（見るもの全てに刺激を受けた。耳には聞き慣れない意味だって分からない数々の言語が触れ、頭一つ分よりも背丈がある人々と外の景色に目もこころも奪われる。じんわり肌にまとわる汗も差し引いてマイナスにはならない。食欲をそそる匂いがフードコートから流れて来たことは分かったが、それよりも右往左往にさ迷った視線はクラスメイトを見つけるなり足止めするよう前に出た。）今からどこか行く？うちも一緒にいい？（訴えるほどの空腹はないしここではなにも買わないと機内で誓った。勝手な諸事情であるけれど、ぽっかり空いた時間を一人で有効に過ごす土地としてはまだ早すぎたと自己判断のもと同行者として立候補。叶うかどうかは相手次第でもちろん食い下がるつもりもない。）ほんとに着いちゃったね。（それでも少しの会話は楽しみたいと一言追加して。）

（驚かせるつもりはなかったけれど好反応にたまらず口端が緩む。明朗な声音がこの場の不意打ちをたわむれとしてくれるから甘えて肩を揺らした。）ドッキリ大成功になっちゃった、心は驚かしがいがあるね。あ、お団子にした？似合ってる。うん！一緒に探す！いーい感じってことはいわゆる映えスポット？（星がまたたくお団子アレンジを崩さぬように指を伸ばしてちょんと触れる。人好きのする横顔をもっと眺めるように彼女側へと寄りつつ、今度はちゃんと目的のある視線が辺りをさ迷う。そんな最中も会話は途切れることなく。）したいことはいっぱいあるよ。海で遊びたいし潜ってもみたいしバーベキューもしたくて、でももちろん洋服とか雑貨とかも見たいのと、やっぱり美味しいものたくさん食べたいな。全部ね、ひとつ残らずやるつもりだからちゃんと着いて来るんだよ、心。（淀むことなく言い終わった後には、隣に彼女が居るのも当たり前だと真っ直ぐと透き通る光りに首肯を求めた。）心、英語は出来るんだっけ…？じゃあこっちでのコミュニケーションの心配はないね、だれも知らない間に友達とか出来てそう。（期末テスト順位は仲良く年子であったからこそどこか恨めしそうだったが、想像内で地元の人と肩回す彼女が笑顔で居るから頬を緩めて。）

うーん、ん？なにそのかわいいポーチは。じゃあここえもんの道具借りちゃう。（言葉を遊ばせて彼女に手のひらを差し出した。そこにゴムが乗るならお礼で受け取った後、一つに括って手櫛を何度も何度も通すのはやっぱり彼女との会話が何よりの重要かつ優先事項だから。あまい指先が作ったまるに目を細め。）サマリンに来たってことがいちばん大事だもんね。あ、でも心は海外が初めてってわけじゃない、か？ほんときれーだよね、ちょっとえぐりたくなっちゃうもん。うそ。（主語はなくとも彼女の瞳を前から覗き込むような姿勢で捉えればなにを差しているかは通じると横着。驚かしたくって言った脅迫紛いもすぐにネタばらしが重なる。元気の良い同意に「し～」と彼女の口元に人差し指を持っていくもの、その顔だって笑っていちゃ意味がない。）心だって頼もしいし、心と居たらなんだって楽しめちゃうね。（最後には笑ってくれる晴れやかさがすべて解決してくれるなんて自信を滲ませ言い切った。見えないアンテナが彼女の頭にピンと張ったのを感じ、きらきら増したおめめに息が抜けたも「いこ！」すぐに手を取り短距離を駆け出した。お団子は手前の馬の尻尾で終わったけれど映えが人参なので。）ちゃんと入る？だれかに頼んだほうがいいかな。……ここ。（セルフで収まるだろうか。困った面をさっそく彼女に向けたならお任せコースでも最後は笑顔で、夏が始まった。）