(望まない追いかけっこの果て。)

(「367円になりまーす」、覇気の感じられぬ店員に、反応する男もまた無愛想なツラをひっさげて。旅行前にコンビニに駆け込む人間は凡そ2通りだろう。今にしろ機内にしろ何かつまめる軽食を求める者と、直前になって忘れ物に気づく者。集合前にある程度腹を満たせば歯磨きでもしようと、バッグの中を漁ったものの入れた筈の一式が見当たらず。無いなら無いでどうにかなりそうだが、いかんせん本来持ち合わせた物が無いのが些末な不安を煽り、後者は現在に至る。幸い手頃なトラベルセットが見つかったなら、あとは早々に会計をするのみだけれども、)あっ、やべ……。(レザー生地のコンパクトな財布から小銭が滑り落ちる。10円、10円、100円5円。後追いするように何枚か転がりレジから離れていく。店員には軽く会釈して列から外れて大股で追いかけ追いつき、)すんません。  お、(ようやく面が地に着いた様子を見て体を折る。1枚がさらに先で動きを止めて最後か。ストッパーが物か相手の身体かは刹那判別つかないながら、まずは謝罪を小さく述べ、顔を上げるなら視認して抜けた声を発した。)
上埜新太 07/04 (Sat) 21:42 No.83
(広い空港の中、人の流れに混ざるように歩いて向かう先は化粧室。その道中見知ったクラスメイトの楽しそうな姿をいくつか見かけつつ、ふと足元に転がってきた小銭を腰を落として拾い上げたところでまた一人顔見知りと目が合い)お?(発せられた抜けた声に首を傾げて繰り返すのは大した意味もなく。小銭を手渡してから、彼越しに会計を待つ店員を指差せば)待ってるわよ。(急かすニュアンスを含んだその言葉よりも、彼が踵を返す方が先かも知れないけれど。後ろについていけば、便乗するようにレジ前に並んでいたハイチュウを一つ手に取り一緒に差し出して、追加分の小銭もちょうど置いたところで漸く会計を終えるだろうか。)忘れ物の補充?(一つのビニール袋から自分のハイチュウを取り出そうと覗き込み手を入れながら)一ついる?
北村伊鶴 07/05 (Sun) 00:03 No.89
(規模の大きい空港で、知った顔とそう頻繁に出くわすとは見込んでいなかった。謝った後の、赤の他人とのやり取りを思うと、助けてもらった立場であろうと若干億劫さが生じる。その必要性が浮かんでは瞬時に消えた一拍の音。)北村さんか。ども。(返ってきた元気な小銭を受け取れば、抑揚のない礼を。彼女の端的な状況説明と、指の動きに導かれ視線をスライドし、)え、別にいいっつったのに……。(仏頂面が文句をのたまう。伝えたつもりと良かれと思って。噛み合わなさに衝動駆られ直様レジまで戻る。追随する影と増えた商品を知りつつ、長居する理由もないレジでは恙無く会計を済ませてそれから。)歯ブラシセット忘れた。(歩速を落とし、コンビニの脇にて袋の口を広げつつ)くれんなら。(やがて自らの購入品を袋ごとバッグの横ポケットに無造作に突っ込んで、)なんでハイチュウ?それ今日の飯?(不摂生な印象の抜けない相手だから徐に尋ねる、大事な一食との予想を投げておきながら右手はしっかり「くれ」と差し出し。)
上埜新太 07/05 (Sun) 22:24 No.111
(会計する様子を斜め後ろから眺めていた限り、だろうとは思ったから尋ねた疑問符に返ってきたものはやはり予想範囲内の言葉。手に取ったハイチュウスティックの端を破いて、銀紙に包まれた一粒をその手に乗せながら)好きだから。あと酔い止め代わり。(残りの自分の分は一旦肩掛けポーチへ仕舞い、空いた手を開けば一本ずつ指を折りながら)歯ブラシセット…あと洗顔、化粧水、乳液、日焼け止め……ここらへんは共通かしら?上埜って日焼け止めつけるの?男子のスキンケア事情が分からないけど…(挙げていくのは自分にとって大体歯を磨くことと同じ枠に収まるそれら。言外に『他に忘れ物がないか』を確かめさせるような口調は、されどそれは自身と彼の基準が一致する場合のみ意味を持ちそう。そこまで話してから、また思い出したように話題が一つ戻れば)さっき三国に食べ物ひとつ買ってきてってお願いしたから、どちらかといえばそれが“今日の飯”になりそうね。(敢えて真似るように言葉を並べたところで、ふと時計台を見上げれば示す針は搭乗時間まであと少し。)化粧室に行ってくるわ。
北村伊鶴 07/06 (Mon) 22:44 No.126
(手の平に一粒が乗れば「あざす」と体育会系の謝辞を返す。)生きづらそうだな……。(乗り物ひとつ取っても、薬になぞ頼った経験が無く、ましてや菓子で紛らわせないといけない部類の人間の苦労が想像できずして他人事な感想が滑り落ちた。目の前で列挙される恐らく彼女にとっての必需品、『歯ブラシセット』『洗顔』と、自然と脳内でチェックリストが浮かんでいく。しかし上目で考える時間が止まるのはあっという間。)いや全然。めんどくせーな。日焼け止めもめんどいからしない、馬渕とか気にしてそうだけど。(相手の思惑をよそに、非共通事項の方が多かったため考えることを放棄した口は感じたままを発する。聞こえの良くない響きは、包を開いて口内に放り込んだ甘味で上書き。)強請りじゃなくてか。ちゃんと残さず食えよ。(ふっと唇の端を上げては先の印象を引っ張った忠言こぼし、)あー…ごめん、漏らしそうだったんだな。じゃな、またあとで。(束の間の別れを告げる彼女の行き先、思い至る用事は唯一ゆえに。瞬いて引き止めてしまっていたクラスメイトに謝罪向けたなら、見送るべくひらり片手を上げるのだった。)
上埜新太 07/08 (Wed) 01:51 No.145
まあ…でもその分見目がいいから……天は二物を与えないってことね。(抱かれた感想に彼なりの自身に対する理解を感じるなら相槌と共に静かに頷き。肉体的な弱さこそあれど、同等の図太さもとい精神的な強さを携えていることは言動や態度で幾らかは伝わるだろうか。)全然……へぇ……… ?馬渕?へぇ……(特にスキンケアの類はしていないらしい彼の顔面を凝視すること3秒。また一人別の名前が出てきたところでやや前のめりにしていた姿勢を戻し、漸く覚えたクラスメイトの顔を脳内に過らせつつ不確かな情報を一つ蓄積。人聞きの悪い言葉には眉を寄せるが)少ししかお願いしてないから多分大丈夫。三国が裏切らなければ。裏切らない…わよね…?(馬渕しかり三国しかり、目の前の彼しかり、顔を合わせて話すことこそあれどまだ北村の中での理解は浅い。やがて、束の間の会話を終え一時解散となろうかというところ、謝罪を含んだ一言を聞くや否や)なっ……!(顔色は青白から赤へ。つり上がる眉は隠さずに)ち、違うわよ!(咄嗟の否定は強い鼻息と一緒に。それだけ残せば黒髪靡かせるように勢い良く振り返り、今度こそ大股でその場を立ち去った。気持ち早足だったのは、決して漏らしそうだったからではない。)
北村伊鶴 07/08 (Wed) 19:46 No.158
name
color
pass
0文字