(朝ごはんの重要性を身をもって知る15歳の夏。)

(肝心な日に限って運のよさが発揮されないのはなぜ。出発前夜にしばしの別れとなる飼い猫を思う存分撫でくりまわして朝、旅立ちに向け身支度をし悠長に腹ごしらえを──できずに終わった。むすめとは対極の母、日頃は見逃されるのんきな時間管理も飛行機が絡むと手厳しく、家を追い出されてはあれよあれよという間に駅着、空港着、余裕の30分前集合。飛行機には十分間に合う。尚、対価は空腹。)やっぱ朝ごはん食べないと力出ない……。(諸々の手続きを終えて、空港ロビーのベンチに倒れこむ。ごろんと天井を見上げてフロアガイドを広げるものの、現在地が分からなければカフェの場所を知ることもできなかった。)タリーズのたっぷりタマゴサンド。(言葉にすれば叶う気がして。願いはむなしくタマゴサンドがひょっこり目の前に現れるわけもなく。)ヘイsiri、現在地を教えて~~。(ついでに、そんな無常な叫びにAndroidが答えてくれるわけもなかった。)
高代晴可 07/03 (Fri) 21:20 No.63
(インフォメーションカウンターからの帰路、クラスメイトとは途中で別れ一人歩く。広く取られた通路、並ぶ店はお馴染みのコンビニから土産物屋まで。)……ショッピングセンターみてえ。(などと今更な感想を漏らしながら手近なところにあったベンチへと腰を下ろした。そのまま、肩に掛けていたショルダーバッグへと手を伸ばす。少し柔い感触とそのサイズ感に確信抱き掴んで取り出せば、予想通り。明るく元気なビタミンカラーに包まれたブラッドオレンジ味した未開封のガムがお目見えした。慣れた手付きで開封し、一つ目を口に放り込もうとしたその時。)タリーズは出前、やってねえんじゃねえ?(呪文のように唱えられた言葉の主がクラスメイトと分かれば、その言葉の意図までは察せなかったものの素直な感想を述べる。寝転がっている様子をレンズ越しの瞳が映し出していた。)迷子……じゃねえよな。タリーズならさっき横通った気ぃすっけど。(が、フロアガイドから現在位置を見出だすまでには至らず。とりあえずとばかりにガムを口に放る。ついでに、)ガムなら提供出来っけど?(いる?と問い代わりにパッケージを掲げよう。)
江坂匡 07/03 (Fri) 22:26 No.65
(仰向けはねずみのしっぽみたいなひとつ結びを押しつぶし、距離感の掴めない高い天井をスマホ越しに眺めれば至極まっとうな指摘を聞く。往来の喧騒をぬってまっすぐ届く声のほうへ目線だけを移し、寝っ転がったまま。)ウーバーイーツのエリア外?(挨拶代わりにスマホごと手を振った。デリバリー不可を冗談まじりに嘆いてもなお「胡椒のきいたたっぷりタマゴサンド……」と未練がましく呟けば、店舗情報を知らされ上体を勢いよく起こす。クラスメイトを見上げる眸はぎらっぎらの期待に満ちていた。)うっそ。ほんとに?どこ?すぐそこ?フロアガイド見てもぜんぜんわかんなくてさ~~わたしたちいまどこいるのかわかる? あ、いや、迷子ではないんだけども。(追求に追求を重ね、おまけ程度の弁解は心許ない説得力。ベンチに無造作に広げられたフロアガイドを今一度確認するも「いや広すぎ」と眉間にしわ寄せたのちに折り畳んでボディバッグへ突っ込み、ガムをありがたく賜ろうと両手のひらを差し出した。)いる。(包み隠さぬ欲求を二文字にこめ、それから。)江坂朝ごはんなんだった?(世間話ついでの他人のご飯のはなしでも聞いてみようと思った。なんとなく。)
高代晴可 07/04 (Sat) 16:36 No.76
(天を仰ぐその姿は空港という場においては異質かもしれないが、何故だか不思議と馴染んで見えた。下からの視線と男のそれが交わる。ふ、と口元が緩んだ。)エリア外だろうな。欲しけりゃ自分の足で辿り着けってことだろ。(改めて彼女の隣に腰を下ろす。傍らから嘆くようなメニューの復唱が流れてくれば声に出さずとも笑いを含んだ息が吐かれる、その願いが叶うやもしれない一言を男は軽い気持ちで落としたが、返ってきた反応はその軽さが吹っ飛ばされるくらいにヘビーなものだった。思わず「落ち着け」と声が出る。)今俺が来たとこ……あっちの道を真っ直ぐ進んでったらその内辿り着くと思う。現在地はー……ここじゃねえ?多分。(ここから見える範囲の店から予想をたてそっと指先を置く。が、断言とは真逆な予防線を張ってしまうくらいにフロアガイドに記された規模は大きかった。「それな」と同意を示しつつ、)おう。おまけもつけといてやる。(手のひらサイズ、包み紙を纏った長方形を二つ。ころりとその手にのせた。)おにぎり。鮭とおかか。日本の味食っとくか、と思って。(今はガムのオレンジばかりが広がる口の中ではあるものの。数時間前に胃に収めたものを理由付きで伝えたなら、)サンドイッチ求める旅に出るのか?(そっと脚を組む。イエスと返ってくるなら見送る。そんな体勢だった。)
江坂匡 07/05 (Sun) 14:34 No.100
働かざるもの食うべからず、とは違うか。社会って厳しいね。ウーバーイーツin空港サービス化したらいいと思わん?(隣に座ったクラスメイトへ同意を求めた業務展開はおそらくたった今しか需要がない。「でも空港広いから大変か~」と早々に断念し、追求への制止にぎゅっとくちびるを結んだ。)うんうん、あっちか。で、現在地がここ!おっけ~~覚えた。すごいね江坂、めっちゃ地図読めるひとじゃん。(だだっ広い空港のフロアガイドをどれだけ回転させようとわからずじまいであったから、「ありがと」と告げるついでに両手を合わせる仕草はまるきりお地蔵さんを拝むときのそれ。手のひらに乗ったガム(おまけつき)に対する礼も忘れず、朝ごはん話に「おお」と反応を示した。)おにぎりか~~たしかに日本ともしばらくお別れだもんね。向こうどんな料理あるんかな?ロコモコみたいのイメージしてる。南の島だから。(それは安易な想像であったが、「おいしいものいっぱいありそ」と語る口許はたいそう楽しげである。さて、十秒後の行動について問いがあればイエスの代わりに首を縦に振る。勢いよすぎて「いてて」と首を押さえながら。)朝ごはん食べないと元気出ないかんね。無事についたら報告ラインする。つけなかったら~~ヘルプラインするかも?(笑いながら語るのは冗談なような本気。そうしてすこしの世間話を交わして別れたのち、たぶん、無事ありつけたタマゴサンドとカフェラテの写真を彼へ送りつけることができた。ピースサインの絵文字つき。)
高代晴可 07/05 (Sun) 22:22 No.110
お前以外に需要があったらやるんじゃねえ?(無責任にも言葉を軽く放り投げ小さく笑う。そんな展開が成されたとて、再び空港にて時間をもて余す日が来るかは分からない。)まあ方向音痴ではないな、と思ってはいる。(称賛に悪い気はしない、そんな素直さが持ち上がった唇の端が如実に示す。)まあ後は迷ったと思ったらスタッフぽい人見つけて聞きゃいーんだよ。(と、アフターケアめいた助言紡いだ唇は、拝まれたと気付けば今度こそ笑い声をあげた。少し軽くなったガムのパッケージを再びバッグへとしまいこむ。減った分のガムが収まっていた端っこが少し折れた。)向こうにも日本食の店とかあるとは思うけどな、……あー、俺もそういうイメージしてた。あとパンケーキとかそういうの。(どうやらこれより向かう先の食へのイメージは似通ったものだったらしい。分かる分かると軽い頷きで同意を示す、その想像が正しかったか否かは行ってみてのお楽しみ。答え合わせは海の向こうで。)おお、行く途中に空腹で倒れねえようにな。あー……いざって時のために俺もフロアガイド持っとくか。(本気と冗談の割合もきっと同じくらいに。ガムを噛む度に広がる甘酸っぱさをお供に興じた会話も、彼女の旅立ちによりエンドマークが下ろされる。その後ろ姿に軽く手を数往復させたのち、男はまだ暫しこの場所にて腰を下ろしたまま。──少し後、震えた端末に写し出された勝利報告。クラッカーの絵文字が一つだけ返された、なんてことない祝福の表現だった。)
江坂匡 07/06 (Mon) 21:34 No.121
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