（頭の中にはまだSightseeingとFriend's villaがひしめいている。イメトレの甲斐あって無事入国審査を終え、結局共用スペースのベンチに落ち着いたのは気疲れゆえだ。盗難を不安がる右手がレモンイエローのキャリーケースの持ち手をぎゅうっと掴みながら、つと気づく。）お腹すいたな……。（機内でも心配性をこじらせて勧められてもそう摂取出来なかったから、胃袋が訴える空腹感はそれなり。目の鼻の先のフードコートから漂う匂いに誘われてふらり足を向けたところでクラスメイトの姿を視界に収めたなら、安堵の息漏らしながら名字で呼び止めよう。「入国審査大丈夫だった？」のおまけ付きで。）あのさ、お腹空いてない？何か食べようと思ってるんだけど、一人じゃちょっと不安でさ。（つまりは求ム道連レ。日本食に加え見知ったバーガーチェーンもある中、周囲を見回し）…ハンバーガーのサイズってやっぱりデカいのかな。（知っているチェーン店に安心感抱く中、不意に過ぎった可能性に首を傾げた。）

おち、………そう、だね。まぁひとまずは安心だけど。秋吉さ、落ちる落ちないの話すごいデリケートだから。おれの事は当分受験生と思って。（飛行機の墜落を懸念する心配性がクラスメイトにバレバレがゆえの気遣いとは知れ、先制パンチを食らったも同然。意外な疑問符が届けばこちらは首を捻って）秋吉は初めて行く場所って不安にならない？口に合うかとか、サイズとか。今回はそりゃ、英語も心配なんだけど。（店もメニューも新規開拓をほぼしないがゆえに言葉の心配は二の次。誘われるようにしてハンバーガーショップの前、同意得られたと知れば安堵するも束の間だ。）何人前…？（今度はこっちが不思議そうな目で、問い掛けの真意を窺った。）セットで普通のサイズのが一つあればいいけど、バーガーは二つくらいなら食べれるかな。あの秋吉、もしかして結構お腹すいてる？秋吉が何人前食べててもおれは気にしないから、気にせず食べていいよ。（相手の量に合わせるタイプと当たりをつけてアドバイス。列に並べばすれ違うトレイの上のハンバーガーをチラチラ観察して、隣の彼を密やかに呼ぶ。）俺にはハンバーガーが小さい子の顔くらいあるように見えるんだけど……。

は？（軽やかな承諾の直後の物言いに思わず目弾きするも、笑みの音に眉を顰め）……今の3秒で記憶失くした？おれ秋吉はわりと無害だと思ってたんだけどな……。（罪悪感煽る為ではなく、身勝手に裏切られた心地をおぼえればボソリ。カクテルパーティー効果で拾い上げられる単語も英語ばかりの空間は非日常を実感させ、テンション上がった彼ごと周りは眩しく見えた。）おれにはない考え方だ。初めてが楽しい？……まぁ、経験があれば対策も出来るし、最初から構えるより良いのかな。（不安全て拭い去ることは出来なくともつられたような笑みは存外穏やかだ。説明以て漸く意図を得心すればそういう事かと小さなつぶやきを落とし神妙に頷いた。）賛成、そうしよう。初……良かった。せっかくだからフードファイターにチャレンジしてみようよ、とか言い出したらどうしようって、…あ、（ふ、と浮かべた安堵の笑みは卒然とまろび出た気付きを以てものの2秒で瓦解。）フリじゃないよ。（キッパリした否定は齟齬予防のためなれど、先走ったそれは“絶対に押すなよ”的ニュアンスも顔覗かせていたかも。）なににしよう。おれチーズが入ってるのがいいな。ピクルス平気？（はんぶんこの算段を立てる中ぐうと鳴いた腹の虫は騒がしさに紛れたか否か。商品受け取ってのち、大きなハンバーガーを今日くらいは写真に収めよう。映えも角度も気に留めないたった一回のシャッターは、けれど初めてを切り取ったから特別だ。）