(一言でまとめるならば、詰めが甘い女。いろいろと。)

(初の海外旅行に浮かれながらも事前勉強を怠らなかった元ガリ勉は出国手続きもセキュリティチェックもつつがなく終えた。ふんだんにレースがあしらわれた白いトップスにデニムのショートパンツと気合十分の姿で大きめの機内持ち込み用鞄から早速と取り出したのは多数の付箋が張り付けられたサマリン島のガイドブック。出発ロビーのソファに腰かけて昨夜も開いたバイブルを再び膝の上で広げる。)やっぱり外せないのはこれですよね、パイナップルに直でストロー刺さってるジュース……。あとはこの映えスポットで写真撮って……。(ぶつぶつとひとり呟きながら右手の指先が色とりどりの文字を辿っていく。掲げたスローガン、『”粉骨砕身”パリピになる』を遂行するべく努力は惜しまないのだ。真剣な表情で文字を追いながら手元の感触だけで先程購入したばかりの水のペットボトルを鞄から探り出し、傍らに置いて片手で蓋を開けようとして──指先が当たったそれは無情にもゆっくりと倒れていく。盛大に音を立てて中身が床に零れるまであと、)
琴平るい 07/01 (Wed) 21:20 No.18
(この夏はきっとふつうじゃない。朝からの高揚感は右肩上がりで身軽となった今は気分的にはブラジルまで跳べそう。桃と青のカットソーももちろんおろしたて。そうしていざ散策しようとしたが、あっちもこっちも物欲を突っつく店ばかりとなれば財布のひもなんてないものだから逃げるように背を向けた。やみくもに歩いていたものクラスメイトの姿を捉えるなりそこが目的地。まだもうちょっと近付いてから名前を呼ぼうとすれば、前方から歩み寄りながらも彼女の手元に注目した。すぐそこの未来に不穏を感じた矢先、指先から辿った光景にたまらず駆け寄って。)る!! おお奇跡が起きちゃった。見てるい、この奇跡を。(伸ばした両手は空切る事なくペットボトルを寸前で起こして包み込む。反動で数滴落ちたが四捨五入すればゼロ。ペットボトルと交換で彼女の隣に腰を落とし、それを差し出しつつ本を覗き見る。)付箋たくさん貼ったね、うちも一緒に見ていい?
秋山紘 07/01 (Wed) 21:51 No.20
(あ、と事態の深刻さに気づいたのと少し遠くから聞こえてきたそれなりの大声に驚いてほんの少し腰が浮き上がったのはほぼ同時。素っ頓狂な声を上げつつも膝の上から滑り落ちそうになった本は反射的に左手で押さえつける。悲劇回避成功だ。)うひゃっ!? お、あ、紘ちゃんありがとうびっくりしました!すごいですね、これは本当に奇跡です。(救出されたペットボトルを受け取りひとまずはとすぐに蓋を閉めてしまおう。目の前で起きた奇跡への感動に眼鏡の奥の瞳を輝かせ軽く頭を下げる。開いていたページを彼女も見やすいようにと少し寄せてから、大きく特集されているパイナップルジュースの写真を海色で彩られた爪先で辿った。)もう準備バッチリですよ!これが絶対飲みたいんですよね、紘ちゃんも一緒にどうです?(ふつうじゃないこの夏への期待にわくわくと語尾が弾む。)
琴平るい 07/01 (Wed) 23:45 No.25
(もしもびしょ濡れになるならベトベトでも今だけは海水がいい。しかし今日という日の開幕が奇跡なら幸先良しと彼女の反応を含めて笑って返す。はんぶんずっこで下ろした目線は、小さなつめの淡い彩りに意識もろとも奪われたがそれをまた彼女の言葉が戻してくれた。返事に一秒もくれてやらない。)行く。行こ。決定!まっくろサングラスしちゃって写真とろーね、うぇい。あ、でも眼鏡取ったら視界ぼやけちゃう?そしたらうちがるいの手を引いてくから、るいにはうちの分も注文してほしい…。パイナポプリーズしか言えないから…。あとそれと(レンズ越しのひとみを見つめ、諸々の心配も共有してしまおうと。同じ背丈であるからただ真っ直ぐに顔を彼女に向けて。)爪もかわいいね。ネイル持ってきてたりする?してくるの忘れちゃった。(彼女の指先を示す指は無色で寂しくなって来た。「るいはおしゃれ」待つ間、無言なんてありえない。)
秋山紘 07/02 (Thu) 19:11 No.42
(彼女ならばきっと迷いを見せることなく頷いてくれると存分に期待を込めての問い掛けだったけれど、それにしたってあまりにも即答だったから思わずにへらと締まりのない笑みを晒してしまった。例えひとりだったとしても乗り込む気ではあったけれど、友人が一緒に来てくれるというのであれば百人力。楽しさだって百万倍になるってものだ。)写真撮ります!そうなんです、これ取ったら視界ぼけぼけです……介護してくださいね紘ちゃん。注文は任せてください予習はバッチリですよ。(しっかり度の入った眼鏡は生命維持装置に近い。夏の予定が決まったその日から旅行英会話の勉強も怠らなかった女は自信満々に頷いた。)えへ、気合入れちゃいました。途中で変えたくなることも見越して何色か持ってきてます。トランクに入ってますから、向こう着いたら塗りましょうね。(褒められた爪先をかざして双眸が分かりやすく緩む。「紘ちゃんだってオシャレですよ」重くなることも厭わず詰めたネイルたちは今頃飛行機に積み込まれているだろう。今この場にないのが惜しいけれど、どれにしようかって悩みながら南の島の風を感じるのだってきっと悪くない。)
琴平るい 07/03 (Fri) 00:14 No.50
そんなうれしい?でもうちだって嬉しいよ、るいが誘ってくれて。わたしたち今よりもっと仲良くなれそう!(とけそうなほっぺは常夏の約束を交わせたからと慢心だって疑わず目を細める。手を引いて歩くことの変換には小さく肩を揺らした。)介護になっちゃう?じゃあうちの英語力は生まれたてだから子育てだね、るいは。自信センパーだ。るいのバッチリイングリッシュ楽しみだな~。ネイティブ?るいって巻き舌できる?ちょっといま聞きたい。(言葉遊びを楽しみながら関心はゆるやかに矛先を変えて唐突な頼みとなって顔を出す。お願いしたからには「るぁ ほら難しい」まずはこちらの巻き舌具合を披露した。借りてもいいかな、準備をした口は彼女が先回りしてくれたから飲み込んだ代わりに笑みを乗せた。)うん!塗りたい!ありがと、るい。お礼になんてならないけどどっかでうちに塗らせてね、るいのつめ。器用かどーかはその時に分かるから。(そう言ってからかい交じりに笑う。それからはもう暫くのあいだ彼女と二人で紙面の南国を辿ろう。この瞬間だってもうふつうじゃないことにとっくに気付いている。)
秋山紘 07/04 (Sat) 00:05 No.66
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