（とりあえず必要そうなものを片っ端から詰め込み、すでにお土産スペースの容量が心配になりかけのミントアイスちっくなスーツケースを転がす少女。ちなみに羽田はそれなりに行ったことがあるが、成田は初めての御子柴である。国際線の充実している空港らしい空気に早速テンションを高め、既に土産を買いそうな勢いで物色してあち矢先、響く呟きに瞳をそちらに向けた。）三国？六厘舎って…成田にもあったの？羽田だったら、つい最近叔母さんが食べてきたって話していたけど…。（はてと疑問符をいくつも浮かべながらきょとんとした顔で問い返す。）

羽田にあるものは成田にもあるって私の中で勝手にイメージされてるんだけど…違うみたい？あ、持ってたの。（持っていなければ渡そうとしていたマップは持ち込み用のリュックに戻し、フロアマップと睨めっこする彼を沈黙で見守る。）あらら、こっちになかったの。残念…！いえいえ、困った時はお互い様でしょ？力になれなくてこっちこそごめんね。（と笑ったが、続く質問にちょっと苦笑い。）うーん…それなら、とりあえずラーメンとか麺を扱ってそうなお店を探してみたり……あっ。これ見て、第1の4階に中華そばとみ田ってあるわよ。六厘舎とはもちろん違うだろうけど…ほら、極太濃厚つけ麺だって。（スマホで空港のHPを開き、レストランの中から該当する店のページを開いて紹介文を見せつつ、彼のフロアマップにも目を遣った。）だんだん私も麺類の気分になってきたし、こうなったら三国の胃袋が満足するまで付き合うわ。（スカイブルーのストライプのワンピースの下のお腹も割とぺたんこに近いので、意欲は十分すぎるほど。）

でも見つけちゃったからには、力になりたかった…。彷徨える三国？…っふふ、ちょっと面白そうと思っちゃった。それ先に言われてたら教えようか迷ってたかも？……なんてね。（此処には存在しない店を探して彷徨う事にならなかった彼にくすりと笑って、指先が軽快にスマホを手繰る。）捨てる神あれば拾う神あり、ってね。こっちのつけ麺も、きっと美味しいわよ。食べた事はないから何の保証もできないけど。（ゆえに無責任な言葉だという事だけはちゃっかり担保して、にまり。）あとテレビとか動画で見てても食べたくなるのよね、あの効果に名前とかついてないのかしら。大食いまではいかないけど、少食ではないわよ。おぉ…こってり…。でもまあ食べてみればいけるんじゃないかって気がするわ。（女の失敗の根源たる無駄なチャレンジ精神に基づいて賛同し「大丈夫よ、胃薬も探せば売ってるでしょうし」と既に胃に負担をかける前提で。結局、胃の悲鳴を丸ごと無視して替え玉にデザートまで平らげた後――彼ほど胃袋の強くない少女が、満足感に満ち満ちながらも怒涛の胃もたれに悩まされるのはあまりにも分かりきった未来だった。）