(興味の先はやけに不似合いな免税品。)

(白Tと黒チノパンに黒スニーカーと、南の島への浮かれ率が極めて低い恰好の男とて、真新しい紺色旅券の1ページに成田空港の無機質な出国スタンプが押されたのを眺めては、漸く少し実感が湧いて浮足立った。勿論多少なりとも浮かれた格好はキャリーに入れてあるくらいには楽しみであるが、自宅から空港のことを思えば羞恥心でいつもの格好での集合になろう。旅券をボディバッグへ詰め、フライトまでの時間潰しにブランドには興味もないからと適当なカフェへ入るためターミナルをうろつく折、ふとTABACCOの文字が目に入り足を止めた。)うわ、やっす......。すごいな免税って.....。(特に購入欲がある訳もないけれど、コンビニでバイトを始めた男にとってはハイブランド品より免税を肌で感じることのできる唯一の商品だったから。やっぱ日本の煙草のが安めなのかな、なんて眼鏡奥の瞳が興味津々の様は、煙草を吟味している不良のように映るかもしれないなぞ思わずに。)
高橋凌 07/01 (Wed) 18:48 No.11
(まだ両脚は日本に立っている。が、すでに南の島を満喫しているかのようにボタニカル柄のオーバーシャツは存在を主張し、空港のフロアをスポーツサンダルでうろつけばスキップしたい衝動に駆られた。この旅のために取得したパスポートの入ったボディバッグをたいそう大事そうに抱え、二度三度と中身を確認し、そのたびにぽんぽんと叩く無意味な行動を繰り返すこと五度目。免税店の前で立ち止まりバッグのファスナーを半分開けたところで、クラスメイトの姿が目に留まる。さて、後ろから近づいて声をかけようとした折に見たものといえば、)…………まさか喫煙者で?(煙草を吟味している(ように見える)クラスメイトの姿。見てはいけないものを見たかのように口元を手で覆い、視線はそらしておいた。)大丈夫。だれにも言わない。でも買える?免税店でもさすがに年確されん?(勘違いしたまま進んでいく一方通行の気遣いは、ボディバッグ半開きのままで。)
高代晴可 07/01 (Wed) 19:36 No.12
(煙草型のミニチュアカートンもあるのか、と未だ興味尽きぬ色した瞳でへぇ、と棚を眺めていれば、真面目(?)な高校1年の自身への問いには相応しくない、けれど明らかに此方へ向けられた声に視線を移す。見知ったクラスメイトのわざとらしい態度に続く言葉を驚きでぱち、と瞳がゆっくり瞬く間、言葉の意を理解すれば慌てて)いや、まって違うから…!誤解だよ。タバコの免税ってこんなに安くなるんだと思って見てただけ。勝手に共犯者になろうとしないで……。(弁明を論じつつ困ったように眉を寄せる。確かにピアスは一つ開いてるが、クラスでも特に目立つタイプではない自覚はあるから、喫煙者との暴走気味の誤解はこれにて打ち止めとなるか。)ていうかそっちもカバン開いてるけど、…万引きなんかしてないよね?(意趣返しと言わんばかりに揶揄めいたトーンで問うた後、ふ、と小さく呼気を漏らして「冗談だよ。」と付け足すことも忘れずに。結局この雑多な雰囲気で浮足立ったままなのだ、これくらいの茶目っ気は許されたい。)
高橋凌 07/02 (Thu) 00:35 No.27
出発前にクラスメイトの非行知っちゃったかと思って焦った。旅行のあいだず~~っと秘密抱えて過ごさなきゃ駄目なんかと。よかった~~。(安堵の息はブレスの瞬間まで長々と吐かれ、ぽん、と肩に手を置く。しかし共犯を免れたのも束の間、突如としておのれを主犯と疑う切先を突きつけられてぎょっとした。これでもかというほど目をまんまるくし、)し!な!い!(と力強く主張しながらファスナーをガッと勢いよくしめる。勢いが良すぎてバッグの布をちょいと噛んだけれども二度三度と開け閉めすれば元通り、そして次は慎重にゆっくりと開けて、今度こそパスポートの存在を確認する。大丈夫、ある。)パスポート落としてないか不安になって確認するところだったんです~~高橋ちゃんと持ってる?どっかに忘れたり落としてない?(玄関先で再三忘れものがないかを訊ねる母親のように、彼のボディバッグを指差し「一応見とこ?」と、お気楽さと同居する不釣り合いな心配性を舌にのせた。)
高代晴可 07/02 (Thu) 20:00 No.44
……はは、なんか高代って人の秘密とか知ったらハゲそうだね。(男が逆の立場なら、を考えればクラスメイトの非行くらいでは彼女の長々とした安堵の脱力までにはなるまい、と零した笑声は女子に対する例えとしては些か減点対象だったか。しかも此方の冗句めいた意趣返しに勢いよく否定する彼女があんまりムキになるから、また口元が緩んでしまった。今度は軽く握りこんだ右人差し指と親指を口元に添える。上がった口角が少しは誤魔化せたかどうか。)万引きしようとか考えたこともなさそーだもんね。(正確な印象を罪滅ぼしとばかり口にすれば、今度はギロチン刑を免れた布の口から彼女のパスポートがちらりと見えた。)はは、案外心配性?さっき出国手続きしたばっかだもん、流石に落とさないでしょ。(背中にあったボディバッグをくるりと腹部へ移動させチャックのすぐ脇に収まっていた紺旅券を引っ張り出し「ね、あった。」)アンタは確認のしすぎでさっきみたいにカバン半開きになってたら万引き疑いじゃなくてスリに合うかもよ。逆に気を付けて。………あ、でも南の島って大らかな人多そうだしそんなヨーロッパみたいなことないのかな。(彼女の心配心を別ベクトルで煽った後、行き先を思い出せば落とす疑問はごちるような問いかけるようなどっちつかずのトーン。答えは現地で知ることになるだろうか、もし彼女が知っていれば高校生に不似合いな免税品の前で、会話にもうひと花咲くだろうけれど。)
高橋凌 07/04 (Sat) 00:19 No.67
ちょう不吉なこと言うじゃん……。(思わず頭頂部を両手で押さえ、触った感覚じゃあまだ禿げてはいないことに安堵。そのまま降りていく指が手櫛ついでに毛量を確認したのち、一応「髪あるよね?」と聞いておいた。先ほどから仕返しのように冗談で遊ばれている気が無きにしも非ず、彼のゆるんだ口許を見逃さなければ不満げに下唇をとんがらせよう。)あったらやべーよ。(思わず口が滑った。)非行少年と非行少女にはならないでおこう……。(互いの冤罪を持ち出し教訓とすればおしまい。きちんとパスポートをしまいこんだボディバッグをお決まりのようにぽんと叩けば今度は彼の番。半ば強引に確認を促したが、)こういうのは案外ね、心配しちゃうよ。だってもしパスポートなくて高橋ひとり置いてくのは……心苦しいじゃん。ね。(彼がボディバッグを移動させ中身を確認するまでをじいと見つめる。真剣な面持ちで、しかし「あった」と聞けばすぐ表情はやわらぐ。)南の島行けんね。やった。(たのしげな口許はよろこびを語り、メンバーが欠けなかったことにご満悦。何にも遮られることなく煽りが耳に届けばおのれのバッグを一瞥し、)またなんでそんな不安になること言っちゃう?ハナワくんちの別荘あるとこだよ。治安いいよきっと~~。(思い込みも時には大事だ。もうしばらく会話を続けるなかで、パスポートの確認にバッグを開くこともない。なにごともほどほどがいいんだった、と思い出すのだ。)
高代晴可 07/04 (Sat) 22:54 No.84
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