽って幾許、冗談だよとの口舌に成り変わって笑声が洩れるや種明しと相成るだろう。彼女の驚嘆を眼前にしてシビアな此の顔付きである。）え？食うよ。ココは朝飯もー食ったん？未だなら俺と一緒に朝活ならぬ朝カツしよ〜ぜ（して一歩前進。「女子がデザート別腹なのと一緒じゃん」とは横暴でしか無い己の持論だった。）いや…俺女の子に、もう食べれな〜いって言われんのが夢で………（たっけえ。とは脳裡に留めた所感。隣の小悪魔へ宛てがう視線は代替を模索し、ロース、ヒレかつ定食を其々指差しシェアを訴求したい所存であった。）

ウッソ似合う？ココ、向こうで怖いオニーサンにナンパされたら俺呼びな。（賤しいチンピラ風情が彼女の一笑を誘う事叶って、明け透けな喜悦を滲ませたにやつくかんばせじゃのっけから棒演技だった。続き様の響きも大言壮語、返討ち必至のエア右ストレートが空気を切る。）…。…っふ、ワハハっ！（ぐうぅ〜。人々の足音もアナウンスもBGMに手玉取る腹の虫に瞬き2回、ややあってかろい笑声こそ溢れるが素直な胸中のシナジー効果で可愛いモン。「朝ウィダーじゃ満足しないって抗議されてんな」とは知らず識らずに芽吹く悪戯心に因り。）うるせ〜ココもあんだろ女の子のロ・マ・ンってやつ。俺の夢は伊鶴に叶えても〜らお。（さて鈴転がすソプラノからロマンとやらは聞き出せるか。馬渕一颯のアンタの夢叶えたろかだって厭わぬまなじりに好奇を滲ませた後は、食指が這う先を視線が追蹤して「ウマそ！」と開け広げな所感が洩る。小悪魔の花ひらく笑まいに首を横には振れぬし、何より己の腹の虫だって愈々黙っていられなかった。）ヨッシャ乗った！ミルフィーユカツ、食えな〜いって時はココ渾身の可愛くオネダリ宜しく♡（付すハートマークは彼女の語感になぞりお互い様の無遠慮の末。暖簾潜りフライト直前の朝カツは、向日葵みたいな少女が一緒とあらば胃凭れなんぞ埋没させる至福のひとときと相成っただろう。さて馬渕一颯はミルフィーユカツを手に入れたか否か、応えはブロンドの小悪魔のみぞ知る処。）