っわーーーーー！！！音すっっっご！！？？！？（初夏の青い空の下、陽射しはそこそこあれども轟音とともに飛び立つ機体への興奮とやや強めの風が夏の暑さを忘れさせた。小さな子供ならまだしも展望デッキで一人飛行機に歓声あげる女は少々異質にも映ったかもしれないが、あっという間に小さくなった流線型を見送れば満足。地上に戻した視線の先が森地を捉え、応じるようにぶんぶん振った手が悲劇にビタッと停止。）げっ！？（緩やかな傾斜に乗って数メートル、足元まで転がってきた缶に目を落とす。窺うように向けた視線がきっと同じような目をしてたから堪え切れない笑いを口許に滲んだ。俯いて隠せたかは微妙だけれど、そのまましゃがんで拾い上げ）悲しい事件だったね……。まさかこいつもこんな目に遭うとは思ってなかったと思う……ッぐふっ（悲しげなトーンを醸そうと抑えつけた声が絶えきれず暴発して、）っぎゃはは！！もりちー災難じゃん！え？今買ったばっか？かわいそ！！

……えっアレ待って怒った？！ばか笑ったけどかわいそーだって思ってるけどなんかちょっと怖いんだけど！？（立て板に水の語り口に圧倒されるがまま、何となし平生と異なる雰囲気に野生の勘がはたらいて反射でお窺い。楽しい尽くしのはじまりの日にクラスメイトの機嫌損ねてしまったままはどうしたって避けたいから、ひょこひょこ追従していったけれど、）げっ。（自販機に向かう背中で企みを察して先刻より低い声が転がった。）うわー！断りづらい感じの言い方してくんね森地！怒ったっていうかもーコイツ巻き込んでやれ的な思考になってんでしょ～…（二つの缶に目を落とす。片やおむすびよろしく転がり、片や自販機から生まれたてとくれば見てくれで察せそうなものだろう。追い打ちの声に視線持ち上げればにや～っと笑って頷いた。）しょーがないな～～～、優しい清水さんがこっちに選んだげる！（先手必勝。言うが早いか右の缶を持つ彼の手ごと缶を掴んでプルタブを引き上げてしまえ。プシュッと小気味いい音が響くと同時に、手元まで白いサイダーまみれになったなら、当然堪えきれない笑いも弾けた。）んははっ！！あ～～～～すんごい甘い匂いする！ベッタベタ！もりちー、あたしこっちもらうからね♪（ベタベタの缶を引き取ってはしてやったりとご満悦。もし彼が不満そうなら「あとで洗ったらいいじゃん」と唇尖らすくらいは昼飯前だ。）

え～～～～！？やだあ～～。ウソだ？……ホント？（ブチギレを非難する声色はきっと許してもらえると踏んでの甘えた風情。無反応は不機嫌の顔を覗かせて見えるから、瓦解を願う疑問符が連ねるにつれてほんの少し不安が滲んだ。けれどそれも一瞬、思い切った行動に揃いの笑声が青空に溶けたなら、にんまり笑顔はしてやったりのしたり顔。）だいじょーぶだいじょーぶ、頭から被ったんじゃないんだし！手がベタベタだから乗れません～って言われるワケ、……えっないよね？たぶんない！（根っからの楽観主義者はもしもすらポジティブだけれど、「集合する前に洗ってこ」となけなしの常識はありますアピも欠かさずに。誘われるがままベンチに、）アッねえあたしさっきカメが描いてある飛行機見た！何処行ったんだろ、あのへんにいたんだけどな～。アレだったら良いなって思ってたんだよね♪（座りかけたところで耳朶打った疑問符に、ベンチをスルーしてフェンスに近づき“あのへん”を指差せば問いへの答えは言わずもがな。振り返れば会話だって出来るけれど、近くの方が楽しそうだから1秒で戻ってお隣さん。）あっは！ねー森地実は負けず嫌いだ？あたしも！てゆーか今の勝負って思ってなかったけど勝ったんだったら気分いいな♪次の種目は負・け・た・森地が決めてもいーよ。（調子に乗ったか乗らされたか、へたくそな煽りで余裕の笑みを浮かべたらもう軽い缶を傾けた。ふぬけのサイダーが舌先をくすぐれば、楽しい旅路待ったなし。）