(歩きスマホは災いのもと。)

(出発までの時間を空港内をぶらついて潰している間、はっと気づいて取り出すスマホ。まだ飛行機に乗っていないから機内モードにするのは早いだろう。しかし、少女は不意に思い出した。海外に行った時、何かの設定をオンにしていたが為に高額の通信料金を請求されて悲惨な目に遭ったという誰かの体験談を。)なんだったかしら、あれ…なんとかデータ…通信、だったかしら…その設定をオフにしておかないと、海外で法外な請求をされるとか…。どこで設定するだったかしら…(ぶつぶつ呟いて緩い速度で歩きながら、iPhoneの設定画面をあちこち開いてみる。当然、歩行を続けながらも画面に集中している視線は前方への注意を大幅に欠いているから、人やものにぶつかっても何の言い逃れもできない状態だった。)
御子柴ともり 07/05 (Sun) 20:21 No.106
(この旅のために人生ではじめてパスポートを取ったのだから当然海外になんて行ったことはない。おまけに飛行機に乗った回数も片手にきれいに収まるくらいで、めずらしいものを見る眼差しで空港のあちこちを眺めていた。朝ごはんも食べて、パスポートも十分すぎるくらい確認して。ちょっと高すぎる天井を眺めて。気楽がいいとは言うが、往来で気を抜きすぎてもロクなことないと五秒後に思い知る。)ぶっ(正面衝突。頭突きをくらわしたような、くらったような。天井に気を取られて前方不注意であった自覚はあるからひたいをさすりながら慌てたように声をあげた。)ご ごめんなさい……だいじょ……ともり~~。ごめん、前見てなかった……。大丈夫?(太眉を下げ、申し訳なさげな眸がとらえたのはクラスメイトの輪郭。名前を呼び、無事を訊ね、前方不注意がふたりそろって招いたこととは知らぬまま。)
高代晴可 07/05 (Sun) 22:46 No.114
(どうしても笑顔になって何度も注意されてやっと許可を得られた渾身の写真のパスポートはリラックマのパスポートケースに入れて、最初に入れた時点では取り出しやすい位置に仕舞っておいた。そんな女の目下の興味はスマホの設定。この設定をしないが為に高額な料金を請求された時に鬼と化す顔の母が怖い。)…んべっ、(自業自得かつあまりに人騒がせな正面衝突だった。とりあえずスマホは咄嗟に落とさなかったし、軽めにじんじんするのも額くらいで済んだ。)ご、ごめっ……こっちこそ、スマホばっかり見てたせいで…これは1000%、私が悪いわ…。晴可こそ大丈夫?結構な音した気がするけど…。いや、もし私が前向いてたら確実に気づけたはずだし、歩きスマホの罪は重い…晴可が謝る必要はないわ。スマホのデータ通信…?の設定を変えようとしてて…海外に行くときに変えないと高額な請求が来るって何かで読んだから…ああもう、とにかく本当にごめんなさい!(珍しいほど真面目に反省しながら、まだ若干赤いままの額をべこんと下げた。)
御子柴ともり 07/06 (Mon) 23:22 No.128
(ことしで16歳になる。前を向いて歩きましょうのことばを胸に生きてきたはずが、旅行に浮かれて教えはすっぽ抜け悲劇を生んだ。じんじんと痛みの響くひたいを押さえ、)だ 大丈夫~~……なはず。どうなってる?たんこぶできてる?このへん……。(無事を主張する一方で前髪を持ち上げ確認を願う。思いきし頭突きをかました相手であるから、「ともりもたんこぶできてないか見てあげる」という申し出もついでに。)いやいや。わたしも500パーくらい悪いの。空港の天井ってめ~~~っちゃ高くない?とか考えてたらともりにぶち当たっちゃった。……これからは前向いて生きてこ?(それはすこし齟齬のある言い方だった。ごめんのキャッチボールは続ければ続けるだけ終わりが見えず、「前を向いて」そのままの意味で通じればいい。下げられたひたいはちょんと指先で押し返しておく。)海外でポケモンやったら50万請求されたみたいなニュース見たことある……こわくない……?ママ激おこじゃすまないと思う。わたしも一緒に設定する~~どうやんの?(彼女に倣ってスマホを取り出せば、通路のはしっこに寄って手招く。「スマホ 海外旅行 設定」の検索結果を一緒に見るつもりだ。)
高代晴可 07/07 (Tue) 22:37 No.138
大丈夫じゃなかったら、後からでも絶対に教えてね!?治療費の保障とか…責任取らせてもらうから。たんこぶ…らしき、ものは見えない…わね、今のところ…赤くはなっているけど…。(非常に申し訳なさそうに顔を顰めて正直に事実を告げる。「あ、ほんと?じゃあお願い!」と好意に甘え、自分も前髪を持ち上げて彼女に見せた。たんこぶの有無はさておき赤みは残っているはず。)そんなに!?悪くないのよ、1%も…。…え?ええ、確かに…紙飛行機飛ばしたら、気持ちよさそうな高さよね。風船を飛ばしたらアウトだけど。……そうしましょうか、お互いに。(彼女の悪戯な優しさに甘え、下げた眉でにへりと小さく笑った。)えぇっ!?50万…悪夢だわ…間違いなく母さんに当分の小遣いもお年玉もなしにされるわ…それかバイトして返せって言われるわね。しましょうしましょう、えーっと……あった!この、データローミング設定をオンにしてると危ないらしいわ…海外からの電話はお金がかかるのね、うっかりいつもみたいに気軽にかけないようにしないと。(そうして次々に出てきたサイトを開いて設定を変えながら、あれもこれもと暫しスマホを覗き込みながら楽しい海外旅行に備える二人の相談は続くだろう。それが終わる頃には、彼女の額が元通りの輝きを取り戻す事を願って。)
御子柴ともり 07/08 (Wed) 19:34 No.157
あっちでおいしいアイスでも奢りあって相殺にせん?(過失割合5:5の事故の着地点は金銭ではなく夏らしいものでどうだ、とばかりににやけ顔で提案する。こういうの、と想像力は豊かな脳みそで「南国フルーツのたくさん乗ったおいしそうなアイスクリーム」を身振り手振りで表現するも1割伝われば上々の出来。)たんこぶは~~……ありません!やったね。(クイズの正解発表がごとく無傷を語れば、前髪を下ろし手櫛で整える。互いに無事だったひたいの赤みもすぐに消えていくだろう。生き方のくだりが通じれば満足げに笑い返し、料金請求の恐怖には身を抱え、回避のすべを検索する眉間にはしわを寄せる。そんな風に表情は忙しなく移り変わるけれど、なにも疲れるだけじゃない。クラスメイトとの一喜一憂は楽しいに決まっていた。)50万ってやばくない?2倍したら100万だよ……当分どころか一生では……?(高校生にとってそう安くない金額には現実味がない。お小遣いやバイト代の何か月分かで計算しようと試みたが12か月を過ぎたところで怖くてやめた。ほどほどがいいのは兎角トラブルは極力避けたくて、ふたりでスマホを覗き込めば彼女が光を見つけるだろう。)わたし旅行中ずっとともりに感謝してると思う。毎晩寝る前にともりのほう向いて祈っとくね。(無事に設定を終えれば冗談を語るが、ふと思い出したとき、本当に祈ることが一日二日あるかもしれない。とりあえず次に検索するのは「南の島 おいしいもの」。もう少し道端の談話は続くかもしれない。)
高代晴可 07/08 (Wed) 22:33 No.165
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