(ハプニング大賞2020夏vol.1)

(ロビーの一角は壁一面が取っ払われた代わり、成損ないの鏡みたいに磨きあげられたガラス窓が嵌殺しになっている。まさか地平線の彼方まで続いているんじゃないかと錯覚する程だだっ広い滑走路を俯瞰する窓際。グリーンアイをみひらけば持上げられた睫毛が上向きに跳ねる。視線の先では飛行機がそのましろの大翼でいまにも空路を羽ばたかんとしていた。)飛ぶんだ、やっぱり。(瞳の色によく似たペイズリー柄が開襟シャツのはためきと共に模様の形を変える。此度初めて搭乗する飛行機とかいう金属の塊をもっと近くで見詰めたいって衝動任せにガラス窓に躙り寄るけれど、物理的ディスタンスは意識よりも早く限界値を超えていた。 ゴゥン。前置き知らずの鈍音は顔面をガラスに打付けた恥辱行為を断りもなく曝してくれるからホントいい迷惑。)……………ッ、(抑込んだ指の隙間から覗き見える鼻梁は赤く、物言いたげな口許は不機嫌に撓む。)
葉邑柊 07/02 (Thu) 15:23 No.38
(空港のロビーは当然ながら広々としていて、飛行機を観察するには打ってつけ。少女もまた忙しなく離着陸を繰り返す飛行機たちの撮影に余念がなかった。写真だけでは飽き足らず、動画まで撮ってしまうほど。そうしてガラス越しに絶え間なく変わりゆく光景を目で楽しんでいた折――すぐ近くで聞き捨てならない鈍い音が響いて、何事だろうと歩み寄り――うっかり、サンダルのつま先が引っかかって思いっきり躓き、)うわっ、とと…っ!(終着点はちょうどよく目の前にあった前のめりな少年の背に突っ込んでしまうだろうか。)あっ、(まずいと思う間もなく顔面を打ち付ける彼の背中にさらに追突せんとする、はた迷惑な姿ひとつ。)あたた……。ごめん、追突しちゃった…。葉邑、生きてる?怪我は?(もしかしなくとも追い打ちをかけたやもしれない、彼の顔面の無事を祈りながら、そろりと様子を窺った。)
御子柴ともり 07/02 (Thu) 19:25 No.43
(衝撃を背中で受止める事態への吃驚をあっけなく跳び越えて、ゴゥン。2度目の鈍音が響く。幸いにも鼻先は宛がわれた指がガードの役割を果たして殴打される展開を免れたが、代わって打付けられた剥出しの額はその熱を硝子窓に溶かすありさま。)………~~ッ、(歯を食縛って吐息を唸らせる頃、振返るより先に遠慮がちな声色がその正体を教えた。)はあ、御子柴だったの。てっきりそこで走ってる子かと思ってたよ。(指さす先、フロア内を駆回る幼児らしき子供にピントを合わせる。その子はおろおろと足を彷徨わせた後、秋吉かもめの傍に縋り寄っていく。鼻先から放しかけた手を放すに放せなくなる状況は、)あ 鼻血。(その一言が契機と成る。ただし事は単純じゃない。)なんていうのは嘘なんだけどね。痛かったから腹いせ。(要はそれ、でっちあげた言を騙る為のちゃちな伏線だった。これで両成敗が成立したっていい。)御子柴は?到着前から怪我したら笑い話だよ。大丈夫なの。
葉邑柊 07/03 (Fri) 16:02 No.57
(二度目の鈍い音は一度目とはまた違った痛々しさが伝わってきて、自分がぶつけたわけでもないのに痛みを感じたようにぎゅっと眉根を寄せてしまったのはご愛敬。)……、ごめん。本当にごめん。(この状況で出てくるのなんて謝罪しかない。とりあえず彼は無事だが、衝撃の大きさは赤みを帯びて見えるむき出しの額が如実に伝えてくれるだろう。)えっ?あー、あの子ならもうちょっと低めの位置で柔らかい衝撃だったんじゃない?…って、そんなことを言える分際じゃないんだけど…。(ひときわ元気の良い子供は同級生の一人に懐いているようで、それもまた微笑ましい光景だと目を細めるが。)えっ!?ごめ、ティッシュ使って…!(とポケットやリュックを漁ってポケットティッシュを出そうとして、)なんだ…本当に出ていなくて、よかった…。(焦りはしたが、嘘と分かって真っ先に浮かぶのは安堵の色。出発前から彼に血染めのシャツを着させるなんてあんまりだ。)大丈夫よ、ありがとう!(と即答するくせ、サンダルの踵は高め。このぐらいの高さならいけるだろうという無駄なチャレンジ精神が此処にも。)悪いからお詫びに飲み物でも奢るわ、何がいい?

御子柴ともり 07/04 (Sat) 04:54 No.70
(ポケットやリュックを漁る様子からティッシュを常備している子なんだなという発想が頭を擡げるけど、)…………あった?ティッシュ、さては相当奥深くに隠してるな。いいよ大丈夫。(取り出す迄の所要時間をカウントしていた訳じゃないったって彼女は何処にティッシュを隠し持っているんだろうと疑問が浮かぶ位には時間は経過していたような気がして鼻先を笑みが擽った。)御子柴の大丈夫を実はあんまり真に受けてないんだよ。足場の悪いところになれば成る程、一層ヒール高くなりそうだなって予想もしてるし。(入学して数か月が経てばクラスメイトのひととなりは何と無く見えてくる。無茶をしそうな子だって印象もすっかり根付いている訳で。)絆創膏はいっぱい持って来た?(怪我をするなよと言ってもいつか怪我をしそうな子だと思っていた。防止策より対策の方が若しかしたら重要なのかもしれないとさえ思う心が疑問符を掲げる。)いいの?ありがとう。じゃあ炭酸。俺が好きそうなの当ててみて。(自動販売機で彼女が葉邑の分を選んでくれたなら、次は自分が小銭を入れて彼女の分を選んであげようと思った。フライト迄時間はまだある。もう少し位一緒に落ち着いてくれていたっていいだろ。)
葉邑柊 07/05 (Sun) 21:21 No.108
あっ……た!くっしゃくしゃになってるけど…まあ下のやつは普通に使えるわ、大丈夫!……いいの?(やっと見つけ出したしわくちゃのポケットティッシュの出番がないと分かれば、ちょっと残念そうにしながら今度はもっと取り出しやすいリュックの表のポケットに入れておく。)えっ…?やだ、そんなことしないわよー。たしかに挑戦したくなるだろうけど…ほら、海外で怪我したら健康保険が利かないみたいだし?(これまで何度も保険証に助けられてきた身としては、その加護が得られぬ点は外しがたい。)ええ!バンドエイドも、あと念のためにガーゼと包帯も持ってけって言われたから一応ね。必要な時は…来てほしくないけど、何かあればいつでも言ってね。(無駄に大荷物になった一端を披露しながら、もしもの時に使ってもらえるよう声かけも。)もちろん!炭酸…意外と幅広いわね…。コーラ…と、見せかけてからのファンタピーチでファイナルアンサー…!(その答えが当たっていたか否かは彼のみぞ知る事だが、代わりにサイダーをリクエストした女がきっつい炭酸にやられるのは数十秒先の未来。)
御子柴ともり 07/06 (Mon) 23:04 No.127
name
color
pass
0文字