(着陸ショックで前途は多難。)

(空気も湿度も空の高さも何もかも違う。爪先を地へ着けた瞬間、目に見えるもの全てが彩度をあげたように鮮やかだった。たっぷり4時間のフライトは窓から見える空や海や島に逐一感動釣られていたから眠気を感じる間もなく、興奮冷めやらぬ侭出発前後で与えられた自由時間を満喫しようと駆け出す波に乗)う゛ ぉぇっ……(ろうとして撃沈。飛行機と無縁の16年間は結果として己の三半規管の弱さを知る事と相成った。不快な浮遊感とジャンプする嘔気にやられて真っ先に駆け込んだトイレから出てくる頃には幾分生気を失った姿で、手近な自販機へ吸い寄せられる様相は情けない千鳥足。)みず で、いっか なにこれ英語?わかんな…。(目に見える全て外国語圏に不安煽られるも信頼と実績ののヴォルビックが目についたからボタンをプッシュ。開け口から出てきたペットボトルを拾えば近場のベンチにあられもなく腰掛けた。欲しいものはアロハシャツ、食べたいものは南国御用達のフルーツジュース。現実とのギャップに平伏す現今だった。)
三国雪緒 07/07 (Tue) 09:59 No.130
(これほどまでに長時間を空の上にて過ごすことは始めてだったが、耳の不快感が多少あったくらいだ。窓から見える景色も白と青のコントラストが鮮やかで、後は小刻みな揺れに誘われるようにしてやってきた眠気にその身を任せれば、いつの間にか身体は違う国へとやって来ていた。)ん、……大丈夫か、あいつ。(クラスメイトが蒼白な顔して出ていったのをお手洗いの洗面台に設置された鏡越しに目撃してはぽつり呟いた。こちらにも気付かずに出ていった彼の姿が気になり、少し駆け足で追うように出る。周囲に満ちる空気は大きく変わっていたが、今はそれより彼の安否の方が気にかかった。少し視線を左右に向ければ、ベンチに腰掛ける姿が目に入る。)三国、……お前大丈夫か?(その手に握られているペットボトルを認めれば浅く安堵の息を吐く。)薬……はもう意味ねえよな。なんか他に欲しいもんあったら調達してくるけど。(異国の地にてそれが可能かなんて思慮の外。気遣うような眼差しと共に紡ぐ。)
江坂匡 07/07 (Tue) 20:03 No.134
(これが銀魂ならハシカンとゲロインポジを争う気概だって吝かじゃないのに現実はどうして世知辛く眼振でも出てんじゃあるまいかと幻暈に襲われる。一息に呷ったミネラルウォーターの味気無さが何だか虚しく咽頭を滑る頃、まるで目の前の男が女神のように思えたのはゲボカス体調の所為に他ならない。)大丈夫大丈夫  って言いたいところだけどぜんぜん…大丈夫じゃ うえ…。(もう泣いちゃいたい心細さも取繕う必要がないクラスメイトの前だからこそぽろりぽろりと弱音が落ちる。首筋を撫ぜる湿度は新鮮よりも不快感を引き連れてくるから男の気遣いも咀嚼するまで時間がかかるが、)なんか 冷たいもの。アイスでもなんでもいいんだけど、胃がむかむかしちゃって…。(言ってからの尻窄みは羞恥心によるもの。これじゃまるで母親にアイスを強請るかぜっぴき。ついでにと言わんばかりに「あとあれ…」と指差したのはいかにも観光客向けのショップの店頭を飾るけばけばしいアロハシャツ。果たして羞恥心を紛わすためか或いはこの期に及んだ冗句の余裕か「南国きたらいのいち買って着がえようと思ってたの」は果たしてふざけるなと叱咤受けるか否か。)
三国雪緒 07/08 (Wed) 11:47 No.146
(ベンチに座ることなく、向ける視線は下の方。それでもちら見えする彼の顔色は異国の燦々とした太陽の真逆を行くような青白さを帯びているように見えた。問い掛けに対する返答聞く限りではやはりグロッキーなようで。)長時間だったしな。つかこれから更に車移動だろ、薬持ってたら飲んどけ。ねえなら俺のやるよ。(思わず差し伸べた手は少し躊躇うように泳いだのち、彼の背を可能な限り優しく撫ぜた。たったの数往復ではあったけれど。返事によっては奥底に仕舞われていた酔い止め薬と、「念のため」などと言いつつコンビニの袋を手渡して。)アイスな、了解。……はあ?(一つ目の申し出を当社比快く受け取った唇が予想外の二つ目認めたなら、えらく素直な反応を漏らした。)お前なあ……あー、分かった。着替えられるくらいには回復してろよ。(ほんの僅かな呆れは息と共に吐き出し、結論としてはおつかいを受け入れた。──身ぶり手振りで割とどうにかなる。指差しpleaseと言うだけでも、買いたい側と売りたい側の思惑重なり購入は予想よりもスムーズに。)生きてるか?……バニラとミント、どっちがいい?(死んでいるとは思っていない、軽いジョークだ。カップに入りスプーン添えられたアイスを掲げ、選ばれなかった方は己のものとする算段。更に腕に絡ませた紙袋の中には、)こっちは代金回収するからな。(ド派手と表現して差し支えないアロハシャツが揺れた。)
江坂匡 07/08 (Wed) 22:21 No.163
え いいの?至れり尽くせりで泣きそう 惚れそうだよ俺…。(酔い止めの記憶を探るが然し無けりゃ異国の地で慣れぬ買い物は現今体調がゲボカスな男にすれば相当のハードル。故優しさに触れてうっかりそっちの気がこんにちはするのも自然の摂理。斯くして背へ触れる掌へ多少なり嘔気も落ち着いたか「ごめん、どっか行く途中じゃなかった?用事あったんだったらごめん」と幾度目かの謝罪は戯けた指先へ融解。呆れ面を真正面から受けてへへと笑う姿は弱弱しい面と相反して図太い希求と相成った。それでもすんなり許容されたら優しいなと第一印象は払拭されないまま後ろ姿をぼんやり映じて、回復しつつある体調を前に暫くの休息変わり瞼を下す。)んー… じゃあミント……。(閉じた瞼の裏側で薄ら聞こえる声に舌先が動く。体感的には数分ぶりに光を取り込んだら眼弾き二つの先に江坂の姿。)さっきよりだいぶん生き返ったよ。おかえり。(幾分もすっきりした面持ちでアイスを受け取ったら「あ、ほんとに買ってきてくれた」は先達ての夢心地の希求へのそれ。)もちろんだよ、ありがとう。 着陸一発目俺につかまって災難だったね、なにかお礼させてね向こうで。懲りずに元気な時に遊ぼ。(ミントアイスへスプーン突き立てる傍ら羞恥心と申し訳無さが込み上げる。咽頭を滑る清涼感へいよいよ体調が回復したら代金引換で引き取ったアロハシャツを早速腕通して燥ぐ姿。「おそろいにしない?」は戯けた句だがとにかく多難と思われた南国生活は前途洋々へ姿を変えつつあった。) 
三国雪緒 07/09 (Thu) 11:16 No.175
(一度手を差し伸べたなら完全に引っ張りあげるところまで。中途半端を厭う性分は酔い止め薬とビニール袋を渡し、)特に用も無かったから気にすんな。あと惚れるならせめて女子にしとけ。(気恥ずかしさを誤魔化すような捨て台詞めいた言葉を残し、空港内を駆けた。不思議なもので誰かのためという大義名分は、ここに来るまではハードルが高いと思っていた買い物という行為を無事にこなすに至らせた。身体に優しそうな印象のバニラ、清涼感はピカイチだろうとミント。片方は己のものとするつもりで手にしたカップと、示された先にあったウインドウに飾られたのと同じアロハシャツ。異国の買い物デビューの戦利品携え戻ってきてみれば、)三国ー。……お、ちょっとは顔色良くなった気ぃすんな。(時間という特効薬が効いたか、記憶より色を取り戻した顔を見て安心したように笑んだ。己のものとなったバニラのアイスを掬いつつ、)あんま気にすんな、けどそうだな……何か楽しそうなことあって連れが欲しかったら優先順位高めで呼んでくれ。(見返りが欲しくてしたわけではないが、彼の気持ちはありがたかった。穏やかにこう応じ、「美味いなこれ」と冷たい甘さに舌鼓を打つ。)おー、似合ってんな。……その色はハードル高けえわ。もうちょい落ち着いた色のならまあ、考えんこともない。(互いのアイスが無くなる頃には完全回復しているであろう彼の旅の始まりが良き記憶として上書かれたなら、きっとそれで良かった。)
江坂匡 07/09 (Thu) 20:45 No.181
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